20年分の退職後の生活をカバーできる資産が必要とみているが・・・

50-60代12,000人強※に対して行ったアンケート調査の結果から、5回にわたって、退職後の「資金の引き出し世代(D世代、デキュムレーション世代)」の特徴を紹介しています。

※現役者6,333人、退職者6,250人。2017年8月上旬に実施。

この調査では、退職後、公的年金以外に必要な資金の総額と、1年間に必要な資金額を別々に聞いています。この2つのデータを使って、回答者が何年分の資金が必要だと考えているかを計算してみます。

2つのデータをともに回答した退職者と現役者6,681人の総額と年額のレンジの中央値を使って、総額が年額の何倍あるかを計算すると、10倍以下、すなわち年間必要額の10年分以下の総額を想定している人が32.6%、10年から20年以下を想定している人は48.1%、そして20年超を想定している人が19.3%となりました。

8割以上の回答者が、年金以外に必要な総額を年間必要額の20年以下で想定していることがわかります。

現実より20年も短い退職後のライフプラン』で言及したように、今回のアンケートの結果は、現役者の68.2%が84歳までの人生を想定しており、65歳から計算すればほぼ20年を念頭に置いていることがわかっています。公的年金以外に必要な資金総額でみても、同じく20年程度までをみている人が8割に達しており、退職後の生活を20年で想定することが一般的になっているように思われます。

しかし、20年という退職後生活は一般的に言われるよりもかなり短く、退職後のライフプランニングとしては懸念が残る前提と言えます。

必要と考える資産を保有している人は半分以下

では、その必要資金総額を実際に保有できている人はどれくらいいるのでしょうか。

次に、退職後に公的年金以外に必要な資金総額に加えて、家計で保有している資産額を合わせて分析してみます。2つのデータから、必要な資金総額以上に資産を保有している人、必要な額程度を保有している人、資産が必要な額に届かない人とわけてみると、意外に多くの人が必要額かそれ以上を保有していることがわかりました。

数値を具体的に回答してくれた退職者3,010人のうち7割が、また現役者2,935人でも6割が「必要額以上を保有している」ことがわかりました。

しかし、そもそも年金以外に必要な資産総額を過少に想定している場合には、必ずしも安心とは言えないはずです。そこでこの必要資産総額を2,000万円以上と想定している人だけを抽出して、同じように分析してみると、様相は大きく変わりました。

「必要以上に保有している」人は、退職者1,353人で5割、現役者1,500人で4割に低下します。実際にある程度の必要総額を想定している人を前提にすると、十分に用意できていない人が意外に多くいることがわかってきます。

アンケート結果からみえてくる、資産に関する退職後生活の準備状況は、20年の生活分を保有している人でさえ全体の半分にとどまっているという実態です。

退職者の年代別退職後年収の源泉(単位:%)

回答者全体

年金以外に必要な資金総額が2,000万円以上と回答した人

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、「資産活用世代のお金との向き合い方」、2017年9月

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史