「年金月15万円」おひとりさまで老後を迎えるなら貯金はいくら必要?

5月は行楽シーズン。旅行やレジャーでついついお金を使い過ぎてしまう季節でもあります。

「大丈夫、しっかり貯金をしているから」と思っていても、老後にこの貯金額で足りるのか、ふと不安になることもあるでしょう。

老後はひとりで気ままに過ごすという人は、人に頼れない分、お金が重要になります。

平均的な年金をもらいながら、ひとりで老後を過ごすには、いくら貯金が必要なのか、介護費用も含めて試算してみたので参考にしてみてください。

1. 年金の平均受給額はいくら?

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2022年度の厚生年金の平均年金月額は約14万3973円、国民年金の平均年金月額は5万6316円となっています。

<厚生年金受給権者の平均年金月額>

  • 男性:16万3875円
  • 女性:10万4878円
  • 全体:14万3973円

<国民年金受給権者の平均年金月額>

  • 男性:5万8798円
  • 女性:5万4426円
  • 全体:5万6316円

【写真全4枚中1枚目】厚生年金・国民年金の平均年金月額。2枚目では65歳以上・単身者の1ヶ月の生活費を紹介1/4

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

国民年金だけの場合、月の年金額は平均で5~6万円と少額になります。

会社員や公務員など厚生年金が受給できる人は国民年金(基礎年金)に報酬比例部分が上乗せとなるので、月の年金額は平均で14~15万円となっています。

ここでは会社員を想定して、厚生年金のおおよその平均額である月15万円の年金が受給できるおひとりさまの老後に必要な貯金額を試算してみたいと思います。

2. 月15万円受給できる人の年収はいくら?

貯金額の試算の前に、月15万円年金を受給できる人は現役時代にいくら稼いでいたのか、現役時代の平均年収を導きだしてみましょう。

<条件>

  • 2003年4月以降に40年間(480ヵ月)厚生年金に加入
  • 基礎年金は2024年度の満額(年額81万6000円)とする

<計算式>

平均年収÷12×0.005481×厚生年金の加入月数=厚生年金の報酬比例部分

厚生年金の報酬比例部分=15万円×12ヵ月-81万6000円=98万4000円
平均年収÷12=98万4000円÷(0.005481×480)≒37万4000円

平均年収は約448万8000円となりました。

年金を月15万円受給できる人の年収はおよそ450万円ということがわかりました。

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は458万円なので、年収でみても平均的であることがわかります。

3. 1人暮らしの生活費はいくら?

ここからは、月15万円の年金で生活ができるのか、総務省の家計調査から1人暮らしの生活費をみてみます。

65歳以上の単身者の1か月の生活費2/4

65歳以上の単身者の1か月の生活費

出所:総務省「家計調査/家計収支編/単身世帯/2023年/第2表 男女,年齢階級別/65歳以上」をもとに筆者作成

1か月の生活費は約15万円ということがわかりました。

しかし、この調査の対象世帯の持家率は85.1%であるため、住居費が低くなっています。

老後の住まいが賃貸である場合は、家賃の支払いがあるため、住居費はもっと高くなるでしょう。

ただし、家賃はお住まいの地域や住居の種類によって幅があります。

ここでは、家計調査の「住居の所有関係別の民営借家」の全国平均である「5万3691円」を賃貸住まいの人の住居費として試算したいと思います。

  • 持ち家の人の生活費:14万9033円…約15万円
  • 賃貸の人の生活費:18万9621円…約19万円

老後に賃貸の場合は、約19万円を生活費として考えなければならないため、持ち家の人よりも老後資金が多く必要になります。

年金を月に15万円受給できても、その金額をすべて生活費にはできません。

次章では、年金から引かれるお金について詳しく解説していきます。

4. 年金15万円の手取りはいくら?

