4. 遺言書を無効にして欲しいと弁護士に訴えたB子さん
B子さんは東京の自宅に戻った後、弁護士に相談して遺言を無効にしようとしました。
内容にどうしても納得がいかない上に、少ない遺産しかもらえなくても、Aさん夫婦に義理立てしている夫Bさんがどうしても許せなかったのです。
しかし、弁護士が遺言書を確認したところ、形式は有効なうえ、遺留分を侵害されているわけではないので、遺言書を無効とするのは難しいと言われてしまいました。
このトラブル以降、B子さんは一周忌などの法事には一切出席しなくなりました。また、次男BさんもB子さんへ気を遣ってか、実家へ帰省することはなくなり、兄弟仲は冷え切ってしまったのです。
5. 遺言書を作成するだけでは生前対策として不十分だった
今回紹介したAさん・Bさん兄弟は、一般的に遺産相続争いを防ぐために有効な手段と言われる公正証書遺言があっても争いが起こりました。
では、AさんBさん兄弟が揉めないために、父親は生前何をすればよかったのでしょうか。
それはAさんBさん両夫婦がそろっている場で、父親が自らの遺言の内容について腹を割って話すということです。
父親の意思を本人の口から遺産分割案を相談という形で聞いたのと、死後に遺言書で決定事項として知らされたのでは、遺産分割の割合が少ないBさん夫婦の心象は大きく異なることでしょう。
遺産相続争いを防ぐために生前対策として遺言書を作成する方は多いです。確かに遺言書があれば、その遺言書に形式的な不備がなく、遺留分を侵害していない限り、遺言書に記載さえた通りに遺産分割を行うことができます。
しかし、遺産分割方法が決まっているからといって、遺産相続争いが起きないわけではありません。相続人は一人ひとり置かれた立場も違えば、感情があります。
その感情を無視して形式だけの生前対策を進めていけば、B子さんのように不満を爆発させる人が現れることでしょう。
遺産相続争いを防ぐための生前対策として大切なのは、何よりも「相続人たちの心をくみ取る」という行為なのだということを、忘れてはならないのかもしれませんね。
5.1 【ご参考】一覧表:公正証書遺言の作成手数料
遺言の目的である財産の価額別:公正証書遺言の作成手数料数料
- 100万円以下:5000円
- 100万円を超え200万円以下:7000円
- 200万円を超え500万円以下:1万1000円
- 500万円を超え1000万円以下:1万7000円
- 1000万円を超え3000万円以下:2万3000円
- 3000万円を超え5000万円以下:2万9000円
- 5000万円を超え1億円以下:4万3000円
- 1億円を超え3億円以下:4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
- 3億円を超え10億円以下:9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
- 10億円を超える場合:24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
参考資料
佐橋 ちひろ