2023年7月14日に行われた、株式会社タナベコンサルティンググループ個人投資家向けIRセミナーの内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社タナベコンサルティンググループ 代表取締役社長 若松孝彦 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
INDEX
若松孝彦氏(以下、若松):みなさま、こんにちは。タナベコンサルティンググループ代表取締役社長の若松です。本日は、大きく分けて5つの内容をお話しします。会社概要、事業概要・強み、業績動向、成長戦略、株主還元です。最後のAppendixについては、後ほどご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
企業情報
若松:会社概要からお話しします。弊社は1957年に創業し、今年で66年目を迎えることから、「日本における経営コンサルティングのパイオニア」と呼ばれています。現在、大阪と東京の2本社制を取っており、資本金は17億7,200万円、総人員数は660名です。東証プライム市場に上場しており、株主数ならびに単元株に関しては、スライドに記載のとおりです。
経営理念…「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」
若松:私たちは、創業以来「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念を掲げ、コンサルティングファームを経営してきました。
創業の原点
若松:スライドに「この国には企業を救う仕事が必要だ」と記載しています。創業者の田辺昇一は、勤めていた会社の倒産を経験しました。会社が倒産すると、社員はもちろん、その家族も路頭に迷い、取引先も大きな迷惑を被ってしまいます。
そのため、「どのような規模であっても、企業には命がある。日本にも企業を救う仕事が必要だ」という思いを持つようになり、今でいう経営コンサルタントを企業を救う医師「Business Doctor」と呼び、企業の命を守るため、前述の経営理念を掲げて経営コンサルティングファームを創業しました。
スライド上部に「We are Business Doctors」と記載していますが、私たちが日本の経営コンサルティングのパイオニアと呼ばれるのは、創業時から経営コンサルティングファームであった我々の個性を表していると考えています。
坂本:ここまで、創業の原点のお話をしていただきました。ここからは質問を織り交ぜながら進めたいと思います。
御社は戦後約10年に創業されています。おそらく、顧客の業種や業態、規模が現在と異なると思いますが、当時の顧客はどのような業種、業態、規模感だったのかを教えてください。
若松:当時は戦後間もなかったこともあり、日本経済の復興や成長と重なっていたため、製造業が多かったです。規模としては大企業も中小企業もありました。しかし、規模というよりも「企業を良くしたい」「会社を成長させたい」という課題に応えるかたちで支援を行っていたというのが現実だったと思います。
坂本:創業以来ずっと経営コンサルティングを行われている中で、当時の「企業を良くしよう」という課題感に応えることについてお話しいただきましたが、主にどのような経営指導、または寄り添ったコンサルティングをされていたのでしょうか?
ちょうど復興の頃ですので、イメージとしては、製造業には上手く融資が出る方法があったり、おそらくムリやムダが非常に多かったりしたのではないかと思います。欧米型経営もまだ入ってきていない頃だと思いますが、その頃はどのようなコンサルティングをしていたのか教えてください。
若松:もともと製造業からスタートしたこともあり、最初は品質管理などのコンサルティングを行っていました。しかし、創業者の経営コンサルタントとしての志の原点は、勤めていた会社が倒産したことです。したがって、2つの要素があります。
企業を決めるのはトップマネジメント(経営者・役員などのリーダー)であるという考え方で、創業時からトップマネジメントに対してコンサルティングしていくことがテーマです。それが、経営全体への支援や、企業を再建したり立て直したりすることにも通じていたのだと思います。
タナベコンサルティンググループ(TCG)概要
若松:現在、ホールディングスとグループ6社体制で経営を行っており、タナベコンサルティンググループが純粋持株会社という位置づけです。タナベコンサルティングが経営コンサルティング事業になります。
リーディング・ソリューションは、BtoBのデジタルマーケティングを中心にコンサルティングを行っています。
