言葉に詰まってしまい、上手にコミュニケーションを取ることが難しい「吃音症」。日本では、120万人近くいると言われています。
徐々に認知されてきたとはいえ、まだまだ社会の理解が追いついていません。学生時代はもちろん、社会人になってから苦労する場面が多くあるのも事実。
今回は幼少期に発症してから、25年以上吃音と付き合い続けている筆者が苦労した「面接」での体験を紹介します。
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ビジネスの場でも苦労する「吃音」
吃音とは、滑らかに言葉が出ない発話障害の一つです。主な症状は3つあり、「音を繰り返してしまう連発型(お、お、おはよう)」「音を引き伸ばしてしまう伸発型(おーーはよう)」「言葉を出すことが難しい難発型(……おはよう)」といったもの。
幼児が2語文以上の複雑な発話を開始する時期に起きやすく、発症率は5%。成長する過程で改善するケースが多いので、有病率は全人口において約1%です。
あ行が言えなかったり、特定の単語の発声ができなかったり、人によって症状が違う吃音。5歳で発症した筆者は、数字の「7」や「お」から始まる言葉が上手に話せません。
成長するにつれて症状は悪化し、中学生となった13歳から25歳頃まで「難発型」の症状に悩まされました。20代後半を迎えてから徐々に緩和されてきたものの、今でも不自由を感じる場面もあります。
知らない人からすると、吃音者が話す光景が不思議に見えてしまい、嘲笑の対象になるケースがあるのも事実。それは子供の頃だけでなく、社会人になってからも。それだけ世間の認知が進んでいないということでしょう。
会社の採用面接での「吃音」にまつわるエピソード
前述通り、「難発型」は最初の一言目がなかなか出てきません。仮に一言目が話せたとしても、次の単語が出てこない…その繰り返しが吃音なのです。
例えば、「本日はよろしくお願いいたします。〇〇と申します」という5秒で話せるような内容でも30秒以上かかり、相手に怪訝な表情をされることも。
筆者がとくに大変だと感じたのが、初対面の方と長い時間話す必要がある面接でした。吃音者は緊張する場面になると、いつも以上に話せなくなります。
強く記憶に残っているのは、とある会社で行われた新卒採用の集団面接。一番最初の自己紹介で、うまく言葉を発せません。
何も話せないという最悪の状況を打破するため、全身を動かしながら言葉を振り絞るものの…その姿を見て笑われ、「そんなんじゃ社会で通用しないよ」と面接官に厳しい言葉をかけられたのです。
その後は頭が真っ白になり、何を話したのか覚えていません。一緒に面接を受けた学生から、逃げるように帰った光景が今も頭にこびりついています。