3. 高齢者世帯の貯蓄事情

高齢者世帯ではどのくらいの金融資産を保有しているのか、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」と「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」を元に解説していきます。

なお、金融資産は預貯金のほか、積立型保険商品や株式、投資信託などを含みます。

70歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額は1757万円で、中央値(データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値のこと)は700万円です。

平均貯蓄額と中央値の値に差が生じていますが、平均貯蓄額は数値の大きい世帯が平均値を押し上げていることがあり、実際の平均とはかけ離れてしまうことがあります。そのため、平均を知るには中央値の方が適しているとされています。

一方、70歳代の単身世帯の平均貯蓄額は1529万円で、中央値は500万円です。より実態に近い平均額は500万円と捉えて良いでしょう。

金融資産の中央値は二人以上世帯で700万円、単身世帯で500万円であることから、年金で生活費をカバーできない場合、貯蓄を切り崩すことも可能と考えられます。

しかし、病気やケガで長期入院をしたり介護施設への入居をしたりする場合は、まとまった費用がかかるため、貯蓄を生活費だけに切り崩すのは経済的な不安が残ります。万が一のときの出費のために、貯蓄や保険などで備えておく必要があるでしょう。

4. まとめにかえて

住民税非課税世帯は全世帯の24.2%を占め、特に高齢者世帯になるほど割合が高くなる傾向にあります。

年金収入が少ないと住民税は非課税になる可能性がありますが、そもそも毎月の生活費がカバーできなくなることも考えられます。

万が一のときに取り崩しができるよう、預貯金をはじめとした金融資産の形成を早いうちから検討することをおすすめします。

参考資料

木内 菜穂子