老後が近くなってくると、皆さんはまず何を思い浮かべますか。

人によって思い浮かべることや優先順位は異なると思いますが、「お金」については誰しもが考えるのではないでしょうか。

例えば、「老後2000万円問題」。一度は耳にしたことがあると思います。

これは、金融庁が2019年に公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書の中で、将来の老後資金に関して平均2000万円が不足するという試算結果のことです。

ただし、年金生活となった際の夫婦の必要資金の平均額であるため、実際には家庭によって必要資金はさまざまです。家族構成も違えば、環境も違います。

そこで今回は、老後の生活に欠かせないお金の事情について、70歳代のおひとりさまの視点で見ていきたいと思います。

1. 70歳代「ひとり世帯」の貯蓄平均と中央値

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」によると、70歳代「ひとり世帯」の貯蓄は平均で1433万円です。

  • 平均:1433万円
  • 中央値:485万円

ただし、70歳代「ひとり世帯」の貯蓄額の中央値は485万円。つまり、平均値との差が約1000万円もあるのです。

円グラフをみると貯蓄2000万円以上保有している方が24.3%いる一方で、貯蓄ゼロの方も28.3%となっており、個人間での格差が大きいことがわかります。

平均値は一部の大きな値に引っ張られやすいという性質上、どうしても極端な値があると実態とかけ離れてしまいます。

その分、中央値との乖離が進んでしまったと考えられます。

ちなみに、同調査における金融資産とは「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分とする。…(中略)…日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く」と定義されています。

日常的に使っている口座は除かれることから、実際にはもう少し貯金があるというシニアもいるでしょう。

とはいえ、「金融資産非保有」が28.3%もいるというのは、意外に感じた方も多いのではないでしょうか。