国内初、安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く自動車保険を開発

トヨタ自動車は2017年11月8日、あいおいニッセイ同和損害保険と共同で、安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く保険を開発し、2018年1月に発売すると発表しました。

トヨタが展開する、インターネットと接続し走行データが取得できるナビを搭載したコネクティッドカーの一部を対象に、取得した走行データに基づき、毎月の安全運転の度合いを保険料に反映し、基本保険料と運転分保険料からなるトータル保険料のうち、最大で運転分保険料の80%を割引くというものです。「運転挙動反映型テレマティクス自動車保険」と呼ばれる保険です。

すでに、損害保険ジャパン日本興亜では、スマートフォンアプリの運転診断により、保険料を割り引く制度を導入していますが、運転データを直接取得して自動車保険に活用するのは、日本初だそうです。

保険料は「基本保険料」と「運転分保険料」で構成されています。このため、運転分保険料で80%の割り引きが適用されても全体の保険料に対しては約9%の割り引きと、やや物足りない気もしますが、それでも、安全運転の度合いが反映されるというのは画期的です。

具体的には、ドライバーの毎月の運転状況に基づくスピード・アクセル・ブレーキの各挙動の5段階評価およびその結果を総合した安全運転スコア(100点満点)を計算し、そのスコアの点数に応じて毎月の保険料の割引率が決定します。

トヨタのコネクティッドカーは、クルマに関するさまざまな情報をトヨタスマートセンターに自動送信しています。保険料への適用だけでなく、1回の運転ごとに、安全運転スコアや、各挙動に対する簡易的なアドバイスとともに走行ルートと危険な運転挙動の発生地点を確認できる『ドライブレポートマップ』などが提供されるので、運転直後に自分の運転を振り返ることもできます。

今後はますます、データを持つ企業がビジネスを生み出す時代になる

今回のトヨタの取り組みで興味深いのは、「事故を起こさないドライバーに付加価値を提供する」といったことや、「『ドライブレポート』などを通じて、安全運転の促進や事故防止に貢献する」といったこともさることながら、「データを持つ企業がビジネス生み出す」ということを実践している例であることです。

最近では、自動車がインターネットに接続され、走行データなどのビッグデータが収集されています。自動車の走行に関して、トヨタなどの自動車メーカーは大量の情報を持っています。

一方で保険会社のほうは、ドライバーについてわかっている情報は、年齢や家族構成、自己申告の走行距離程度です。安全運転かどうかは過去の実績と免許証の「ゴールド」などで判断しています。その点では、保険会社はむしろ、ほとんどデータを持っていないといってもいいでしょう。保険料率の算定にあたって、どちらが有利か(正確か)は言うまでもありません。

あいおいニッセイ同和損害保険はトヨタグループと親密な関係があり、今回は提携という形になりましたが、将来的には保険会社の存在も問われることになりそうです。

自動車保険に限らず、今後はデータを持っている企業が新たな業態に参入してくる可能性があります。ファクトリー・オートメーション(FA)や、IoTなどを活用する次世代型工場「スマートファクトリー」などの導入、修理・メンテナンスにおいても、データを持つ企業が最適な計画・時期などを提案するようになります。

エネルギーなどの社会インフラのほか、金融、医療、教育などの分野でも、データを持つ企業が既存の大手企業の牙城を脅かすことになることも考えられます。10年後には業界の構図が大きく変わっている可能性もあります。

上山 光一