グローウィン・パートナーズは、M&Aを中心としますが、国内はもちろん、クロスボーダーといわれる海外のM&Aなども実施しています。加えて、ERPという経営統合システム、一般には基幹系システムといわれているものを実装させることができるコンサルティングも手掛けています。
ジェイスリーは、ブランディングを中心に展開しています。今年2月に新たにグループインしたカーツメディアワークスという会社は、戦略PRやPRコンサルティングのほか、海外向けのPRコンサルティングなども展開している会社です。現在はこのグループ6社体制で事業を展開しています。
チームコンサルティング&トップマネジメントアプローチ…経営コンサルティング
若松:事業概要と強みについてお話しします。当社の経営コンサルティングスタイルは、チームコンサルティングとトップマネジメントアプローチを強みとしています。経営コンサルティング領域は、トップマネジメントの経営課題を、チームコンサルティングで解決できるデザインとしています。
スライドに記載している「ストラテジー&ドメイン」「デジタル・DX」「HR(人的資源)」「ファイナンス・M&A」「ブランド&マーケティング」といった領域は、トップマネジメントの課題であり、この課題をどのように解決していくかという視点で組織がデザインされているところが我々の個性です。高度な専門性を高度に総合化するチームコンサルティングで、課題を解決していくスタイルです。
つまり、我々は街のクリニックではなく、高度先進医療科目を有する総合病院を志向しており、それが現代の非常に高度で複雑化した経営課題を解決できるアプローチだと考えており、トップマネジメントアプローチと呼んで展開しています。
坂本:こちらの資料についてご質問です。1人のトップに対して、御社のさまざまな専門のコンサルタントの方が何人ものチームで支える体制になっているのですか?
若松:そのとおりです。
坂本:ということは、社長1人にコンサルティングを行うのではなく、経営陣にまとめてコンサルティングを行うパターンが多いのでしょうか? 経営陣も、社長の下に専門性を持った方がいるため、どちらかというと幹部をコンサルしていくイメージで合っていますか?
若松:そのとおりです。我々は主に大企業から中堅企業に対してコンサルティングしていますので、クライアントもチームもしくは組織になっています。それに対する我々のアプローチもチームでしっかり対応していくスタイルを採っており、それをチームコンサルティング、またはトップマネジメントアプローチと呼んでいます。
坂本:非常によくわかりました。コンサルティングしていくうちに「やはりここが足りないな」と思うと、その課題に適した専門コンサルタントをアサインしてもっと上手くいくようにするというのは、総合力が発揮されますね。
若松:そのとおりです。スライドに記載しているように、例えば、病院でいう診療科目において、症状によって足りない、もしくは強化しないといけない分野に、我々コンサルタントがチームとしてご支援していきます。
チームコンサルティング&トップマネジメントアプローチ…経営コンサルティング
若松:トップマネジメントアプローチによって、クライアントや経営者、経営陣に対してアプローチするため、その下には責任者や担当者がいます。そこに対してもチームで対応していくことで、会社全体に対応するかたちです。それがいわゆるコンサルティング領域になり、「変革と成長」を支援できるようなアプローチになっています。
唯一無二のバリューチェーン(価値連鎖)で顧客生涯価値を高める
若松:このようなアプローチを「唯一無二のバリューチェーン」と呼んでいます。価値連鎖により、顧客生涯価値と呼んでいるライフタイムバリュー(LTV)を高めていくというコンサルティングスタイルです。
スライドの図は、戦略策定からDXなどの経営オペレーションの実装・実行までを一気通貫の価値連鎖(連携)で支援し、顧客の生涯価値を高めることで、我々が掲げる「ファーストコールカンパニー(100年先も一番に選ばれる会社)」をともに目指そうというメッセージをシェアし、コンサルティングするというアプローチを表しています。
「ストラテジー&ドメイン」から「ブランディング&マーケティング」まで、つまり上流工程の戦略策定から実行、実装支援の下流工程まで、それぞれメニューが決まっているため、そちらに沿ってコンサルティングをしていきます。これが「唯一無二のバリューチェーン」と我々が呼んでいる、チームコンサルティングスタイル、領域です。
主に大企業から中堅企業(トップマネジメント)を広範囲にカバーする
若松:主なクライアントとして、大企業から中堅企業のトップマネジメントを広範囲にカバーしています。スライドの図は、縦軸がクライアントの規模、横軸がいわゆる上流工程から下流工程、つまり戦略策定から実装・実行支援までの領域を表しています。
