2. 繰下げ受給を勧めるケース

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年金相談員に年金の受け取り方法を聞いても、繰下げ受給を勧められることも止められることもありません。

老齢年金はいつまで年金を受給できるか(=いつ死亡するか)によって、繰下げしたほうが得なケースと損なケースがあるからです。

ただし、年金受給者によっては繰下げがおすすめなケースもあります。

主なケースを紹介します。

2.1 ケース1. 年金額を増やしたい

年金額を増やしたい人には、繰下げ受給がおすすめです。

年金額が少ない人やゆとりある老後生活を送りたい人など、年金額を増やしたいと考える人も多いでしょう。

自営業者などが受け取る老齢基礎年金は、20歳から60歳までの保険料をすべて納めても年金額は79万5000円(月額6万6250円※)です。

年金だけで生活費を賄うことは難しいため、少しでも年金額を増やしたいところです。

※2023年度の金額。年金額は毎年更改されます。

75歳まで自営業を続けて10年繰下げすれば、年金額は146万2800円(月額12万1900円)まで増加します。

65歳時の年金額が240万円(月額20万円)で毎月の生活費が30万円ならば月10万円の赤字ですが、71歳まで受給を我慢すれば、年金だけで生活費を賄えます。

どちらの場合も、年金を受け取り始める前まで収入があって生活費を賄えることが前提です。

2.2 ケース2. 長生きしたときの生活資金に不安がある

老後リスクは、長生きリスクともいわれます。

貯蓄を取り崩しながら生活している場合、長生きすると貯蓄がなくなって生活に困る可能性があるからです。

老後生活資金としての貯蓄が不十分で、長生きしたときの生活に不安を感じているようなら、繰下げ受給して年金額を増やしておくのも選択肢の1つです。

また、繰下げ受給した人が亡くなるまでの年金の総受取金額は、長生きすれば繰下げしなかった場合よりも多くなります。

人生100年時代といわれるようになり、寿命の伸びとともに長生きリスクは大きくなっています。