2. 賃金の引き上げ状況
厚生労働省が2023年11月28日に発表した「賃金引上げ等の実態に関する調査」から、企業の特性別にみた賃上げ状況を確認しましょう。
2.1 企業規模別
企業規模別にみた賃上げの実施状況は、以下の通りになりました。
- 5000人以上:97.3%
- 1000人以上4999人以下:93.3%
- 300人以上999人以下:93.1%
- 100人以上299人以下:87.4%
2022年と比較すると、すべての企業規模で賃上げが行われています。
1人あたりの平均賃金の改定額は、以下の通りです。
- 5000人以上:1万2394円
- 1000人以上4999人以下:9676円
- 300人以上999人以下:9227円
- 100人以上299人以下:7420円
規模の大きい企業が、相対的に高い賃上げを実施しています。
では、産業別にみた賃上げの実施状況を確認しましょう。
2.2 産業別
産業別にみた賃上げの実施状況を確認しましょう。
「生活関連サービス業・娯楽業」が最も賃上げをした割合が多くなっています。
一方で、全15産業のうち5産業が、2022年に比べて賃上げした割合がマイナスとなりました。
産業別にみた1人あたりの平均賃金の改定額を確認しましょう。
「鉱業・採石業・砂利採取業」が最も賃上げ額が高くなりました。
一方で、賃上げ額が最も低かった産業は「医療・福祉」で3616円となっています。
では、企業が賃上げを実施する理由について確認しましょう。
3. 賃金を引き上げる際に重視する要素
企業が賃金を引き上げる際に重視している要素で最も高い割合だったのは「企業の業績」でした。
次いで「労働力の確保・定着」「雇用の維持」が続きます。
「世間相場」を重視した企業は、23.4%となりました。
以上の結果から、賃上げの機運が高まっても賃上げに踏み切らないといえるでしょう。
労働力の確保や雇用の維持といった、企業の経営にかかわる要素を重視しています。
以上から、企業の規模や産業で違いはありますが、賃上げは行われました。
しかし、賃金の伸びに対して生活が豊かになった実感を持っている人は少ないでしょう。
その理由について確認しましょう。
4. 実質賃金は右肩下がり
厚生労働省は、2024年4月23日に「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果確報」を発表しました。
その結果、2024年2月時点の実質賃金は前年比でマイナス1.8%となっています。
2020年以降の実質賃金の推移をみると、2021年からマイナス指標となっています。
実質賃金がマイナスということは、物価の伸びに対して賃金が追いついていません。
そのため、賃金が上がっても生活が豊かになった実感がないといえるでしょう。
2024年度も、高い水準で賃上げが行われる見通しですが、実質賃金が今後プラスに転じるのか、注目が集まります。
参考資料
- 連合「2024 春季生活闘争 第4回回答集計結果について」
- 総務省「地方公務員の給与体系」
- 国税庁「民間給与実態統計調査」
- 人事院給与局「令和5年国家公務員給与等実態調査」
- 厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果確報」
- 総務省「令和5年地方公務員給与実態調査結果等の概要」
川辺 拓也