薄いブルーの範囲がタナベコンサルティンググループの領域です。大企業から中堅企業をカバーしており、我々の領域以外のところには、同じようにコンサルティングをしているライバル企業として、例えば外資系の戦略ファームや独立系の専門のコンサルティングファーム、地域に密着しているコンサルティングファームなどがあります。
地域密着&地域創生
若松:「地域密着&地域創生」と記載していますが、東京、大阪はもちろん、北海道から沖縄まで10ヶ所でファーム(事業所)を展開しています。
すべての事業所がほぼ50年間、経営コンサルタントが常駐し、地域密着で事業を行っており、「地域創生」と世間で叫ばれるより前から、地域に密着してコンサルティングを展開し、地域創生に貢献してきた歴史があります。
長期契約による安定収益&成長(=顧客生涯価値向上)モデルの状況
若松:こちらの円グラフは、現在の実績を示しています。先ほどお話ししたとおりのコンサルティングスタイルであるため、結果的に長期契約による安定収益&成長モデル、いわゆるLTV向上モデルを実現しています。左の円グラフのとおり、クライアントの約45パーセントが5年以上契約しており、右の円グラフのとおり、売上高の約80パーセントが高単価・長期契約型サービスで、さらに売上高の約90パーセントが継続率70パーセント以上のサービスとなっています。
長期契約型チームコンサルティング事例…クライアント以上にクライアントを知る
若松:長期契約型のチームコンサルティングの事例をスライドに記載しています。例えば、中長期ビジョンの策定を実施するとします。そうすると、第1次中長期ビジョン、第2次中長期ビジョン、第3次中長期ビジョンというようにつながっていきます。
その中長期ビジョンを推進する中で、ホールディングス体制を取らなければならないという戦略課題が出てくると、実装するためにコーポレートファイナンスのコンサルティングが入ります。ホールディングス化をすれば当然、M&Aの必要性が出てきますので、M&Aコンサルタントが入ります。
また、実際にホールディングス化してM&Aを行うと、人事制度を見直す必要が出てきますので、HRのコンサルタントが人事制度の刷新、人材育成のあり方を支援します。グループ化した組織には、デジタル・DXにおけるシステムの導入も必要になってくるため、デジタル・DXコンサルタントがグループ経営やERPのシステム導入を支援していきます。
さらに、グループ全体として売上高を上げていく必要があるため、その時にはブランディングやPRも含め、ブランディング&マーケティングコンサルタントのチームが入って支援を行うという流れです。
実際に20年、30年、40年の契約をしている会社もたくさんあります。私自身もコンサルタントによく言う言葉ですが、「クライアント以上にクライアントを知る」というリレーション、関係性を作らないといけません。
実は私自身も、これまでトップとしてタナベコンサルティンググループを経営していくことと併せて30年以上、1,000社に上るコンサルティングを行ってきました。コンサルティングしていない業種はないというくらいですが、実際に20年、30年とお付き合いしている会社がたくさんあります。
坂本:コンサルタントの方は同じ会社を担当するパターンが多いのですか? 人事異動である程度担当が入れ替わるかたちですか?
若松:コンサルタントがクライアントと長く付き合うことよりも、先ほどご紹介したように、テーマによるということだと思います。例えば、1人のコンサルタントがそのクライアントに長くいたとしても、テーマが変われば専門が変わってくるため、そのようなリレーションの中で長くということです。
また、地域に密着しているため、地域のマネジャーといいますか、ゼネラルなコンサルタントは長くクライアントを見ているケースが多いです。
坂本:長くいるからよいわけではなくて、その時の課題によって必要なコンサルタントをアサインするのが大事だということですね。
若松:おっしゃるとおりです。クライアントからよくいただくお褒めの言葉は、「今、我が社があるのは、タナベコンサルティングさんがいてくれるからだ」というようなトップからのご評価です。
もう1つ、いただいて大変うれしいのは、「経営自体、戦略自体が前へ進む」という評価です。いわゆる顧問やアドバイザーのように入るコンサルティングではなく、トップの経営課題を具体的に解決することを進めて一緒に成長していきます。そこを非常に大事なコンサルティングクオリティにしています。
坂本:その部分はやはりコンサルタントの最終目標ですよね。課題を解決することや永続することが仕事だと思っている方もいるかもしれませんが、やはり企業が成長できるということは、冒頭にお話しいただいた「企業が永続的に続く」ということにつながりますね。
スライドに「40年にわたり」とありますが、それ以上契約しているところは多いと思います。これは1年契約なのですか?
