5. 今後の日本の年金動向は?今からできる老後の備え
ここからは、元公務員の筆者が、今後の日本の年金動向や老後への備え方について解説します。
今後の日本の年金動向は、経済成長が鍵になるといえます。
現在の年金制度が破綻する可能性はないでしょうが、年金受給額はこれまでよりも少なくなる可能性は考えられます。
厚生労働省では2019年に「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー2019(令和元)年財政検証結果 ー」を公表しています。
公表内容によれば、もし今後日本の経済成長率が減少し続ければ、2052年には財源が完全になくなり、その年の保険料で年金を賄う賦課方式に移行せざるを得ない状況になると予測しています。
しかし、負担が大きくても経済成長を続ければ、今後の展望は変わるでしょう。
社会保障の手厚い国であるスウェーデンを例に、説明します。
スウェーデンは社会保障制度が充実していますが、その分国民負担率も高い国です。
国税庁によれば、消費税率は25%、国民負担率は54.6%となっています。
一方、国連が発表する「世界幸福度報告」によれば、スウェーデンの幸福度は高いことがわかります。
世界幸福度ランキングを見ると、スウェーデンは30歳未満が18位、60歳以上が4位と高順位です。
日本(30歳未満:73位、60歳代:36位)と比べると、差は歴然です。
加えて、スウェーデンの経済成長率は2022年で2.6%と、日本のGDP(2023年度:1.2%)を上回っています。
経済が伸びているからこそ、高負担・高保障の仕組みが成り立つのです。
年金がこれからも本来の役割を果たすためには、経済成長が欠かせません。
歳入が増えて財源が確保でき、保険料の負担が減れば、日本の年金制度はより有用なものとなるでしょう。
とはいえ、老後の生活を年金のみに頼るのはリスキーです。
これからは、企業年金や個人年金の活用や貯蓄を投資に回して増やすといった「自分だけの資産づくり」が必要になるでしょう。
6. まとめ
厚生年金は、44年以上加入すれば、金額が上乗せされます。
特例が適用になれば、より多くの年金が受け取れるため、老後の生活に役立てられます。
とはいえ、一つの厚生年金保険に44年も加入するのは、簡単なことではありません。
特に、転職が盛んになっている現代では、特例が適用される人はこれまでよりも少なくなる可能性があります。
年金のみに頼らず、貯蓄や資産運用で老後に備えましょう。
参考資料
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年4月分)」
- 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)
- 厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「44年以上厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給者が、退職などで被保険者でなくなったとき」
- 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー2019(令和元)年財政検証結果 ー」
- 国税庁「今後の税制について考えよう」
- UN Sustainable Development Solutions Network「World Happiness Report 2024」
- 外務省「スウェーデン基礎データ」
- 内閣府「国民経済計算(GDP統計)」
石上 ユウキ