近年、中小規模の大学は少子化により学生集めに苦労しています。全国には約800の大学がありますが、経営が潤っている大学はその中でも一部に限られるのが現状です。

こうした中で、大学には学生のターゲット拡大が求められています。高校を卒業したばかりの10歳代や、数年の浪人期間を経た20歳代前後の若者だけではなく、社会人やシニア層もメインターゲットに含めていくことの重要性が増しているといえるでしょう。

特に、シニア層への門戸の大きな開きが大学存続の鍵となるでしょう。

シニア層の中には10歳代や20歳代のときに経済的事情などで大学進学を断念した人や、長年にわたり興味を抱いている分野について腰を据えて学びたいと考える人は少なくありません。

本記事では、現代社会における大学の状況や社会人入学者数の推移を解説。記事の後半では、シニア層に大学・大学院進学がおすすめの理由を探っていきましょう。

1. 社会人入学者が増加中!今後も大学内「社会人学生」の割合は増える見込み

文部科学省が公開している統計資料を参照すると、社会人入学者は平成20年度から増加していることが分かります。

【写真2枚中1枚目】社会人大学生数の推移(学部・大学院)。 2枚目ではミドル・シニアの学び直しタイプの割合を掲載。1/2

【写真2枚中1枚目】社会人大学生数の推移(学部・大学院)。 2枚目ではミドル・シニアの学び直しタイプの割合を掲載。

出所:文部科学省「参考資料集 令和5年9月25日」

背景には「現役世代のスキルアップを目的とした進学」、および「シニア層の学問探求を目的とした進学」があると考えられます。

現代社会ではIT化などによってビジネスが複雑化し、より高度な業務に対応することが求められています。

こうした中で業務に対応するため、新しいスキルを取得する「リスキリング」を目的に進学する人が増えています。

また、シニア層については、定年退職後に「自分がこれまで興味をもっていた分野を学びたい」という志しを抱いて進学する人が多いです。

現代でこそ高校卒業後は約8割の人が大学や専門学校などに進学していますが、昭和30年代まではほとんどの人が高校を卒業してすぐ就職していました。また、昭和35年頃における大学進学率は16%程度にすぎません。

10歳代や20歳代のときに大学で学ぶことがかなわなかった人たちや、社会人生活を送る中で大学に興味を抱いた人たちが、定年退職後に大学に進学するケースも増えてきています。

次の章から、実際に学び直しを選択するミドル・シニア層の実態を知るべく、意識調査の結果を確認していきましょう。

2. 学び直す「ミドル・シニア」層は14.4%…最新の意識調査をチェック

パーソル総合研究所が「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」を公表。

ミドル・シニアのよる本業以外の場所での学び(学び直し、趣味)の実態と効果が明らかになりました。

調査概要は以下の通りです。

  • 調査期間:2023年3月24日~3月28日
  • 実施主体:株式会社パーソル総合研究所
  • 共同研究:産業能率大学 齊藤弘通研究室
  • 調査対象:全国の就業者35~64歳男女(最終学歴高卒以上)
  • 有効回答数:3万6537名(業務外学習の実施状況・学び直し意欲により割付)
  • 調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

2.1 学び直す意欲はあるが特に学んでいない「口だけ層」が約3割

【写真全2枚中2枚目】ミドル・シニアの学び直しタイプの割合2/2

【写真全3枚中2枚目】ミドル・シニアの学び直しタイプの割合

出所:パーソル研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」

ミドル・シニア就業者の70.1%が「何歳になっても学び続ける必要がある時代だ」と回答。さらに、63.0%が「学び直しは将来のキャリアに役立つと思う」という選択肢がえらばれました。

多くのミドル・シニア就業者が学び直しを肯定的に捉えていることがわかります。

しかし、ミドル・シニア就業者の中で実際に学び直しをしている「学び直し層」は14.4%にとどまっています。

また、趣味の学習のみである「趣味学習層」は8.2%、学び直す意欲はあるが特に学んでいることはない「口だけ層」が29.8%を占める結果となりました。

日々忙しくする現役世代のうちに学習意欲を高めたままでいるのはかなり難しいもの。しかし、忙しさのまま趣味のない生活を送っていると、老後に困ってしまう可能性もあります。

定年退職後、何をしようか悩まれている方は「大学進学」を検討してみるのもよいかもしれません。

次の章から、この現代においてシニアにこそ大学入学をおすすめしたい理由を次の章から深堀りしていきましょう。

3. 【解説】シニア層に大学をおすすめできる理由とは?