若松:そのとおりです。
坂本:それは当然、仕事に満足できるから続いているということですね。
若松:おっしゃるとおりです。もう1つは、中長期ビジョンを作るため、お互いになりたい姿や会社の向かう方向をシェアし、「ファーストコールカンパニー(100年先も一番に選ばれる会社)」になることをともに目指します。結果的に、タナベコンサルティンググループのクライアントは日本一や地域でナンバーワン、また業種でナンバーワンの会社が多いです。
長くお付き合いしていること、その長い過程の中でともに成長してきていることで、結果的にそのような会社が多くなります。そして、そのことが我々のコンサルティングのメソッドになっていくとも言えるのではないかと思います。
坂本:確かに、地域ごとの特殊性があると、そのあたりも把握しなければミスマッチが起こってしまうということですね。
2023年3月期決算概要
若松:以上を踏まえて、業績動向についてです。2023年3月期の決算概要はこちらに示しているとおりです。
売上高は2期連続で過去最高を達成しました。売上高は117億5,900万円、前期比プラス11.2パーセントです。セグメントごとの売上の内訳は、スライドに記載のとおりです。
営業利益は11億5,200万円、前期比プラス24.4パーセントです。経常利益は11億6,300万円、前期比プラス24.9パーセントです。当期純利益は7億2,400万円、前期比プラス19.9パーセントです。
経営コンサルティング領域別事業概況
若松:経営コンサルティング領域別の事業概況です。ストラテジー&ドメインに関しては、大企業や上場企業である建設業界、インフラ業界、物流業界、食品業界、SaaS業界等向け、それと地方自治体向けの大型契約が増加しました。好調な受注に関しては、中長期ビジョンの策定・推進やSDGsの実装が非常に多かったです。
デジタル・DXに関しては、ヘルスケア業界や製造業界、専門商社業界、行政団体向けのDX実装が好調に推移し、マネジメント系のDXやマーケティングDXの受注が順調に増えました。
HR(人的資源)に関しては、製造業界やSaaS業界、ビューティー業界、物流業界、金融業界向けの人的資本経営の実装が多かったです。特に人事制度の構築やリアルとデジタルを使ったアカデミー(企業内大学)など教育のニーズも非常に高く、受注が好調でした。
ファイナンス・M&Aに関しては、インフラ業界や不動産業界、食品業界との大型契約が増えました。中でもホールディングスの体制を作るグループ経営の推進やM&Aも順調に推移しました。
ブランディング&マーケティングに関しては、ビューティ・コスメ業界やヘルスケア業界、医薬品業界など大企業向けのクリエイティブ&デザインや地域の上場中堅企業向けのブランディングやマーケティングの支援が好調に推移しました。
2024年3月期通期業績見通し
若松:2024年3月期の通期業績見通しです。売上高は125億円、営業利益は12億3,000万円、当期純利益は7億6,000万円です。人的資本投資やブランディング投資、デジタル投資を継続していきますが、売上高、営業利益ともに過去最高を更新する計画を発表しています。
中期経営計画(2021~2025) 数値目標
若松:成長戦略についてです。中期経営計画の数値目標ですが、2023年3月期は2度計画の上方修正を行い、修正後の計画に対して上振れで着地と順調に推移しました。中期経営計画では、売上高150億円、営業利益18億円を目標としています。
売上高150億円の内訳は、130億円は既存事業のオーガニックな成長、残りの20億円はタナベコンサルティンググループとしてM&A戦略を積極的に推進し実現していく組み立てです。
坂本:M&Aですが、最近もグループ会社を模索されているということで、成長のために足りないものやクライアントが抱えている経営課題を解決できる経営資源を有している企業を増やすということだと思います。お話しできる範囲でけっこうですが、20億円を予定しているM&Aはどのような業種を狙っているのか教えていただければと思います。
若松:タナベコンサルティンググループとしては、先ほどもお話ししたトップマネジメントアプローチにおいて経営コンサルティングの多角化を進めなくてはいけません。病院も同様だと思いますが、環境も変わる上に、新たな病気も出てくるわけで、それに対して診療科目をどのように増やしていくのかという問題があります。
