3. 「年金天引き」の税金が高くなった理由

まずは、天引きされる税金が高くなったケースを考えましょう。

3.1 前年の所得が増えたため

まず初めに考えられる理由として、前年の所得が増えたことが考えられます。

年金から天引きされている「住民税」は、前年の所得に基づいて計算されるため、前年の収入が増えた場合は、住民税が高くなり、税金負担も大きくなります。

年金収入以外に、副業や短時間のパートなどを始めた方は、前年よりも住民税が高くなるケースがあるため留意しておきましょう。

しかし、住民税が決定されるのは6月頃なので、6月の年金天引きではまだ反映されません。そのため、6月は仮徴収として2月と同額が天引きされるでしょう。

多くの自治体では10月に本徴収が始まるので、このタイミングで「引かれる税金が増えたのはなぜですか?」という問い合わせが多くなります。

なお、所得税の場合はその年の所得に基づいて計算されるため、前年の所得が多くても、その年の所得が減っていれば所得税の変動は少ないとうかがえます。

しかし、前年の所得が増えたことにより、控除の適用額が減ってしまい所得税が増える可能性もあります。

3.2 扶養親族等申告書の到着確認ができていないため

前年と比較して「収入に変動がない」にもかかわらず、税金が急に高くなっている場合は、「扶養親族等申告書」の到着確認ができていない可能性が考えられます。

扶養親族等申告書とは、年金受給者が配偶者控除や扶養控除を受けるために提出するもので、毎年9月頃に送付されます。

扶養親族等申告書の申請忘れがあると、控除の適用がないまま税金の計算がされてしまうため、前年と収入が同じでも急に税金が高くなってしまうのです。

その場合は、確定申告をすることで、払いすぎた税金がかえってくる可能性もあるため、一度年金事務所等に問い合わせをしてみると良いでしょう。

4. 「年金天引き」の税金が低くなった理由

反対に、引かれる税金が安くなっていることもあります。

4.1 前年の収入が下がったため

同様に、前年の収入の変動が影響し、税金が安くなったことが考えられます。

定年退職後も働いている方は、徐々に仕事のペースを落としていくことで、ある年から急に非課税になることもあります。

こちらも反映が10月頃になるため、「急に手取りが増えたのはなぜ?」という問い合わせが多くなります。

4.2 定額減税があるため

この6月から定額減税が始まります。

年金受給者も例外ではなく、所得税3万円、住民税1万円が減税されるため、この分の税金が安くなります。

6月の年金ですべての減税が終わる方は少ないため、8月以降の年金でも手取り額がいつもより多い、と感じるかもしれません。