2018年の2月、朝日新聞で奨学金破産の記事が取り上げられました。その記事が大きな反響を呼び、現在も数々のネットメディアで、実体験を語る記事や議論を呼びかける記事が盛んにアップされています。増える奨学金破産の原因は一体どこにあるのでしょうか?

増え続ける受給者と返済延滞者

現在、奨学金の受給者は130万人に上り、学生の2人に1人が何らかの形で奨学金を借りています。20年前の奨学金受給者は46万人。比べると約2.8倍にも増加しています。また、奨学金に絡む自己破産者は、2016年までの5年間で1万5338人。内訳としては本人が8108人、保証人が7230人。そして2016年度は過去最高の3451人が破産しました。

学生に奨学金支援事業を行っている日本学生支援機構によれば、返済の滞納が3カ月以上続く人は、16万人もいるとのこと(2016年度末時点)。同機構のアンケート調査によると、「今後決められた月額を返還できる」と回答した人は全回答者の3割強しかいませんでした。

本人のみならず、親や親戚までも巻き込んで自己破産してしまうケースや、夫婦で相手が奨学金を借りていて延滞してしまうケースなどを考えると、奨学金を借りていない人であっても他人事とは言い切れません。

高騰する学費、拡大する非正規雇用

奨学金を借りる学生が増加している根本的な原因は「学費の高騰」です。1980年の国立大学の年間平均授業料は約22万。一方で2010年は53万となっており、その金額は2倍以上になっています。

返済ができない理由としては「非正規雇用の広がり」が大きいといわれています。たとえば関東圏でいえば、いわゆる「MARCH」などの有名私立大学を出ていても非正規雇用という話もあるようです。非正規雇用の場合、安定した収入がないため、毎月の定額返済が厳しく、解雇されたときのことなどを考えると、その負担の大きさは想像に難くありません。

また、昨今ではブラックな職場によって転職することを余儀なくされたり、メンタルを崩して休職してしまったりするケースなども珍しくありません。

制度が時代に合っていない!?

「奨学金返済は自己責任、自己破産は無責任」と言われますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

日本では「大卒至上主義」の現在、雇用にあたっては多くの会社で当たり前に大卒を期待されています。しかし、いまの大卒には、以前のような「正規雇用・年功序列制度による給与の上昇」「定年までの安定した収入の約束」などの特権はありません。奨学金返済が可能だったのは、そのような特権があったからではないでしょうか。

また、奨学金の返済能力は、卒業後の景気状況・家庭環境・職場環境など、本人の能力だけではない部分も大きく作用してきます。そのようなことを踏まえて奨学金について適切に考えられる学生は少ないように思えます。

奨学金は本来、「助け」となるもの

「お金がないなら大学に行かなければいい」という意見もありますが、奨学金は本来、「学びたい意欲があるのに家庭の収入が十分でない学生」を手助けするものだと考えると、いささか議論の余地がありそうです。

2014年度、日本学生支援機構は、「延滞金の利率を10%から5%に下げる」「年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばす」などの対策を採りました。また、無利子の奨学金の導入検討をしている地域や独自の奨学金システムを導入している大学もあるようです。

これらの手当ては特効薬とはいえませんが、これによって、少しでも不幸な若者が減るといいですね。

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