3月、4月は出会いと別れの季節ですが、9月、10月も同じようにその季節となっています。

日本は年度の区切りとして、4月から始まり3月までですが、半期として考えるとこの時期にも人の動きが多いものです。

9月に退職される方も、10月になると退職金を受け取る方が多いのではないでしょうか。

定年退職となると大きな金額になるため、老後資金の足しに考えたり、ローンの返済をしたりなど検討する方もいるでしょう。

また、今後の生活を考えるためにも退職金をどうするかは考える必要があります。

退職金には税金がかかることがあるため、手取りは減る可能性も。さらに受け取り方によって、手取りが変わることもあるのです。

詳しく見ていきましょう。

退職金の受け取り方「一括」と「分割」の違い

一般的に退職金の受け取り方には、下記3つの方法があります。

  • 全額を一時金として受け取る
  • 全額を分割し年金として受け取る
  • 一部を一時金、残りを年金として受け取る

従業員が希望して選択できる場合もあれば、勤務先からの指定があり、選択できない場合もあります。

選択できるのであれば、以降の内容を確認しつつ検討してみましょう。

退職金にかかる税金はいくら?

退職金にかかる税金について、「一括」と「分割」にわけて考えてみましょう。

一括で受け取る場合

退職金を受給する場合は、勤続年数や受け取る金額によって、所得税や住民税がかかることがあります。

【一括で受け取る退職金の税金の計算方法】
(収入金額(源泉徴収される前の金額)– 退職所得控除額)× 1 / 2 =退職所得の金額

退職所得控除額の計算表1/3

退職所得控除額の計算表

出所:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」を参考に筆者作成

たとえば、35年6カ月勤務したAさんは、2000万円の退職金を受け取りました。

Aさんの勤続年数は、6カ月を繰り上げて36年となります。

800万円 + 70万円×(36年 ー 20年)= 1920万円(退職所得控除額)

(2000万円 – 1920万円)× 1 / 2 = 40万円(退職所得の金額)

1.「退職所得の受給に関する申告書」を、勤務先を通して税務署に提出している場合

勤務先が所得税額や復興特別所得税を計算し、退職手当等の支払いの際、退職所得の金額に応じた所得税などの額を源泉徴収するので、確定申告は不要です。

2.「退職所得の受給に関する申告書」を、税務署に提出していない場合

退職金などの支払い金額の20.42%の所得税や復興特別所得税が源泉徴収されます。

受給者が確定申告をすることで、税額の調整や還付があります。

一括で受け取る際は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、煩わしさを減らせるのではないでしょうか。

分割で受け取る場合

分割で受け取る場合は、過去の勤務先から受け取る年金としての計算となり、所得税や住民税の計算がなされます。

一括で受け取る金額と分割で受け取る場合の年金額が同じであれば、ほとんどの方が一括で受け取りますので、年金の場合は10%多く受け取れると仮定して、10年間で2200万円受け取れる場合を考えてみます。

Aさんと同期で同じ勤務先に入社し、同時期に退職したBさんは35年6カ月で退職しました。

勤務先の規定により、分割で受け取った場合、毎年220万円を10年間で、合計2200万円を受け取ることができます。

61歳から年金として受け取った場合、220万円×0.75 – 27万5000円 = 137万5000円(雑所得の金額)

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出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」を参考に一部抜粋し筆者作成

出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」を参考に一部抜粋し筆者作成

退職金の手取り額はいくらになるか

退職金を一括で受け取ったAさんと分割(年金形式)で受け取ったBさんの手取り額を考えましょう。

このケースでは勤務先に退職所得の受給に関する申告書を提出しています。

一括で受け取ったAさんの手取り額

35年6カ月勤務し、2000万円を受給したAさんの場合、退職所得40万円に対して、他の所得と分離して所得税、住民税を計算します。

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出所:国税庁「No.2260 所得税の税率」より、一部抜粋し筆者作成

出所:国税庁「No.2260 所得税の税率」より、一部抜粋し筆者作成

  • 40万円 × 5% × 1.021 = 2万420円(所得税・復興特別所得税含む)
  • 40万円 × 10% = 4万円(住民税)

2000万円 ー 2万420円(所得税・復興特別所得税含む)ー4万円(住民税)
 =1993万9580円

分割で受け取ったBさんの手取り額

Bさんも35年6カ月で退職しました。

勤務先の規定により、退職金を分割して61歳から年金形式として受け取った場合、220万円×0.75 – 27万5000円 = 137万5000円(雑所得の金額)

  • 137万5000円 × 5% × 1.021 = 7万193円(所得税・復興特別所得税含む)
  • 137万5000円 × 10% =13万7500円(住民税)

220万円 ー 7万193円(所得税・復興特別所得税含む)ー13万7500円(住民税) = 199万2307円 

となり、その後も累計で10年間受給できます。また、65歳以降は雑所得の公的年金の控除額も変わります。

住民税(10%)は、所得割の税額だけの記載ですが、別途均等割の税額もプラスされます。

退職金の受け取り方で保険料の金額も変わる

公的年金以外に収入がない場合、Aさんは公的年金の所得をもとに、所得税や住民税、国民健康保険、介護保険の金額が決まります。

しかしBさんは、公的年金以外に勤務先からの年金も所得となりますので、国民健康保険や介護保険の保険料がAさんよりも増えるでしょう。

仮にAさんもBさんも65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を合計で20万円もらえる場合、Aさんは公的年金だけなので、現在の料率で計算すると国民健康保険料が年間で約15万3000円です。

Bさんは公的年金に加え、勤務先の退職金を分割で受け取っているため、国民健康保険料が約31万円と、2倍ほどになっています。

他にも介護保険料を考えると負担が大きくなることを知った上で、一括にするか分割にするか検討しましょう。

退職金の受け取り方まとめ

一括か分割かを考えるときは、所得税や住民税の他に健康保険や介護保険の影響も考慮しましょう。

Aさん、Bさんが社会保険に加入し再就職する場合、国民健康保険料ではなく、勤務先の健康保険に加入することとなります。

退職金の受け取り方が、いろいろなところに影響する場合もあります。

上のような勤務年数で退職金が2000万円の場合であれば、一括で受け取る方が良いと思いますが、分割で受け取る場合は、国民健康保険や介護保険にも影響することも知っておいてください。

今回は、一括で受け取った場合と分割で受け取った場合の金額の差が200万円ですが、金額の開きが大きくなると分割で受け取ると有利なこともありそうです。

また、将来の課税方法や国民健康保険や介護保険の料率は、予測ができません。

退職金の課税制度を改めるという政府の基本方針も出てきている状況なので、様子を見ながら専門家に相談すると良いでしょう。

参考資料

香月 和政