人生100年時代。夫婦で老後を迎えても、いずれ一人になるケースは多く、特に女性は平均的に男性よりも6年程度長生きする傾向があります。
そうなると気になるのが遺族年金です。会社員や公務員の配偶者は「遺族厚生年金」を受け取ることができる可能性があります。
しかし、共働き夫婦はまったくもらえないかごく僅かというケースも。
その時になって「こんなはずじゃなかった」とならないように、遺族厚生年金について知っておきましょう。
本稿は、遺族厚生年金の仕組みをわかりやすく解説します。
1. 遺族年金の概要
遺族年金は、公的年金の加入者が死亡したときに、死亡者と生計維持関係にあった遺族が受け取ることができる年金です。
生計維持関係とは、死亡者と遺族が生計同一で、かつ遺族の前年の収入が850万円未満であれば当てはまります。
遺族年金には、国民年金の「遺族基礎年金」と、厚生年金の「遺族厚生年金」があります。
1.1 遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金加入者が亡くなった場合に、子のある配偶者または子のどちらかに支給されます。
<受給要件>
- 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
- 死亡した者の基礎年金の保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あること、または過去1年間に保険料の滞納がないこと
<対象者>
死亡した者によって生計を維持されていた次の人
- (1)子のある配偶者
- (2)子
子の条件
- 18歳到達年度の末日までの者
- 20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある者
※いずれも未婚であること
<年金額>
- 81万6000円 (基本額)+ 子の加算額
子の加算額
2人目まで:各23万4800円
3人目以降:各7万8300円
※令和6年度額
1.2 遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金加入者が亡くなった場合に、一定の遺族に支給される年金です。
<受給要件>
- 被保険者が死亡したとき (ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者の保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あること、または過去1年間に保険料の滞納がないこと)
- 被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき
- 障害厚生年金(1級・2級)の受給者が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給資格期間(25年以上)を満たした者が死亡したとき
<対象者>
死亡した者によって生計を維持されていた次の人(優先順位が高い人のみ)
- (1) 配偶者および子
- (2) 父母
- (3) 孫
- (4) 祖父母
※夫、父母、祖父母は55歳以上であること(受給開始は60歳から)
※子のない30歳未満の妻は、5年間の有期給付
<年金額>
老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3
※最低保障として、被保険者期間が300月未満の場合、300月とみなして年金額を計算する
ここまで遺族年金の概要を解説してきました。
次章では、遺族年金の対象者や遺族厚生年金と老齢厚生年金の関係について解説していきます。