実家で暮らすおひとりさまに対する否定的な意見はアカデミックな領域やインターネット上での書き込みを中心に珍しくないといえるでしょう。
最近では、実家暮らしのおひとりさまに対して「子ども部屋おじさん/おばさん」といったネットスラングがインターネット上で普及しています。
また、1999年には山田昌弘氏による著書『パラサイト・シングルの時代』が出版されました。
同著では親の生活圏から出ずに暮らす独身者を「パラサイト」という言葉を使って問題提起しています。
しかし、女性一人あたりの出生数が少なくなり、日本における経済の衰退を鑑みると、おひとりさまの実家暮らしは親子ともにメリットが多く、批判の対象にすべきでないケースも多いことに気付きます。
本記事では、おひとりさまの実家暮らしやその現状、おひとりさまが実家で暮らすことのメリットを見ていきましょう。
1. おひとりさまの実家暮らしが批判される理由とは
夫婦どちらかの実家に同居している人の中には子どもの世話を親に任せたり、家賃を少なくしてもらったりなど、経済的にも余裕が出ている人もいます。
結婚後も親に頼っている状態ではあるものの、批判の対象になることはほとんどないでしょう。
しかし、単身者が実家で暮らしていると事情は異なるようです。
「多様性」が認められつつある日本ですが、「実家暮らしのおひとりさま」へ対する見る目はやや厳しいケースも。
これは、社会においてある程度の年齢に達したら結婚して、自分の家庭を築く人がマジョリティであることが関係しています。
近年、日本は単身者が増加傾向にあります。20~30年前と比べると、結婚や出産を人生におけるプライオリティの上位に位置付けている若者は少ないといえるでしょう。
とはいえ、現状としては、30歳代以上であればおひとりさまは社会における多数派ではなく、少数派です。
内閣府 男女共同参画局「 男女共同参画白書 令和4年版」によれば、50歳時の未婚割合(2020年時点)は男性が28.25%、女性が17.81%となっています。
【図1】によると、50歳時点の未婚者は男性は3割程度、女性は2割に達していません。
また、男性の未婚率が1割を超えたのは2000年前後ですが、女性の未婚率が1割を超えたのは2010年前後とつい最近のことです。
近年では「結婚しない生き方」も社会的に肯定されていますが、「結婚しない」という選択肢が公に認められるようになったのはつい最近のことといえるでしょう。
実家での暮らしは、ひとり暮らしの人や既婚者よりも収入に対して自由に使えるお金が多いイメージがあります。また、家事をはじめとする様々な「負担」が少ないイメージも批判される理由に含まれます。
「社会人になったら独力で生計を立てる」という価値観も世間一般にはあるため、正社員として働いていたり、家にお金を入れたりしていたとしても、自立していないといった先入観を抱かれることもあるでしょう。