受験シーズンと聞くと冬を思い浮かべますが小学校受験シーズンは秋です。学校にもよりますが9月から10月にかけて願書配布と願書提出、そして10月下旬から11月上旬にかけて受験が行われます。

親子の受験と言われる中学受験以上に親の意向が反映される小学校受験は「お受験」とも呼ばれ他の受験とは一線を画す存在です。とくに私立小学校は充実した教育を受けられるため高額な学費等が必要になり、「支払えるだけの余裕がある家庭が受ける特別な受験」でもあります。

しかし、共働き世帯の増加や少子化が進み1人の子に教育費をかけられることもあり、昔に比べて私立大学付属小学校を中心とした小学校受験を考える親も少なくありません。

そこで今回は、少子化でも高倍率で推移する東京の小学校受験について取り上げていきます。

東京都で私立小学校の在籍率は全国平均を超えるけれど

文部科学省の「令和5年度学校調査速報版」によると全国には1万8979校の小学校があり、そのうち私立小学校は244校です。小学校に在籍する児童は、国立、公立、私立合計で604万9503人、そのうち私立小学校の在籍児童は8万57人となり、全体の1.3%ということになります。

東京都の統計「令和5年度 学校基本統計速報(学校基本調査の結果速報)」を元に東京都だけをみると、小学校は1323校あり、私立小学校は55校です。中学受験熱が高い東京の私立中学の校数が187校であることを考えると私立小学校はその3分の1以下しかありません。

同資料を見ると、東京都の小学生の児童62万3632人、そのうち私立小学校に在籍する児童は2万5578人で東京都内の児童のうち4.1%ということになります。

私立小に通う児童の割合は全国平均の3倍以上である東京都内でも、私立小学校に通うのはごく一部の限られた子ども達ということが分かります。

私立小学校に通う児童数

  • 全国:8万57人(全体の1.3%)
  • 東京都:2万5578人(全体の4.1%)

しかし、人気校は毎年倍率が高く、志望する小学校に合格するのは狭き門です。

しかも中学受験に比べると情報は少なく、受験を考える親にとっては不安との戦いにもなります。

【都内お受験】別格の存在・慶應義塾幼稚舎

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東京都内では全校で最も多い私立小学校がありますが、その中でも別格の存在なのが慶應義塾幼稚舎です。

慶応義塾幼稚舎は小学校受験の象徴であり、「幼稚舎合格」は慶応義塾大学までのパスポートを獲得したことを意味します。

福澤諭吉の門下生であった和田義郎が幼年の塾生を自宅に寄宿させ、教育を行ったのが幼稚舎の始まりです。創立は1874年(明治7年)で、来年2024年は150周年の節目の年を迎えます。

一般的に「お受験の頂点」とされる誰もが認める名門校です。6年間担任持ち上がり制や卒業までに1000メートル遠泳を目指すなど、特徴的な教育が行われています。

入試では、他の私立小学校でよく行われる「親子面接」や「親を対象とした面接」は実施されません。ペーパーテストもなく、受験生である子どもが先生の指示を聞いて行う絵画や工作の制作、グループ遊びを通じた行動観察、そして運動をみて合否を決定します。

6年間同じクラスメイトで過ごす教育のため、試験官の教職員はペーパーテストでは測れない子どもの個性やコミュニケーション能力を、入試という限られた時間で見極めることになります。

そのため、受験を考えている家庭では「話を聞いて理解する力」「運動能力」「創造力」「コミュニケーション能力」「協調性」を受験する年の秋までに鍛えて、それなりのレベルにしておく必要があるでしょう。

2023年度入学者試験では、男子定員96名、女子定員48名に対し、志願者数は男子961名、女子623名もおり、倍率は約10倍と、非常に狭き門となっています。