「ガソリン代が高いから補助金(※燃料油価格激変緩和補助金)で引き下げる」というのは省エネを阻害する悪手であり、他の補助金を検討するべきだと筆者は考えます(経済評論家 塚崎公義)。
1. 消費者物価の上昇から生活を守る政策は歓迎
消費者物価の上昇が止まりません。その勢いは賃金上昇率を上回っており、労働者の生活は苦しくなっています。公的年金も、物価上昇率ほどには増えていません。よって、年金生活者の生活もまた、厳しいものとなっています。
本来であれば、賃金などが物価に見合うだけ上昇することが望ましいのですが、今回は円安やエネルギー価格高騰といった要因で輸入物価が上がっていることが主因であり、企業に賃上げをする体力が乏しいという事情もあるでしょう。
円安分に関しては、輸出企業はドルが高く売れて儲かっている一方、輸入企業はドルを高く買わされて困っているわけです。
しかし前者は主に株主への配当等となっていて輸出企業等の労働者への恩恵は限られています。一方で、後者は幅広い消費者にとって重い負担となっているのです。
そこで、政府が財政で国民生活を守ろう、という方針であることは筆者も歓迎しています。
政治家の人気取りで財政赤字が無制限に拡大してしまうような「バラマキ政策」では困りますが、実際に国民が困っているのを何とかするための財政支出であれば、積極的に行なうべきでしょう。
しかし、どのように国民生活を支援するか、という点に関しては、現在の政府の方針に筆者は賛同しかねます。
2. ガソリン等の価格を抑える補助金は悪手
諸物価の中でも特に庶民の生活を直撃しているのはガソリン等の燃料油価格ということで、政府は燃料油元売り会社に補助金を出し、ガソリン等の小売価格を抑えるように要請しています。
しかし、これは悪手だと筆者は考えています。
ガソリン等の価格が上がらなければ、ガソリン等の消費量が減らないからです。
ガソリン等の消費量が減らなければ、巨額の資金が産油国等に流れ続けることになります。税金を使ってガソリン等の消費量を維持し、投入した税金がそのまま産油国等に流れるのです。
原油価格の値上がりについて「地球環境」の面から考えてみましょう。
世界的な原油消費量が抑制されれば、二酸化炭素の排出量の抑制に繋がり、環境面での効果もあります。しかし「ガソリン補助金」などの登場で、ガソリン等の消費量が減らなければ、こうした環境面での効果の一部が打ち消されてしまうことになるのです。
さらに言えば、原油価格を維持する力としても働きかねません。
補助金を出さなければ日本の原油輸入量が減り(世界全体に占める日本のシェアが小さいので影響は大きくないとは言え)原油価格を押し下げる力が働くかもしれないのに、それを阻害してしまうのです。
3. 望ましいのは、国内の需要を増やす「他の補助金」
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諸物価の値上がりで国民生活が苦しいのであれば、広く国民に対して資金を提供して国民生活を維持してもらおう、という考え方は悪くありません。
問題は「誰に配るべきか」ということです。
「ガソリン等を使っている人が一番困っているのだから、彼らに給付するべき」という考え方は、上記のようにガソリン等の消費を抑制する効果を奪ってしまうので、避けるべきだと筆者は考えます。
そうなると「ガソリン等を使っているかどうか」とは関係ない基準で給付先を決めることになるでしょう。
低所得者はインフレで生活が苦しいので、低所得者に配る、というのは一つの選択肢でしょう。貯蓄ではなく消費に回る可能性が高いと考えられますから、景気への効果も大きいはずです。
3.1 「低所得でも資産家の年金生活者」は給付対象?
ただし、誰が低所得者なのかを把握する手間がかかることは難点です。
加えて「所得は低いものの、多額の資産を持っている年金生活者」に給付する必要があるのかについても、議論が必要となる点でしょう。
それ以前に、誰にどの程度の資産があるかを把握することは困難です。ここはマイナンバーが預金口座等と紐付けされ、国民の資産状況の把握ができるようになればスムーズになりそうですね。
国民の所得や資産を調べることが難しいというならば、いっそのこと「すべての国民に一律で10万円を給付」といった施策も選択肢として挙がるでしょう。
みんなに一律給付となれば、所得の低い人ほど恩恵を受けることになるでしょう。所得税の減税などよりも、良いかも知れませんね。
ただ、2020年の「特別定額給付金」の際には行政の非効率がさまざまな面で浮き彫りになったため、並行して行政の効率化に取り組む必要がありそうです。
子育て支援の発想を取り入れて「児童手当を大幅に増額する」「給食費を無償にする」といった施策なども良いかも知れませんね。
原油価格が高騰している期間だけの措置であるならば、少子化対策としての効果は見込めないでしょう。しかし、子供は「国の宝」ですから、支援ができたら嬉しいことです。
また、子育て世帯であれば受け取ったお金を消費に回す確率も高く、景気はプラスとなるでしょう。
4. ドライブの回数を減らし、飲みに行く人が増えたなら
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ガソリン代の補助をやめる代わりに、先述のような給付金が出た場合をイメージしてみましょう。
「ガソリンが値上がりしているから、ドライブの回数を減らそう。その代わり、給付金で飲みに行こう!」などと考える人が出てくるかもしれませんね。
そうなれば、飲食店が繁盛し、酒蔵や肴の生産者も潤っていくでしょう。産油国に支払う代金を飲み屋に支払うことで、国内の景気が良くなり、税収も増えるかもしれません。
労働力不足が深刻化し、バイトの時給が上昇する可能性もありますね。ワーキング・プアとも呼ばれる人々の待遇が改善することは、大いに望ましいと言えるでしょう。
アルバイトの時給が上がれば、飲み代も上がる可能性がありますね。でも、それは「賃金も物価も緩やかに上昇していく望ましい経済の形」だと言えるでしょう。
バブル崩壊後の長期低迷期にデフレに苦しめられた日本経済が、マイルドなインフレの時代を迎えるとすれば、それは素直に歓迎したいですね。
参考資料
塚崎 公義