年金を月に15万円受給できても、その金額をすべて生活費に充てられるわけではありません。

年金額に応じて、税金や社会保険料が引かれて、手取りは15万円よりも少なくなります。

<年金から引かれるもの>

  • 国民健康保険料※
  • 介護保険料
  • 所得税
  • 住民税

※75歳以降は後期高齢者医療保険料となります。

月額15万円(年額180万円)受給している人の手取り額を計算してみます。

4.1 年金月額15万円の手取りを試算

<条件>

  • 東京都八王子在住、66歳1人暮らし、厚生年金180万円(月15万円)受給

<国民健康保険>

所得割額:(前年の総所得金額等※-基礎控除43万円)×10.56%
均等割額:加入人数×6万3100円

参考:八王子市「年間保険税の決め方(令和6年度(2024年度))」

所得割は2万8512円、均等割は6万3100円ですが、均等割には軽減措置があり、このケースでは5割軽減に当てはまるため、3万1550円となります。あわせて6万62円(年額)です。

国民健康保険料:6万62円(年額)

<介護保険料>

第6段階にあてはまるため、8万2100円(年額)となります。

参考:八王子市「令和6年度(2024年度)から令和8年度(2027年度)の介護保険料(所得段階)」

<所得税>

(公的年金収入-公的年金等控除額-各種所得控除-社会保険料控除)×税率

180万円-110万円-48万円(基礎控除)-14万2162円(社会保険料控除)=7万7838円
7万7000円(課税所得)×5.105%

所得税:3930円

<住民税>

所得割一律10%(市民税6%+都民税4%)
均等割5000円

住民税:1万5100円

月15万円の受給額の場合、手取りは13万6567円となりました。

では、年金15万円で生活するには貯金はいくらぐらい必要なのでしょうか。

次章でみていきます。

5. 年金15万円なら貯金はいくら必要?

年金の手取りを13万5000円として、生活費を引き、足りない分は貯金を取り崩す形で老後を過ごした場合に必要な貯金額を出してみましょう。

物価の上昇は考慮せず、95歳まで生きた場合の不足金額を単純計算で試算

<持ち家の人>

  • 13万5000円-15万円(生活費)=1万5000円不足(月額)
  • 年間の不足額18万円×30年間=540万円

<賃貸の人>

  • 13万5000円-19万円(生活費)=5万5000円不足(月額)
  • 年間の不足額66万円×30年間=1980万円

持ち家の人は約500万円、賃貸の人は約2000万円不足するため、不足分が最低用意しておかなければならない貯金額となります。

6. 老後は医療・介護費用がかかる

試算のもとにした生活費は、自活して生活できる人の日常の生活費であり、老後はこれ以外にかかってくる費用も考慮しなければなりません。

高齢になると医療費が増え、介護になった場合には介護費用やバリアフリー化のためのリフォーム代などがかかってきます。

生命保険文化センターが行った調査によると、介護に要する費用のうち、一時費用が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円かかり、介護期間の平均61.1ヵ月から総額を求めると約580万円になります。

ただ、月々の費用は、介護を「在宅」で行った場合と「施設」で行った場合をあわせた平均となっており、「在宅」の場合は4.8万円、「施設」で行った場合は12.2万円と、施設の方が2.5倍費用がかかります。

12.2万円で計算するとおよそ800万円となります。

この他に有料老人ホームなどに入居するには、入居一時金もかかってくるので、それらを含めて考えると、おひとりさまの老後の場合は、介護費用として800万円~1000万円程度準備しておくと安心でしょう。

7. 月15万円の年金なら貯金1300万円~1500万円必要

以上のことから、おひとりさまの老後を想定している人で、年金を月15万円受給できるケースでは、貯金は1300万円~1500万円程度必要といえるでしょう。

また、住居が賃貸の場合は、2800万円~3000万円に増えます。

厚生年金の平均的な受給額でも、年金だけでは不足することがわかりました。

今後、物価が上昇し、マクロ経済スライドによって、物価の上昇ほど年金額が増えない場合は、さらに不足することになるでしょう。

年金で生活基盤を作り、不足分は現役時代に各々で蓄えておく、あるいは老後も長く働くことで、老後資金の不足分をカバーするなど、自助努力が必要になってきます。

ひとりの老後を考えた時、自宅で自立した日常生活を長く過ごせるように、健康に気を配ることも大切です。

参考資料

石倉 博子