「生活保護」は、さまざまな理由により生活が困窮している人に対して、国や自治体が定めた最低限度の生活を保障するための公的扶助制度です。
近年続く物価高や新型コロナウイルス感染症の影響で失業者が増えたことで、生活保護を必要とする人は以前よりも増加傾向にあり、生活保護を利用を検討している人は多くなってきています。
そんな生活保護受給者が増える現状で心配になるのが「生活保護の不正受給」。
生活保護は我々が支払った税金をベースに支給されているため「不正受給がされていないか」「本当に必要な人にだけ支給されているのか」気になるところです。
そこで本記事では、生活保護の概要や実態について詳しく解説していきます。
生活保護で冬に加算される「冬季加算」についても解説しているので、合わせて参考にしてください。
1. そもそも「生活保護」とは?
冒頭でもお伝えしたように、「生活保護」はさまざまな理由により生活が困窮している人に対して、憲法が定める最低限度の生活を保障し、それら人々が自立した生活ができるよう援助する制度を指します。
生活保護では、世帯の収入だけでは国が定める「最低生活費」に満たない場合に、保護を受けられます。
上記の場合は、不足する金額を「保護費」として支給し、最低生活を保障してもらえます。
生活保護における収入とは下記のようなものが分類されます。
- 給与、賞与などの勤労収入
- 農業収入
- 自営業収入
- 年金
- 仕送り
- 贈与
- 不動産等の財産による収入
- 国や自治体から受けた手当
- 財産を処分して得た収入
- 保険給付金
- その他の臨時的収入
また、収入の1つである「給与、賞与などの勤労収入」の場合は、税金や社会保険料、交通費などの経費を控除し、収入額に応じた基礎控除が適用となります。
2. 生活保護を受けている人の2世帯に1世帯が高齢者世帯?
次に生活保護を受けている世帯の内訳を見ていきましょう。
厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和5年1月分概数)の結果を公表します」によると、生活保護を受けている55.3%が高齢者世帯となっています。
なお、高齢者世帯の生活保護の利用は年々増加傾向にあり、1998年度は生活保護を受けている高齢者世帯が29万5000世帯だったのに対して、2022年では90万8000世帯にまで増えています。
上記のことから、年金だけで生活していけない高齢者世帯が増加しており、年金が足りずに貯蓄もないシニア世代が生活保護を受けているのだとうかがえます。
3. 生活保護の「不正受給」は増えている?減っている?
厚生労働省の「全国厚生労働関係部局長会議資料」によると、生活保護を受けている総世帯の数は、約20年前と比較すると2倍近くまで増加しており、生活に困窮している人が増えている現状がみてとれます。
年々増加する生活保護の利用者の現状をみて「不正受給者はいないのか」と、疑問に思った方もいるかもしれません。
厚生労働省の「生活保護業務の効果的・効率的実施及び不正受給対策について」によると、不正受給件数及び金額は、ここ数年は減少傾向にあると公表しています(図表参照)。
3.1 生活保護「不正受給」の件数と金額【一覧】
2011年:3万5568件(金額173億1299万9000円)
2012年:4万1909件(金額190億5372万2000円)
2013年:4万3230件(金額186億9033万3000円)
2014年:4万3021件(金額174億7903万円)
2015年:4万3938件(金額169億9408万2000円)
2016年:4万4466件(金額167億6661万9000円)
2017年:3万9960件(金額155億3001万9000円)
2018年:3万7234件(金額140億595万4000円)
2019年:3万2392件(金額129億6089万5000円)
2020年:3万2090件(金額126億4659万3000円)
なお、不正受給の内容としては、約6割が稼動収入の無申告や過少申告となっています。
近年減少傾向にある不正受給ですが、現在もなお3万件以上の不正受給が発生しているのが現状です。
このような事態を受け、生活保護の不正事案に対し、適正な保護の実施や制度への国民の信頼を確保する動きがあります。
具体的には厳正な対処が必要であるとの考えのもと、福祉事務所の調査権限の拡大や罰則の引上げ等を2014年7月より施行しています。
最近では2023年9月27日に、生活保護の不正受給(詐欺)事案として、京都市が元被保護者を詐欺罪の容疑で同署に逮捕したと発表しています。
上記のように不正受給対策を徹底し、該当する場合は不正受給者に罰則が設けられていることから、今後も不正受給は減少傾向に向かうとうかがえます。
4. 生活保護の「冬季加算」について
では最後に、生活保護を受けた際に冬に加算される「冬季加算」について解説していきます。
冬季加算は、冬季期間の寒さをしのぐ目的で「暖房費用」が加算される手当を指します。
冬季加算は、生活保護の1つである「生活扶助費」として支給され、寒い地域・暖かい地域問わず全国の生活保護受給者に対して支給されます。
4.1 冬季加算される金額はいくらか
冬季加算は、「地域区分」「世帯人員」「地域の級地」によって金額が区分されています。
冬季加算の地域区分はⅠ区からⅥ区までの「6つ」に分かれており、各区分それぞれで冬季加算の基準が決められています。
上記の地域区分に加えて、世帯人員と地域の級地で支給額を決めていきます。
上記表からも分かるとおり、冬季加算される金額は地域によって異なり、寒い地域のほうが暖かい地域よりも、冬季加算額が高い傾向にあります。
また、世帯人員が増えるほど住居が広くなることを想定し、人員が多くなるに応じて加算額も増えていきます。
なお、冬季加算には下記の基準を満たす世帯人員がいる場合に、「特別基準額」が支給されます。
- 傷病や障害による療養のため外出が著しく困難で常時在宅が必要な場合
- 乳児(1歳の誕生日の前日までの間にある児童)がいる場合
- 医師の診断で療養のために外出が困難で常時在宅が必要な場合
上記に該当する場合は、特別基準額として通常の1.3倍が加算されることも覚えておけると良いです。
5. 生活保護は国民誰もが利用できる制度
本記事では、生活保護の概要や実態について詳しく解説していきました。
近年の生活保護の受給者割合を見ると約2世帯に1世帯が高齢者世帯となっており、老後に困窮する世帯が増えている現状がみてとれます。
生活保護は、最低限の生活をするための公的制度であり、要件に該当する場合は国民の誰もが利用できる制度です。
もし近年の経済悪化の影響で生活が困窮している場合は、一度自治体の福祉事務所などで相談してみると良いでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」
- 厚生労働省「生活保護制度の概要等について」
- 厚生労働省「全国厚生労働関係部局長会議資料」
- 厚生労働省「生活保護業務の効果的・効率的実施及び不正受給対策について」
- 京都市「【広報資料】生活保護の不正受給(詐欺)容疑に係る元被保護者の逮捕について」
- 厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和5年1月分概数)の結果を公表します」
- 厚生労働省社会・援護局保護課「冬季加算について」
- 厚生労働省「2.生活保護法による保護の実施要領について」
太田 彩子