先ほどご紹介したように、最近はPRや広報といった分野の会社を新たに加えました。共通して言えるのは、やはりデジタルやDXの部分です。こちらに関してはこれからも非常に必要な領域になってきます。先ほどご紹介したストラテジー&ドメインからブランディング&マーケティングの領域に至るまで、それぞれをDX化していく会社はこれからも増やしていきたいと思っています。
また、HR(人的資源)の領域でさらに強化しなければならない分野もM&Aの対象になってくると考えています。
中期経営計画(2021~2025) 経営コンサルティング領域別売上高計画
若松:経営コンサルティング領域別の売上高計画です。売上高150億円のうち、ストラテジー&ドメインは30億円、デジタル・DXは50億円、HR(人的資源)は22億円、そしてファイナンス・M&Aは21億円、ブランディング&マーケティングは22億円となっています。
プロモーションは13億円から5億円となっていますが、こちらは付加価値を上げていくことを前提に、あえて減収の計画にしています。
いずれにしても、経営戦略の策定支援といった上流をアップデートするとともに、現場における実装・実行支援機能も、デジタルを駆使するプロフェッショナルDXサービスとして強化し、一気通貫の経営コンサルティング・バリューチェーンの完成を目指した戦略を推進します。
経営コンサルティング領域の成長モデル
若松:経営コンサルティング領域の成長モデルでいいますと、専門性と総合性を同時に追求することが我々の成長モデルです。したがって、各業界に精通した実務経験者の積極的な採用や、先ほどお話ししたM&Aの実行を積極的に進めていきたいと考えています。
実際に総合性を強化するために、先ほどから紹介しているPRというコンサルティング領域に新たに参入します。また、専門性を掘り下げていく領域では、いわゆるメソッド、業種、全国展開の中で、行政・公共サービスの強化も図ります。また、国内では北海道から沖縄まで10ヶ所で展開していますが、加えてグローバル領域にも参入していく中で専門性を深めていくという組み立てになっています。
新しく参入するコンサルティング領域
若松:成長モデルとして、新しく参入するコンサルティング領域についてお話します。1つ目は「戦略PRコンサルティング×海外進出」です。カーツメディアワークスは「Global PR Wire」という海外向けのPRのプラットフォームを持っています。
海外のプレスリリース配信の利用実績もスライドに掲載していますが、海外進出や海外への販売の入口になるようなビジネスモデルをこれから提供していきたいと思っています。
2つ目は「地域創生×サステナビリティ」です。行政・公共のコンサルティング領域については、地域に長年密着してきた強みを活かし、産業振興やDX、人材育成の分野で地域とともに経済の成長支援を行いたいと思っています。
中期経営計画(2021~2025) 目標財務指標
若松:これからの目指すべき方向としての目標の財務指標です。ROE10パーセント、ROA15パーセント、時価総額は250億円以上です。総還元性向(株主還元)は、以前は50パーセントだったところを100パーセント目安に変更しました。
上場維持基準適合に向けた進捗 サマリー
上場維持基準の適合に向けた進捗のサマリーです。移行時点で適合していなかったのは、流通株式時価総額と売買代金でしたが、流通株式時価総額は2023年3月末に104億6,000万円となり、上場基準をクリアしました。
もう1つ、売買代金についても期間はあるものの、現時点では1日平均2,779万2,000円ということでクリアしています。
引き続き、ステークホルダーのみなさまの期待に応えるように、中期経営計画の達成と積極的な株主還元に取り組んでいきたいと考えています。
中期経営計画(2021~2025) 社員数目標
若松:中期経営計画における人員数の目標については、前期は560名という目標に対して566名となり、クリアしています。こちらも中期経営計画において随時クリアしていますが、2026年3月末に800名という目標に向けて採用人数を強化していきたいと思います。
我々は多彩なコンサルタントを採用することができますので、過去の実績を踏まえても、800名を実現していけると考えています。
人的資本マネジメント 採用・育成・活躍
坂本:けっこうな数を採用されますが、業務が拡大しているというのは当然あると思います。求められるコンサルタントの領域が増えてくるため増やさなければいけないということがあるのでしょうか?
