2. 年収1000万円でも世帯によって手取り額が異なる
年収1000万円を得ている方の手取り額がいくらになるのかは、ひとり暮らしか家族ありか、扶養する子どもが何人いるかなどにより異なります。どのくらいの差が出るのか、3つのケースで比較してみましょう。
2.1 ひとり暮らしで扶養者なしの場合は約720万円
ひとり暮らしで扶養している子どもや親がいない場合、手取り額は約720万円が目安となります。計算方法は以下の通りです。
【シミュレーション条件】
- 男性45歳、会社員(給与所得のみ)
- 控除項目は基礎控除、社会保険料控除
- 住民税は課税所得の10%とする
このケースで、給与から差し引かれる項目と金額は以下のようになります。
- 厚生年金保険料:71万4000円
- 健康保険料(介護保険料を含む):58万9000円
- 雇用保険料:6万円
- 所得税:81万4000円
- 住民税:62万700円
これらを合計すると279万7700円となり、1000万円から差し引くと、手取り額は720万2300円になります。
2.2 夫婦と小学生の子ども1人の場合は約732万円
夫婦と小学生の子ども1人の世帯の場合、手取り額は約732万円が目安となります。計算方法は以下の通りです。
【シミュレーション条件】
- 夫:45歳、会社員(給与所得のみ)
- 妻:45歳、専業主婦
- 控除項目は基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除
- 住民税は課税所得の10%とする
このケースで、給与から差し引かれる項目と金額は以下のようになります。
- 厚生年金保険料:71万4000円
- 健康保険料(介護保険料を含む):58万9000円
- 雇用保険料:6万円
- 所得税:73万8000円
- 住民税:58万3000円
これらを合計すると268万4000円となり、1000万円から差し引くと、手取り額は731万6000円になります。
2.3 夫婦と子ども2人(高校)の場合は約754万円
最後は、夫婦と高校生の子ども2人の場合を見ていきましょう。手取り額の目安は約754万円で、計算は以下のように行います。
【シミュレーション条件】
- 夫:50歳、会社員(給与所得のみ)
- 妻:48歳、専業主婦
- 子ども:16歳・18歳(いずれも控除対象扶養親族の条件を満たしている)
- 控除項目は基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、扶養控除
- 住民税は課税所得の10%とする
この世帯ケースの控除項目とその金額の目安は以下の通りです。
- 厚生年金保険料:71万4000円
- 健康保険料(介護保険料を含む):58万9000円
- 雇用保険料:6万円
- 所得税:58万6000円
- 住民税:50万7000円
これらを合計すると245万6000円となり、1000万円から差し引くと、手取り額は754万4000円になります。
2.4 3つのケースのまとめ
上記3つのケースの手取り額をまとめると以下表のようになります。
- ひとり暮らし:720万2300円
- 夫婦+子ども1人(小学生):731万6000円
- 夫婦+子ども2人(高校生):754万4000円
同じ年収1000万円でも、ひとり暮らし世帯と夫婦と子どもの4人家族の世帯を比較すると、手取り額に約34万円の差が生じています。配偶者控除や扶養控除が適用されるほど手取り額が高額になることがわかるでしょう。
所得控除には、このほかにも配偶者特別控除や生命保険料控除、寄付金控除、小規模企業共済等掛金控除などがあります。該当するものを忘れずに申告すると、手取り額を増やすことが可能になります。
なお、記事中の金額はあくまでもシミュレーションであり、実際には異なることにご注意ください。
3. まとめにかえて
年収1000万円と聞くと高額な収入があるという印象を受けますが、そこから社会保険料や税金が差し引かれるので、実際に手元に入る金額は2〜3割ほど減額されることが多いです。
また、世帯により配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除、寄付金控除など適用される所得控除の項目や金額が異なるため、税額に影響が出ます。
それに従い手取り額も変動するため、年収1000万円の手取り額は〇〇円と一概に言うことはできません。
しかし、シミュレーションでご紹介したようにある程度の目安を知ることは可能なので、ひとつの参考金額として活用いただけますと幸いです。
参考資料
- 全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
- 厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
木内 菜穂子