トヨタ自動車が2018年暦年の販売・生産計画を発表

12月20日にトヨタ自動車が「2018年暦年の販売、生産計画について」を発表しました。トヨタは毎年12月中旬から下旬にかけて、翌年(暦年)の販売・生産計画を発表しています。

今から20年程前は、ほとんどの自動車メーカーが暦年計画を発表していました。しかし、暦年計画の発表を止める会社が徐々に増え、現在ではトヨタ1社だけになっています。おそらく、他の自動車メーカーも社内では暦年計画を策定していると推測されますが、トヨタのような対外的に“堂々と”発表している企業はありません。

なお、トヨタは連結子会社であるダイハツ工業(既に上場廃止)と日野自動車の分も合わせて発表しています。

暦年の販売・生産計画の有益性はやや疑問

ただ、この暦年計画の有用性は決して高いとは言えません。それは、決算年度(4~3月)とリンクしないこと、計画の詳細(地域別など)が全くないこと等が理由です。また、公表される暦年計画が、非常に保守的でザックリとした数字であることも一因です。

正直なところ、ないよりはあったほうがいい、という程度でしょうか。

例年のパターンでは保守的な数字が多い暦年計画

トヨタが毎年発表する暦年計画は、基本的には、販売・生産とも前年並み、もしくは、前年を多少上回る計画が多かったのが実情です。販売と生産はそれぞれ国内と海外に分けられており、年によっては国内外の内訳の強弱がありますが、合計すると結局は例年通りのパターンが続いてきたと思われます。

ただ、最近はVW社(ドイツ)と販売世界一を競っていたため、注目度が高まってきたと言えましょう。

2018年計画はいつもとやや違うパターンの計画か?

さて、今回発表されたトヨタの2018年の計画は、グローバル販売は2017年実績見込み比102%、グローバル生産は同98%でした。ダイハツと日野自動車を加えたグループ全体でも、同じく101%と99%になっています。

なお、グローバル販売は国内販売と海外販売の合計です。グローバル生産も同様です。

2018年は年後半に生産をやや絞り込む計画

今回発表された2018年の暦年計画の特徴は、販売計画に対して生産計画が少し弱含みになっていることです。

販売台数と生産台数は、長期的に見れば「販売台数=生産台数」となるのですが、出荷の時期や在庫水準の調整などにより、年単位でズレが生じることは珍しくありません。しかし、販売台数が前年(2017年見込み)を上回るのに対して、生産台数が前年を下回るという見通しは、最近にないパターンだと言えましょう。

年後半の世界経済の踊り場を予想している?

この計画を単純に受け止めるならば、年後半から生産を徐々に絞り込むということになり、ひいては、グローバル経済の景気拡大一巡を織り込んでいるという見方もできなくもありません。

確かに、今から“来年も景気拡大が続いて順風満帆だ”という計画を掲げるのもどうかと思いますが、例年以上に慎重さがヒシヒシと伝わってくるような計画だと思われます。

また、前年を上回ると見ている販売台数も、牽引役は海外販売であり、国内販売台数は前年から▲5%減となっています。新型「プリウス」の販売一巡などを織り込んでいると見られますが、保守的な計画を通り越した、厳しい計画と見ていいでしょう。

クルマという高級消費耐久財とはいえ、国内の個人消費が必ずしも堅調ではないことを表しているようです。

保守的と見られた2017年計画も結局は概ね想定線

最後に、トヨタが去年発表した2017年の暦年計画が最終的にどうなったのか検証してみましょう。トヨタが公表した2017年暦年計画は、以下の通りでした。(注:いずれも2016年実績見込み比)

  • グローバル販売:101%、グローバル生産:100%
  • ダイハツと日野自動車を加えたグループ全体では、同じく101%と101%

これに対して2017年実績は、

  • グローバル販売:101%、グローバル生産:100%
  • ダイハツと日野自動車を加えたグループ全体では、同じく102%と103%

でした。グループ全体は当初計画を上回って着地しましたが、トヨタ車の販売生産計画は、概ね当初計画通りだったことがわかります。

さて、2018年はどのような結果になるでしょうか。

葛西 裕一