1.1 65歳より前に受け取る「繰上げ受給」
老齢年金を60歳~65歳に繰り上げて受け取ることを「繰上げ受給」と言います。
早く受け取れることがメリットである一方、1か月あたり0.4%減額されるという注意点もあります。
たとえば最大である60歳まで老齢年金を繰り上げるとなると、「60か月×0.4%=24%」の減額となります。
さらに、この減額は生涯にわたり続くこととなります。
1.2 66歳以降に受け取る「繰下げ受給」
反対に、66歳以降に老齢年金を受け取ることを繰下げ受給と言います。
この場合、受給開始を1か月遅らせるごとに0.7%が増額されます。
70歳まで繰り下げると「60か月×0.7%=42%」の増額、75歳まで繰り下げれば「120か月×0.7%=84%」の増額です。
年金開始までの資金の確保は課題ですが、65歳以降も働く方は大いに検討したい制度といえるでしょう。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで繰り下げることも、いずれか一方のみを繰り下げることもできます。
1.3 老齢年金の一括受給
老齢年金を繰下げていた場合、5年前までであればさかのぼって一括受給することができます。
例えば「できるだけ繰下げて年金を増やしたい」と思っていた方が、「大きな病気になりまとまったお金が必要になった」というケースがあてはまります。
しかし、せっかく待機していたのに受給額は増額されないことになります。さらに年金には5年までしか遡れない時効があるため、メリットは薄いといえます。
このような背景から、2023年度から「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始され、デメリットはある程度払拭されました。
執筆者
シトラスコミュニティ短期大学経済学部・ワシントン州立大学人類学部卒業後、株式会社ニトリへ入社。接客、数値管理のノウハウを学ぶ。その後、ジブラルタ生命保険株式会社、ほけんの窓口グループ株式会社へ入社し約2000世帯の相談に携わる。自身の経験からも保障と貯蓄のバランスを重視している。現在は個人向け資産運用、保険の見直しのコンサルティング業務を行う。一種外務員資格(証券外務員一種)、TLC(トータルライフコンサルタント)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、を保有。
監修者
株式会社ナビゲータープラットフォーム メディア編集本部
LIMO編集部記者/編集者/元公務員
京都教育大学卒業。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部で、厚生労働省管轄の公的年金制度や貯蓄、社会保障、退職金など、金融の情報を中心に執筆中。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトの立ち上げに参加した。乗合保険会社の商品ページだけでなく、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得。
はたらく世代のお金の診断・相談サービスを行うマネイロでは、「【計算例付】厚生年金保険料はどのように決まる?ケース別算出方法や受給額を解説」など、お金や年金制度にまつわる記事を発信中。京都府出身。(2024年3月18日更新)