シニア層の中には定年退職後にやることがなく、自宅にひきこもってしまう方もチラホラ。そこで大学に在籍していれば外出するきっかけになりますし、人とのつながりもできます。

また、大学は高校よりも体力的負担がありません。1年次と2年次は必修科目数が多いため通学頻度も高いですが、それでも文系であれば週5で朝から夕方まで大学にいなければならないというスケジュールにはならないはずです。

また、卒業を急がないのであれば、在籍できる上限年数を考慮しつつも、余裕のある履修プランを立てられます。

大学の講義には教員の話を一方通行で聞くものだけでなく、在籍していなければ経験できないアクティビティも豊富。

大学では学食や軽食も充実しており、おいしい食事をプチプライスで楽しめます。栄養のある食事を手間なく食べられるのもうれしいポイントですよね。

通学やキャンパス内の移動は軽い運動になりますし、講義や課題で頭をフル回転させれば脳を活性化できるでしょう。

学生であれば図書館やコンピュータールームなども利用できるため、スキマ時間や講義がない日も大学で過ごせます。

キャンパスが美しく整備された大学も多く、季節の草木や花を楽しめます。キャンパスをゆったりと散策し、季節を感じるのも1つの楽しみになるはずです。

4. 【実録】10~20歳代に負けず劣らずキャンパスライフを充実させるシニア層も

筆者は学部と大学院に通いましたが、いずれにおいても社会人学生が在籍していました。

彼らは10歳代や20歳代の学生ともうちとけ、体育やゼミのイベントも楽しんでいるように見えました。

筆者自身も社会人学生に鼓舞されることが多く、プライベート含めて親しくしていました。

彼らの学びの意欲は高く、刺激的でした。講義のあとに図書館で調べものをする姿や、講義で分からなかった部分を長時間ひきずる姿は、10歳代や20歳代の学生にはあまり見られないものです。

また、自分よりも50歳くらい年齢差がある人とも話題は尽きませんでした。講義の話だけでなくお互いのバックボーンや教授の研究についてなど、共通のネタが豊富にあります。

人生相談にのってもらったことや、雑談で世代間の差を楽しんだこともありました。

シニア層や社会人学生が自身の経験を生かしながら大学をうまく使えている、大学を有効活用している、大学をフルで使っているなどと思うこともありました。

5. 大学存続にはシニア層のニーズを満たすことが鍵になる?

そもそも、大学とは10歳代や20歳代の若者だけの機関ではありません。現役世代にもシニア層にも開かれています。

大学は生涯学習センターを運営するなど、社会人にも門戸をこれまでも開いてきました。また、社会人の受け入れも積極的に行い、10歳代・20歳代とシニア層がひとつの空間で学べる環境にもあります。

これからの時代、大学が存続するためには社会人に魅力的なカリキュラムや学習内容、プログラムをさらに増やしていくことが求められます。

シニア層の中には大学付属の生涯学習センターやカルチャースクールなどで学ばれている方もいます。

筆者は学びに意欲的なシニア層であれば、大学はむしろ「お得」なのではないかとさえ思います。

私立大学の学費は年間100万円以上かかりますが、大学に在籍していれば講義は受け放題。生涯学習センターの講座も1つ5000円前後しますから、いくつも受講していればそれなりの価格になります。

さらに、学生であれば図書館や学食、コンピュータールームなどを利用できますし、美術館や博物館、交通機関などは「学割」の対象です。

学生特権を利用すれば学費分のもとを取れるかどうかは別の話ですが、アカデミアや芸術、本がお好きな方であれば、満足度の高い生活を営めるのではないでしょうか。

参考資料

文部科学省「参考資料集 令和5年9月25日」
文部科学省「大学入学者数等の推移」
パーソル研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」

西田 梨紗