2. 【考察】なぜ、社会人の大学進学が増えているのか?
ここでは、近年において社会人の大学進学率が増加している背景を見ていきましょう。
2.1 【リスキリングの重要性の増大】社会の高度化に対応できる人材の育成
社会人学生が増えた大きな理由として「リスキリング」が挙げられます。リスキリングとは「学び直し」のことです。
英語では「Reskilling」と表記し、「再」を意味する「Re」と「スキル」を意味する「Skilling」の二語に分割できます。
リスキリングが求められる背景の1つには、社会の高度化が挙げられます。例えば、人間はAIの発展やDX化などによって単純作業に携わる機会は少なくなりました。代わりに、システム管理やプログラミングなど、より高度なことが求められるようになってきています。
また、従来であれば、熟練者の直観で決めていた物事も、現代ではデータに基づいて検討を行うケースも増えています。
こうした社会で、第一線として活躍するには知識やスキルを得ていることが不可欠です。現在抱える業務の対応や、将来のスキルアップのためにも、大学で学び直すことを決めた人も多くいます。
ちなみに、厚生労働省では企業によるリスキリングの一環として「人材開発支援助成金」を設けています。
とくに「事業展開等リスキリング支援コース」では、企業の持続的発展のため新製品製造や新サービスの提供により新たな分野に展開したり、デジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れたりするための人材育成に取り組む事業主を対象に助成金が支給されます。
図表の通り、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高率助成により支援する制度です。
2.2 【定年退職後のライフワーク】生涯を通して学びたいと考える人が増加
現代社会では仕事を主軸に考える人は昔ほど多くはないのかもしれません。若い世代の中にはプライベートや、正社員という働き方にこだわらず自分のやりたいことを優先する人も多くいます。
しかし、高度経済成長期の日本では、男性は家族のために働き、家計を支えるのが当たり前という考え方が根付いていました。
こうした社会風潮の中、大学に進学できる環境にある家の男子は法学部や経済学部など、実利的な学部を選ぶ傾向にありました。
また、大学進学率は半数以下だったため、大学教育を受けずに社会に出た人も多くいます。
こうした時代に企業戦士として働いてきた人やその妻の中には、大学で自分の好きなことや興味のあることを学びたいと考える人が少なくありません。
歴史や哲学を収入に直結させるのは容易でないため、10代や20代のときにこれらを学ぶことを断念してきた人もいます。
定年退職後、自分が本当に興味のある学部学科に進学して、学問を探求したいと考える人は少なくないのです。