2. 2024年度の年金額が「プラス改定」なのに「実質減額」の理由
前章でもお伝えしたように、2024年度の年金額は昨年度と比較して2.7%の増額改定となります。
しかし、実質的には目減りとなっているのが現状であり、その理由として「マクロ経済スライドによる調整」が背景にあります。
年金額の改定には、「物価変動率」または「名目賃金変動率」が用いられることが一般的です。
物価変動率が名目賃金変動率を上回る場合、「名目賃金変動率」を用いて年金額が改定されます。
参考までに、2023年の物価変動率は3.2%である一方、名目賃金変動率は3.1%となりました。
上記にマクロ経済スライドによる調整として「▲0.4%」が適用され、年金額改定率は「3.1%-0.4%」で、+ 2.7%となったのです。
「マクロ経済スライド」とは、現役世代の負担が重くならないように導入された制度です。
賃金や物価の影響による改定率から、現役の被保険者の減少・平均余命に応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことで、毎年年金の給付水準を調整しています。
年金制度の維持に必要不可欠な制度ですが、現状の改定率は物価上昇率に追いついておらず、「増額しているのに実質減額」となっているのです。
2023年度も同様に「増額改定だが実質は目減り」という状態だったため、2年連続で同じ傾向が続いています。
また、前章で紹介した年金額はあくまでも、「国民年金満額受給の場合」と「標準的なモデル夫婦の場合」の金額例であるため、一概に全ての人がその金額を受け取れるわけではありません。
年金を受け取っている方の場合は、6月に送付される「年金振込通知書」に、ご自身が毎月受け取れる年金額が記載されているため、そちらを確認しておけると良いでしょう。
次章にて、年金振込通知書の確認すべき項目について見ていきます。