2. なぜ年金天引きされるの?日本年金機構の回答とは
年金天引き(特別徴収)される理由として、日本年金機構は下記のように回答しています。
高齢者のほとんどの方が何らかの公的年金を受け取っていますので、年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税の各種保険料(税)を特別徴収することにより、年金受給者の方は個別に各種保険料(税)を金融機関等に納めに行く必要がなくなります。
また、市区町村は住民に個別の納付勧奨などを行わなくても各種保険料(税)を収納することができます。
こうしたことから、年金受給者の方や市区町村の負担を軽減する仕組みとして、市区町村からの依頼に基づき、年金から各種保険料(税)の特別徴収が行なわれています。出所:日本年金機構「Q.年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収するのはどうしてですか。」
つまり、
- いずれにしても保険料や税金は納める必要がある
- 年金天引きにすれば、わざわざ金融機関等に納めに行く必要がなくなる
- 市区町村は住民に個別の納付勧奨などを行わなくても各種保険料(税)を収納することができる
ことから、年金受給者と市区町村の両者にメリットがあるとしています。
確かに毎月の納付は手間がかかるものですし、高齢者の中には「口座振替の手続がわからない」とされる方も多いです。
また筆者は自治体職員をしていましたが、収納業務は煩雑になりがちだったので、年金天引きで納めてもらえるのは助かりました。
一方で、年金天引きにもデメリットはあります。
市区町村からの依頼に基づいて年金天引きが始まるため、どうしてもタイムラグが発生してしまうのです。
転入や年齢到達で資格取得した場合、いきなり天引きはできないのでしばらくは普通徴収を行います。また転出や死亡などで資格喪失した場合も、すぐには天引きを止められずに過誤納となることはしばしばあります。
あとから還付の手続きをとりますが、制度が煩雑のため「いつの分の年金でいつの分の税金?」との疑問も寄せられました。
前年の所得を基準に決まる住民税や保険料などは、その天引き額が年度途中で決定するため、10月から手取りが変わることもあります。
こうした制度のわかりにくさは、年金天引きのデメリットといえるでしょう。
3. 国民年金と厚生年金は平均でいくら?
最後に、老後に支給される国民年金や厚生年金の平均月額をご紹介します。
年金は2カ月分まとめて支払われますが、ここでは月平均の受給額を見ていきましょう。
2023年12月に公表された、厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から確認します。なお、こちらは額面なので、実際の手取り額はもっと少ないことにご留意ください。
3.1 国民年金の平均月額
- 男女全体平均月額:5万6316円
- 男性平均月額:5万8798円
- 女性平均月額:5万4426円
満額に近い受給額の方が多いとわかりますね。あまり個人差はないようです。
- 1万円未満:6万5660人
- 1万円以上~2万円未満:27万4330人
- 2万円以上~3万円未満:88万1065人
- 3万円以上~4万円未満:266万1520人
- 4万円以上~5万円未満:465万5774人
- 5万円以上~6万円未満:824万6178人
- 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
- 7万円以上~:178万3609人
一方で厚生年金は、保険料が報酬比例制であることから、男女差や個人差が大きくなっています。
3.2 厚生年金の平均月額
- 男女全体平均月額:14万3973円
- 男性平均月額:16万3875円
- 女性平均月額:10万4878円
※国民年金の金額を含む
男女差は月額で約6万円。また下記の通り、個人差も大きいのが特徴です。
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
4. 4月15日は年金支給日!手取り額に注意
次の年金支給日は4月15日です。シニアにとって、2カ月ぶりの年金支給日は待ち遠しいものでしょう。
ただし年金額は個人差が大きいこと、また天引きされるお金があることには注意が必要です。
天引きされるのはマイナスに感じるものですが、一方で納付の手間が省けるのはひとつのメリットともいえます。
年金振込通知書も確認することで、実際の振込額に慌てないようにしましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和6年度 介護納付金の算定について(報告)」
- 杉並区「介護保険料について」
- 日本年金機構「Q.年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収するのはどうしてですか。」
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和4・5年度の険料率について」
太田 彩子