人事院は2024年5月13日に、国家公務員一般職・専門職の採用試験の申込者数を公表しました。

全体の申込者数は一般職試験(大卒程度試験)2万4240人、専門職試験(大卒程度試験)2万1693人で、減少傾向にあります。

長時間労働や国会対応などでのイメージ悪化により「若者の国家公務員離れ」はより深刻化しています。

しかし「公務員は安定していてうらやましい」「多額の退職金が出ている」といったイメージはいまだに根強く残り続けています。

果たして、現代で公務員が受け取る退職金や年金は本当に「多い」といえるのでしょうか?

この記事では、公務員の退職金や年金について勤続年数や会社員との違いを比較をしながら解説します。

後半では、元公務員の筆者が、老後に備えておくべきお金についても解説します。

1. 国家公務員と地方公務員は何が違う?

はじめに、国家公務員と地方公務員の違いを振り返りましょう。

【写真1枚目/全5枚】国家公務員と地方公務員の違い/次ページ以降「公務員は退職金が多いって本当?会社員と比較」1/5

国家公務員と地方公務員の違い

出所:人事院「おしえて!人事院」をもとに筆者作成

国家公務員と地方公務員はどちらも「全体の奉仕者」と定義されますが、職種や業務の内容は大きく異なります。

いわゆる「官僚」とよばれる人は国家公務員にあたります。

一方、自治体職員や小中学校の教師、警察官などは、職種こそ違いますがいずれも「地方公務員」です。

1.1 国家公務員と地方公務員に給与差はあるか

人事院および総務省の調査によれば、国家公務員と地方公務員の平均給与はそれぞれ以下のとおりです。

  • 国家公務員:41万2747円
  • 地方公務員:37万158円

※時間外手当を除く

国家公務員のほうが、平均給与が高い結果となりました。国家公務員の給与は、国家公務員法や人事院勧告に基づき定められます。

一方、地方公務員の給与は各自治体が定める条例や人事院勧告を受けて決定されます。

それぞれ給与決定に基づく根拠が異なるため、職種によっては地方公務員のほうが給与が高い場合もあるでしょう。

2. 国家公務員の退職金は平均でいくらか

人事院が令和5年12月に公表した最新の「退職手当の支給状況」によれば、国家公務員の退職金の平均額は以下のとおりです。

国家公務員の退職金の平均額2/5

国家公務員の退職金の平均額

出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」をもとに筆者作成

国家公務員の退職金の平均は1000万円を超えています。

特に定年退職や早期退職は2000万円以上が支給されており、金額の高さに驚く人もいるのではないでしょうか。

自己都合退職と定年・早期退職での支給額には大きな差があることがわかります。

ただし、実際は税金や社会保険料が差し引かれ、手元に残る金額はいくらか少なくなります。

日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、退職金支給額が増えるほど税額も多くなります。

3. 国家公務員の「勤続年数」による退職金の違い

次に、国家公務員の勤続年数による退職金の違いを比較してみましょう。

定年退職した場合の退職金の平均支給額を勤続年数別にまとめると、以下のとおりになります。

【勤続年数別】定年退職した場合の退職金の平均支給額3/5

【勤続年数別】定年退職した場合の退職金の平均支給額

出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」をもとにLIMO編集部作成

勤続年数が長いほど、受け取れる退職金が増える結果となりました。

一般行政職である行政職俸給表(一)適用者でも、勤続年数15年以上で1000万円、30年以上で2000万円の退職金を受け取れます。

なお、勤続年数40年以上の人が35年〜39年より退職金額が少ないのは、高卒・大卒の違いによるものと考えられます。

また「早期退職」「自己都合」といった退職理由の違いによっても、受け取れる退職金額は変わります。

4. 会社員と公務員の退職金を比較

では、会社員と公務員とでは退職金額にどれくらいの差があるのでしょうか。会社員と公務員の退職金額を比較してみましょう。

国家公務員の退職金を上回れるのは、大企業に勤めた会社員のみです。

中小企業の平均退職金額は国家公務員のものと比べると、約800万円から1200万円の差がありました。

今後は物価上昇により、金額だけ見ればさらに多くの退職金が支給される可能性があります。

しかし、退職金の実質的な価値は、今までより下がっていることもあり得るでしょう。

5. 会社員と公務員の「年金額」を比較

会社員と公務員とでは、受け取れる年金額に違いはあるのでしょうか。

会社員と公務員の年金額を比較してみましょう。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報」によれば、会社員と公務員の毎月の平均年金受給額は、以下のとおりです。

