2. 老齢年金(厚生年金・国民年金)を受給開始する年齢は65歳に限らない
日本の老齢年金制度では原則65歳から受給開始となりますが、この限りではありません。
繰り上げたり繰り下げたり、老齢年金の受給開始年齢を選択することが可能です。
2.1 繰上げ受給:65歳より前に受け取る方法
老齢年金の受給を、60歳〜65歳までの間に繰り上げることを「繰上げ受給」といいます。
ただし、繰上げ受給を請求した時点に応じて年金が減額され、年金額は減額されたまま一生変わりません。
上図のように、繰上げにより減額される年金額は振替加算額や加給年金額を除いた老齢基礎年金額に「繰り上げた月数×0.4%(最大24%)」で計算される減額率を乗じて計算します。
2.2 繰下げ受給:66歳以降に受け取る方法
逆に、65歳で請求せず66歳以降に老齢年金を受け取ることを「繰下げ受給」といいます。
この場合、繰下げの請求をした時点に応じて年金額が増額されます。
先程の「繰り上げ受給」と同様に、受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金が増額されます。老齢基礎年金・老齢厚生年金それぞれについて増額され、増額は生涯続きます。
2020年の年金制度改正により、2022年4月から「繰下げ受給」できる上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせてセットで繰り下げることも、いずれか一方のみを繰り下げることも可能です。
2.3 老齢年金を一括受給する選択肢も
年金受給の繰下げを希望して65歳時点で請求を行わなかった場合も、さかのぼって一括で受給できます。以前の制度では、繰下げ受給でなくなり受給額は増額されませんでした。
そのため、一括受給するメリットは大きくないとされていましたが、2023年度より制度が改正されました。
その改正内容は、70歳到達後「65歳からの年金」をさかのぼって受給した場合に、請求の5年前時点で繰下げ受給の申出があったものとみなし、増額された年金を一括で受け取れるという画期的なもの。
これを「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。
少子高齢化に伴い、年金制度は徐々にアップデートされるでしょう。関連するニュースなどを見逃さないようにしたいものです。