日本には「申請しないともらえない」という公的なお金がいくつかあります。

お金を増やすには「収入を増やす」「支出を減らす」ことが原則であるものの、もらえるはずのお金を見逃さないことも重要です。

そこで本記事では、申請しないともらえないお金の一例として、「年金生活者支援給付金」について解説します。

基礎年金の受給者のうち、一定の要件を満たす方は2ヶ月に1度もらえる可能性があるのです。

新しく該当する人には9月から請求書が届くため、今のうちに予習しておきましょう。

1. 年金生活者支援給付金とは?財源にも注目

老齢年金・障害年金・遺族年金を受給中の人で、前年の所得が一定基準額以下の場合、年金に上乗せして受け取れるのが「年金生活者支援給付金」です。

年金は2ヶ月ごとに支給されるため、該当すれば2ヶ月ごとに給付金も受け取れるということです。

年金生活者支援給付金は2019年10月に始まったもので、当時消費税が8%から10%に引き上げられました。

年金生活者支援給付金の財源はこの消費税の引き上げ分であり、「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」の第4条でも次のとおり明記されています。

「年金生活者支援給付金の支給に要する費用の財源は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律の施行により増加する消費税の収入を活用して、確保するものとする。」
引用:e-Gov法令検索「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」

現在の年金生活者支援給付金制度が始まったのは、2019年10月です。同時期には、消費税が8%から10%に引き上げられており、この引き上げ分の税収を用いて、対象者に支給されています。

2. 年金生活者支援給付金の支給要件

「年金生活者支援給付金」には「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」があり、支給要件はそれぞれの給付金ごとに定められています。

2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件

老齢年金生活者支援給付金は、下記の支給要件をすべて満たす方が支給対象となります。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

2.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件

  • 障害基礎年金の受給者
  • 前年の所得(※)が472万1000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 障害年金等の非課税収入は除く

2.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件

  • 遺族基礎年金の受給者
  • 前年の所得(※)が472万1000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く

いずれも前年の所得額が関わっています。年金収入等が低い方は、対象となる可能性があります。

もし該当する場合、支給額はいくらになるのでしょうか。

3. 年金生活者支援給付金の給付基準額はいくら?2025年度は増額!

「年金生活者支援給付金」の給付額は、毎年度、公的年金と同様に価格変動に応じて支給額の見直しが行われます。2025年度の給付額は、前年度より2.7%引き上げとなりました(公的年金は1.9%の増額)。

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5450円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額6813円・2級 月額5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円

老齢年金生活者支援給付金のみ、上記の基準額をもとに保険料納付済期間や保険料免除期間等に応じて実際の給付額が算出されるため、実際の受給額には個人差が出ます。

4. 9月に送付予定!年金生活者支援給付金の請求手続きはどうする?

「年金生活者支援給付金」を受け取るためには、請求手続きが必要となります。

すでに年金を受給している人が新たに該当する場合、日本年金機構から9月以降に請求書が届きます。

4.1 9月以降に送られる請求書で手続き

毎年、9月の第1営業日から順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

届いた方は必要事項を記入し、切手を貼って郵便ポストに投函しましょう。

原則として、請求した月の翌月分からの支給となるため、早めの手続きをおすすめします。

なお、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り翌年以降の手続きは原則不要(※)であるため、継続して受給することができます。

※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき、継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(支払いは12月)から1年間反映されることとなります。

4.2 新規に老齢年金の受給が始まる人のケース

そもそも年金自体を新規で受給する人が、年金生活者支援給付金の対象になることもあるでしょう。この場合、年金請求のタイミングで給付金も手続きすることになります(9月の一斉送信と異なります)。

65歳になる3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前給付用)」に同封され、「年金生活者支援給付金請求書」が入った封筒が届きます。

必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出しましょう。

5. 年金生活者支援給付金対象になるほど、年金の水準は低いのか

年金生活者支援給付金対象になるには、前年の収入や所得が一定以下である必要があります。

ここで気になるのが、そもそも現代のシニア世代は、どの程度の年金を受け取れているのかということです。

厚生労働省が公表している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、確認してみましょう。

5.1 厚生年金の平均月額は14万6429円

〈全体〉平均年金月額:14万6429円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

5.2 国民年金の平均月額は5万7584円

〈全体〉平均年金月額:5万7584円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円

会社員等が受け取る厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額は、現役時代の個人の働き方や年金の加入期間、収入によって大きく異なります。そのため、平均年金月額が1万円未満の人から30万円超の人まで、幅広い受給額帯に分布しています。

国民年金のみを受給する場合は、男女ともに平均年金月額は5万円台となっています(満額受給の場合、2025年度の月額は6万9308円です)。

国民年金のみを受給する場合は厚生年金ほどの個人差は生じていませんが、その分、老後の資金を手厚く準備していく必要がありそうです。

6. 年金だけに頼らない老後計画を

年金受給額の実態や年金生活者支援給付金について見ていきました。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の収入の63.5%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。

「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯は43.4%です。

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

半数以上は年金だけで生活していないことから、何かしらの準備は必要になることがわかります。

まずは、公的な給付金や補助金などの情報を漏らさないようにしましょう。その上で、今の生活だけでなく、老後に向けた準備も大切になります。

参考資料

太田 彩子