3. 【中外製薬と大塚HD】株価における主なリスクとは
中外製薬株式会社「事業等のリスク」大塚ホールディングス株式会社「事業等のリスク」にはそれぞれの考える経営上のリスクがまとめられています。
これらも参考にすると、両社の株価に対する主要なリスクは次の通りです。
- 新薬開発の不確実性
- IT技術の進捗による競合環境の変化
- 品質・副作用の発生
- サプライチェーン
両社の主要事業の一つである新薬開発は、一つの薬品が販売に至るまで高額な費用がかかり、かつ長期にわたる研究が必要です。
多額な研究開発費が経営を圧迫したり、特許取得など必要手続きの不備、出遅れが業績に大きな影響をおよぼす可能性があります。
近年では、ITプラットフォーマーのヘルスケア産業参入が大手医薬品に対する新たな脅威になっています。
バイオベンチャーなどが特定のデータを寡占したり、IT技術を活用して急速に市場を拡大したりした結果、両社の事業機会が奪われるリスクがあるでしょう。
医薬品は効果が想定ほど実現しなかったり、副作用で多大な健康被害が発生したりする場合には、製薬会社において致命的な打撃となる場合があります。
両社ともリスク管理を徹底してはいるものの、万が一発生した場合には株価の下落要因と思われます。
最後に、医薬品は希少、産地が限られる原材料をしばしば使用します。原産地や輸送プロセスが伝染病や社会情勢の悪化等によって寸断されると、薬品生産に大きな影響をおよぼす場合が考えられるのです。
供給制約による生産容量の低下や、代替輸送手段を用いたことによる輸送コストの増大などが、業績に悪影響を及ぼすリスクとなります。
4. 【中外製薬と大塚HD】両社の配当とは
中外製薬の配当金は、年間で2021年には76円、2022年は78円、2023年は80円予想となっており、基本的に増配されています(2020年に株式分割を行っています)。
対して大塚HDは、配当水準の安定性を重視しているスタンスと考えられます。
2019年以降4年連続で配当は年間100円/株を維持しており、2023年12月期も同水準となる見込みです。
5. 株主優待は大塚ホールディングスのみが実施
大塚HDは医薬品のほか健康飲料「ポカリスエット」などの自社製品の詰め合わせを株主優待として贈呈しています。
毎年12月31日現在で100株以上を保有の株主が対象で、3000円相当の詰め合わせとなっています。
なお、中外製薬は株主優待を実施していません。
参考資料
- 大塚ホールディングス株式会社「2023年度 第1四半期決算説明会 2023年5月12日(金)」
- 大塚ホールディングス株式会社「配当金・配当性向」
- 中外製薬株式会社「株主還元」
- 日本銀行「経済・物価情勢の展望2023年7月」
- 中外製薬株式会社「事業等のリスク」
- 大塚ホールディングス株式会社「事業等のリスク」
- 大塚ホールディングス株式会社「2022年12月期株主優待品のご紹介」
- 中外製薬株式会社「2023年第一四半期決算説明資料」
- 大塚ホールディングス株式会社「2023年第一四半期決算説明資料」
- 中外製薬株式会社「2023年第二四半期決算説明資料」
- 大塚ホールディングス株式会社「2023年第二四半期決算説明資料」
- 日本銀行「2023年7月28日|日本銀行|当面の金融政策運営について」
- 日本銀行「2023年6月16日|日本銀行|当面の金融政策運営について」
宮野 茉莉子