4. 30歳代が考えておきたいライフステージごとの支出

男性は現在32歳で独身ということですが、今後は結婚し子どもが生まれる可能性もあります。

子どもの人数や進路によって費用は変わりますが、1人当たり1000万円以上の教育費が見込まれます。

もし住宅を購入するということであれば、数千万円が必要になります。

住宅ローンを組むのが一般的ですが、月々の返済で貯蓄できる金額が減る可能性もありますし、頭金を支払えば今の資産も目減りします。

さらに、ケガや病気による入院や、働けなくなるリスクも考えておく必要があるでしょう。

こうした医療費の、あるいは死亡のリスクに備えて保険に加入するにしても、毎月の掛け金が必要です。

保険料は月々の収支に影響を与えるため、貯蓄のスピードは減速する可能性があるでしょう。

ただし、生計を維持する方が亡くなった場合、要件を満たす遺族には遺族年金が支払われます。

厚生年金と基礎年金によって支給要件や支給額が変わるものですが、遺族を支える存在となります。

ご質問の中に「年金に頼る度合いは高くない気がしますし、最悪年金は要らないのでは?」との声もありましたが、年金にはこのような保障制度があることも押さえておけるといいでしょう。

5. まとめにかえて

年金に関する議論は進んでおり、目にするたびに「将来はもらえなくなるのでは」という不安を抱えることもうなずけます。

少子高齢化が進む中、賦課方式の年金制度では、どうしても年金額の減少や受給年齢の後ろ倒しなどが議論にあがってしまうでしょう。

ただし、だからといって「公的年金に頼らず自分で備える」ということは制度上できません。

日本は国民皆年金という特徴を持っており、原則としてすべての方が加入する義務があるからです。

また、年金には保障機能があることも忘れてはなりません。死亡や障害などのリスクに対し、年金が支えてくれることもあるのです。

老後資金を「自己資金だけ」で備えるとなると、インフレリスクやライフステージごとの支出など、実はハードルが高いものです。

公的年金にも頼りつつ、「足りない分を自分に合う方法でコツコツ備えていく」という視点が大切になるのではないでしょうか。

参考資料

平田 依恵