3. 老後の医療費や介護費用はいくらかかる?
おひとりさまが受給できる公的年金を見てきましたが、厚生年金でも男性で約16万円、女性で約10万円です。
お住まいの地域や居住形態、車の保有や利用する交通機関、生活水準など個人差がありますが、年金のみで生活するのは難しいと感じる方が多いでしょう。老後は今の生活に加えて、医療費や介護費用が必要になる可能性も高くなります。
たとえば高齢者の医療費を見てみましょう。以下は現在の高齢者の医療費です。
3.1 高齢者の医療費の自己負担額
- 70歳未満:3割
- 70~74歳:2割(現役並みの所得者は3割)
- 75歳以上:1割(現役並みの所得者は3割)
ただし、2021年6月4日には、75歳以上で年収200万円以上の人は医療費を2割に引き上げる改正法が可決されました(引き上げ実施から3年間は、1ヶ月の自己負担増加額を最大3000円とする配慮措置が設けられています)。引き上げ時期は未定ですが、2022年後半になる見通しです。
高齢者の医療費は現役に比べれば低い印象ですが、一部で引き上げられています。また、医療費がかかる割合も、年齢ごとに異なります。
厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料(2020年度)」の「参考2 生涯医療費(平成30年度)」から累積割合を見ると、一生涯の医療費は69歳までで50%かかり、70歳以上で残りの50%がかかることがわかります。老後は持病を抱えたり、病気をしたりする可能性も考えたおいた方が良いでしょう。
介護については、「LIFULL介護」の老人ホームの費用相場(2021年8月31日時点)をみてみましょう。
- 有料老人ホーム:入居時費用の相場540万円、月額費用の相場23万円(入居時費用あり)・20.1万円(入居時費用0円)
- サービス付高齢者向け住宅:入居時費用の相場19.7万円、月額費用の相場16.5万円(入居時費用あり)・15.4万円(入居時費用0円)
医療費や介護費用まで考えると、年金の他にも自分で老後資金を用意する必要があるでしょう。
4. 早めにコツコツと準備しよう
老後資金の準備をする方法として、一つは毎月公的年金以外に受給できる仕組み作りをしておくと良いでしょう。国民年金のみの方は、国民年金に上乗せされる国民年金基金に加入する方法もあります。他には、iDeco(個人型確定拠出年金)や個人年金保険などで準備する方も増えています。
毎月入ってくるお金を準備するのとともに、預貯金も用意しておきたいところ。ある程度まとまった預貯金が用意できたら、資産運用で「お金を育てる」のもいいですね。たとえばつみたてNISA制度を利用すれば、基本的には長期的に毎月コツコツと購入するものなので、リスクを抑えながら運用もできます。
仕事に育児にと忙しいとお金について調べる時間もないですが、今はインターネットで調べたり、無料動画で学んだり、オンラインセミナーに参加したりするなど、情報収集の方法も多彩です。便利なものを活用しながら、自分の老後のための準備をはじめてみましょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業年報」
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和3年度送付分)」
- 日本年金機構「『ねんきんネット』とは?」
- 厚生労働省「医療費の自己負担」
- LIFULL介護「老人ホームの費用相場」
- 厚生労働省「医療保険に関する基礎資料(2020年度)」
宮野 茉莉子