日銀が今年3月に「マイナス金利政策」を解除してから、政策金利の利上げの風潮が強まってきています。
そして現代は、住宅ローンを利用している方のほとんどが「変動金利」を選択している時代。
「利上げ」と聞いて、銀行の預金金利が増えると喜ぶ方よりも「ローンの支払いが増えてしまうのではないか」と不安になる方のほうが多いのではないでしょうか。
しかし、利息の支払いがもったいないと言ってすぐに繰り上げ返済を決断するのは早計かもしれません。
本記事では、住宅ローンを返済する前に考慮すべき「繰り上げ返済」のメリット・デメリットについて解説。記事の後半では参考として、年収別の住宅ローン平均残高を一覧でご紹介していきます。
1. 【解説】繰り上げ返済のメリット・デメリットとは
まずは繰り上げ返済のメリット・デメリットを考えていきましょう。
1.1 繰り上げ返済のメリット①金利上昇リスクの対策
繰り上げ返済により、将来的に起こり得る金利上昇で大きくなる返済負担を緩和できます。
特に低金利が長くつづく日本では、今のうちに住宅ローンを繰り上げすれば金利が低いうちに返済できるのがメリットとされています。
1.2 繰り上げ返済のメリット②利息負担が減る
繰り上げ返済をすると、当然のことながら残りのローン残高を減らすことが可能。
これにより返済期間が短縮され、その分だけ利息が影響してくる総返済額を減らせるのがメリットです。
また、完済後は住宅ローンにかかるストレスやリスクがなくなり、経済的な安定感が得られるのもポイントだといえるでしょう。
「繰り上げ返済」は将来のリスク対策や金利負担の軽減など、家計を圧迫する返済の早期解消のためにも有効な手段といえそうです。
ただし、住宅ローンを繰り上げ返済することによるデメリットもあります。
1.3 繰り上げ返済のデメリット①手数料が発生するケースがある
一部の住宅ローンでは、繰り上げ返済に対する違約金や手数料が課せられる場合があります。
手数料がいくらになるかは契約により異なりますが、金額が大きくなった場合には繰り上げ返済の効果を相殺する可能性も捨てきれません。
1.4 繰り上げ返済のデメリット②税制上のメリットが減る
契約した物件の詳細によりますが、住宅ローンの利子は「所得税の控除対象」となる場合があります。
繰り上げ返済の影響で利子が減少し、税制上のメリットを失ってしまうかもしれません。
1.5 繰り上げ返済のデメリット③団信の保険金額が減ってしまう
繰り上げ返済をすると「団体信用生命保険(団信)」の保険金が減ってしまいます。
団信は住宅ローンの返済中に起きてしまった万が一の場合、家族や家を守ってくれる生命保険。一般的に住宅ローン残高と同額の保険金が支払われます。
しかし、繰り上げ返済をした場合、その返済額に応じて保険金が減ることがあるため注意が必要です。
団信に加入している場合は保険金の減少を考慮し、手元資金を残すというのも選択肢のひとつだといえるでしょう。
これらのメリット・デメリットを踏まえ、繰り上げ返済について総合的に判断することが重要です。
次の章からは、元行員が考える「住宅ローン」は繰り上げ返済すべきかに関する結論をまとめていきます。