2. 会社員の生涯年収はいくら?
続いて、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2023 ー労働統計加工指標集ー」を基に、会社員の生涯年収を見てみましょう。
2.1 会社員の生涯年収
学校卒業後の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)は男性の大学卒で2億5000万円、女性の大学卒で2億円です。
企業規模が大きいほど高くなる傾向があり、例えば男性で大学卒の場合、企業規模1000人以上では2億9000万円まで達するものの、企業規模10~99人では2億円にとどまります。
また退職金を含めた金額では、男性は10~99人の企業規模では2億6000万円であるのに対し、1000人以上では3億7000万円。
女性は10~99人で2億1000万円なのに対し、1000人以上では2億9000万円となりました。
企業規模により生涯賃金の差はさらに開くことがわかります。
2.2 会社員の退職金
別の統計資料にはなりますが、厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、大学・大学院卒の定年退職金は次のとおりです。
- 20~24年:1021万円
- 25~29年:1559万円
- 30~34年:1891万円
- 35年以上:2037万円
- 合計:1896万円
公務員と同様に勤続年数や昇進・昇給スピードによって異なる上に、企業規模によっても差が出ることがうかがえます。
3. 生涯年収は公務員のほうが高いのか?
それぞれ異なる資料で「モデル給与例」「平均額」から算出するのであれば、国家公務員の「本府省課長」の生涯年収は3億円超えとなり、大企業の会社員と同じかそれ以上と推定されます。
しかし前述のとおり、公務員でも職種や役職、勤務地などに大きく左右されるため、単純に比較することはできません。
また、退職金や賞与の支給月数が減少傾向にあることから、今後は公務員の給与水準が落ちる可能性もあるでしょう。
生涯年収を考える上では、「公務員か会社員か」以上に、その先の出世や昇進コースのビジョンを描けるかどうかが重要になりそうです。
4. まとめにかえて
公務員と会社員の生涯年収について比較してみました。モデル例や平均の提示はあるものの、実際の生涯年収には個人差があります。
仕事を選ぶ基準には、目先の給与だけでなく年収アップの見通しや退職金の充実度も重要かもしれません。
そもそも給与だけではなく、やりがいや福利厚生を重視する方も多いでしょう。
さまざまな視点から、今後のキャリアについて考えていきたいですね。
参考資料
- 内閣府「国家公務員の給与(令和5年版)」
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2023 ー労働統計加工指標集ー」
- 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
- ソニー生命保険「子どもの教育資金に関する調査2024」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
太田 彩子