  • 会社員:15万1083円(国民年金+厚生年金)
  • 公務員:13万522円(国民年金除く)

同調査では公務員の年金額は厚生年金のみで平均額を算出しているため、国民年金分を足せば1万円〜1万5000円程度金額が上昇すると考えられます。

この時点では両者に明確な差はありません。しかし、公務員には年金払い退職給付が退職後に支給されます。よって、年金額は会社員より増えると考えられます。

年金払い退職給付とは、自身で掛金を積み立てて退職時に給付を受ける、公務員版の企業年金のようなものです。

2015年9月まで支給されていた共済年金の職域年金に相当します。

地方公務員共済組合連合会では、2015年10月時点で40歳だった人が20年間退職給付を積み立てると、将来月額1万258円の給付を受け取れるとの試算を公表しています。

上記の調査結果に国民年金と年金払い退職給付を合わせると、2万円〜3万円程度上乗せされます。

よって、公務員は会社員よりも1万円ほど多く年金を受け取れるといえるでしょう。

次章では、元公務員の筆者が「公務員の資産づくり」について解説していきます。

6. <元公務員解説>老後の生活に備えておきたいお金

ここからは、元公務員の筆者が「公務員の資産づくり」について解説します。

公務員・会社員、どちらであっても現役のうちに老後資金を貯めておく必要があるのは変わりません。

公務員が使える制度をフルに活用して、老後資産をつくりましょう。

6.1 もしものときに備えて先取り貯金をする

いつ何が起きてもよいように、余った給与は優先的に貯金に回しておくとよいです。

筆者が勤めていた自治体では、相次ぐ公共施設の建て替えによる支出増や人口減による税収減少により、数年間給与削減が行われました。

自身ではどうすることもできない外的要因により、公務員でも減給になる可能性は十分あります。

もしものときに備えて貯金を優先的にしておけば、将来の生活で苦しむことは少なくなるでしょう。

6.2 共済貯金を使う

公務員が貯金を中心に資産づくりする際に活用したいのが「共済貯金」です。

共済貯金は、公務員が利用できる高利率の積立貯金制度です。給与天引きで1000円から積立できます。

共済貯金は銀行の定期預金よりも利率が高いのが特徴です。共済貯金と銀行の定期預金で、利率を比較してみましょう。

メガバンクやネット銀行の普通預金、定期預金と比べると、共済貯金の利率の高さが目立ちます。

毎月の給与で少額から積み立てられるため、若い頃から積み立てていれば相応の老後資金を貯められます。

とはいえ、共済貯金の利率は0.5%〜1.5%であり、貯金するだけで劇的にお金が増えるものではありません。そこで筆者は、次に紹介する制度を活用しました。

6.3 iDeCoを使う

iDeCoは、公務員にとって貴重な老後資産形成ツールです。

公務員は原則副業が禁止されていますが、投資に関しては法に触れなければ許可されています。

公務員の場合、iDeCoは月額1万2000円まで掛金を拠出できます。

年間で最大14万4000円を運用できるため、定年退職まで積み立てれば数百万円以上の資産がつくれます。

加えて節税効果もあるため、税負担を減らすことも可能です。

筆者が公務員のときは最低金額の毎月5000円で積み立てていました。

より効率よく資産形成するならば、NISAの併用もおすすめです。

筆者も公務員時代からNISAを始め、iDeCoとあわせて資産形成をしています。

7. まとめにかえて

公務員の退職金は大企業の退職金よりも少ないという比較結果のとおり、決して「もらいすぎ」ではありません。

物価上昇も影響し、もはや「一生安泰」とはいえない金額になっています。

そのため、公務員も会社員と同様に老後資産づくりに注力する必要があります。

貯金だけでインフレに立ち向かえないようであれば、資産運用や節税などで賢く老後に備えるとよいです。

「税金が給料になる公務員が節税とは何事か」と思う人もいるかもしれません。

しかし、公務員も会社員も同じ社会人。家計のやりくりや老後資産づくりは誰もが当たり前に行うべきことです。

退職金だけをあてにせず、自分で資産をつくって老後に備えましょう。

参考資料

石上 ユウキ