9月も半ばを過ぎてイタリアも平常ペース、町にはにぎやかさが戻ってきました。イタリア人のバカンスは終了しましたが、イタリアには外国からの観光客が季節を問わずやってきます。

イタリアの世界遺産のひとつベネチアは、イタリア人にとっても憧れの町です。他に類を見ない特異性を持つベネチアは、観光客を惹きつける魅力があります。

しかしここ数年、ベネチアの人口は減り続け、オーバーツーリズムが問題となり始めました。ベネチアの魅力と危機について解説します。

イタリア人も憧れる「アドリア海の真珠」ベネチアとは

AlexAnton/shutterstock.com

水の都とうたわれるベネチア。1987年にユネスコの世界遺産に認定されたベネチアの歴史は、5世紀ごろまでさかのぼります。

ランゴバルト族などの侵略から逃れた人々が、潟に住み始めたのがベネチアの始まりでした。当初は地元の漁民や避難民によって形成されていたコミュニティはやがて、元首(ドージェ)を選出し、東西貿易の要となっていきます。

現在のイタリア海軍の旗は、4つの紋章から構成されています。アマルフィ、ピサ、ジェノヴァ、ベネチアの紋章は、歴史のなかで勢力を誇った海洋国家の名残です。

4つの都市国家のうち3つが没落してしまった後も、ベネチアは1797年にナポレオンによって共和政が廃止されるまで続きました。13世紀から15世紀にかけて、その繁栄ぶりはイタリア半島の都市国家の中でも突出していたのです。

町のシンボルであるサン・マルコ大寺院、旅情を誘うゴンドラ、豊かな経済力を背景に花開いた文化。ベネチアは、町自体の美しさだけではなく、歴史の中で培われた様々な遺産が尽きない町なのです。

イタリア人もベネチアに行きたい!でも行けない!なぜ?

Stefanos Kyriazis/shutterstock.com

外国人だけではなく、イタリア人も1度はベネチアを訪れてみたいと望んでいます。それがなかなか叶わないのは、ベネチアの物価高のためとも言われています。

ベネチアの中心、サン・マルコ広場の老舗カフェでエスプレッソを1杯頼めば、7.5ユーロを請求されます(テーブル席の場合)。ちなみにエスプレッソ1杯は通常、1ユーロ前後なので、ベネチアの物価高は一目瞭然です。

また海の上に浮かぶベネチアは、耕地がありません。漁業による食材のほかは、すべて本土から運ばれてきます。大運河に面したかつての貴族の屋敷は超高級ホテルになっていますが、こちらのお値段も第一級。

通常のイタリア人ならば二の足を踏むような散財を余儀なくされるのが、ベネチア旅行というわけです。特に夏休みなどのハイシーズン、幻想的なカーニバルで有名な冬期は、予約もままならないほどの混雑となるのです。