3. 後期高齢者医療制度とは?75歳から該当

ここまで解説した制度と違い、後期高齢者医療制度は「独立した公的な健康保険制度」となります。

つまり、これまで国民健康保険や協会けんぽなどの保険に加入していた方も、75歳に到達した時点で脱退し、後期高齢者医療制度という制度に加入することになるのです。

これにより、保険証は新しくなりますし、保険料も変わります。

また、65歳以上で一定の障害がある方も、任意で後期高齢者医療制度に加入することができます。

筆者も自治体職員をしているときは、相談に来られる方が少なくありませんでした。保険料などは試算してもらえるので、一度お近くの自治体窓口に相談してみましょう。

【対象となる障害】

  • 身体障害者手帳1級から3級までと4級の一部
  • 愛の手帳1,2度
  • 障害年金1,2級
  • 精神障害者保健福祉手帳1,2級


後期高齢者医療制度の運営は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」が行っており、すべての市町村が加入しています。

3.1 後期高齢者医療制度の保険料は2024年度に引上げへ

厚生労働省の発表によると、2024年度における被保険者一人当たり平均保険料額は、全国平均で下記のとおりです。

  • 被保険者均等割額の年額:5万389円
  • 被保険者均等割額の月額:4199円
  • 所得割率:10.21%
  • 平均保険料額の年額:8万4988円
  • 平均保険料額の月額:7082円


ここ最近は引き上げの動きが続いています。

3.2 後期高齢者医療制度の保険料は都道府県ごとに違う

基本的に、後期高齢者医療制度の保険料は一人あたり一律の「均等割」と、前年の所得を基準に算出される「所得割」の合計額で決まります。

しかし、それぞれの金額や料率は都道府県によって異なるため、同じ収入でも住む場所によって保険料が異なります。

例えば厚生労働省は、年金収入195万円の人の保険料(月額)を次のとおり試算しました。

2024年度・2025年度の後期高齢者医療制度の保険料率や保険料例

2024年度・2025年度の後期高齢者医療制度の保険料率や保険料例

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」

  • 全国:5411円
  • 北海道:6025円
  • 青森県:5170円
  • 岩手県:4583円
  • 宮城県:5025円
  • 秋田県:4808円
  • 山形県:5017円
  • 福島県:4937円
  • 茨城県:5125円
  • 栃木県:4883円
  • 群馬県:5317円
  • 埼玉県:4858円
  • 千葉県:4775円
  • 東京都:5044円
  • 神奈川県:5213円
  • 新潟県:4633円
  • 富山県:5033円
  • 石川県:5409円
  • 福井県:5458円
  • 山梨県:5685円
  • 長野県:4845円
  • 岐阜県:5167円
  • 静岡県:5033円
  • 愛知県:5858円
  • 三重県:5212円
  • 滋賀県:5119円
  • 京都府:5886円
  • 大阪府:6211円
  • 兵庫県:5812円
  • 奈良県:5667円
  • 和歌山県:5808円
  • 鳥取県:5608円
  • 島根県:5345円
  • 岡山県:5500円
  • 広島県:5211円
  • 山口県:6124円
  • 徳島県:5792円
  • 香川県:5617円
  • 愛媛県:5460円
  • 高知県:5833円
  • 福岡県:6357円
  • 佐賀県:5967円
  • 長崎県:5508円
  • 熊本県:6196円
  • 大分県:6184円
  • 宮崎県:5458円
  • 鹿児島県:6275円
  • 沖縄県:5913円

もっとも高いのは福岡県で6357円。もっとも低いのは岩手県で4583円のようです。

また子育てを社会全体で支援する観点から、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援する仕組みが4月より導入されています。

後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援

後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」

4. まとめにかえて

初めて「前期高齢者医療制度」という言葉を聞いた方は、新たな保険証や保険料に変わるのかと不安になるかもしれません。

しかし、個人において何か変化が起こるわけではありません。ただし、70歳になると高齢受給者証が届くので、病院にて提示が求められるでしょう。

一方、75歳になって「後期高齢者医療制度」に該当すると、これまでよりも大きな変化となります。

こうした公的制度はしっかり把握しておきましょう。

参考資料

太田 彩子