若松:こちらのスライドと重なる部分ですが、採用・育成・活躍という点でお話しすると、タナベコンサルティンググループはコンサルタントの経験者のみではなく、業界に精通した実務家を多く採用しています。そして自社でコンサルタントへ養成しています。
採用に関しては、先ほどお伝えしたように業種が多岐にわたっているため、さまざまな業種から採用ができることと、コンサルタントも非常に広い業界から実務家を採用できます。
加えて、我々は全国に展開しているため、地域事業所でのIターンやUターンの採用も積極的にできます。そのため、キャリア・新卒を問わず広く採用することができます。
また、企業内大学として自社内でコンサルタントを養成するビジネススクールを持っています。リーダーシップ学部やHRコンサルタント学部、ファイナンシャルコンサルタント学部など、大学と同じような学部を作り、デジタルで学べる環境を作ることで、育成スピードは従来の5年から、2年から3年に短縮しています。
坂本:これは新卒の場合ですか?
若松:いいえ、キャリアも含めてです。
坂本:キャリアも、一流のコンサルタントになるのに5年くらいはかかるのですか?
若松:そのとおりです。経営や戦略のコンサルタントになるまでに相当の時間がかかっていたのが、この仕組みによって2年から3年に短縮できています。
人的資本マネジメント 採用・育成・活躍
若松:このような取り組みもあり、我々は戦略コンサルタント、デジタルコンサルタント、ブランドコンサルタント、最近はPRコンサルタントと幅の広いコンサルタントを必要としますが、多彩なプロフェッショナルを採用、育成できています。
活躍の部分に関しては、ジョブ型コース別の人事制度や、DX推進によってできるだけコンサルティングの仕事を効率化していくことにも取り組んでおり、「健康経営優良法人2023」に認定され、経済産業省の「DX認定事業者」にもなりました。このように、インフラを整えながら、活躍していただいているということが人的資本に対する投資と言えるのではないかと思います。
サステナビリティ SDGsコンサルティング
若松:サステナビリティについてです。我々はSDGsのコンサルティングも推進していますので、そちらを通じて、サステナビリティの強化や社会貢献を引き続き実施していきたいと考えています。
坂本:このあたりは社会的にも必要だということで、かなり盛り上がった部分かと思います。SDGs活動を始めるにあたっては、専門家の知識が必要だと思いますし、需要もあったと思いますが、未だにこの需要は続いているのでしょうか?
若松:より専門化していたり、業種や規模、地域によって進み具合が違ったりしており、SDGsやESGの領域では専門化と高度化が求められています。
坂本:それなりの知識を持つ人が支援しないと深堀ができないということでしょうか?
若松:そのとおりです。ですので、我々が非常に大事にしているテーマになります。
株主還元方針の変更
若松:最後は株主還元についてです。先ほどお話ししたように、株主還元方針を変更しました。2026年3月期目標のROE10パーセントの達成を確実にするために変更しました。スライドに記載のとおり、連結総還元性向100パーセントを目安にすることと、DOE株主資本配当率6パーセント以上とすること、機動的な自己株式の取得を実施していくということです。
株主還元(自己株式の取得)
若松:スライドに記載のとおり、自己株式の取得に関しては7月12日に自己株式の取得枠拡大および取得期間延長を決定して発信しました。取得し得る株式の総数を40万株から80万株に、取得価格の総額を2億円から4億円に、取得期間も今年の12月31日までと変更しました。
坂本:自社株買いと配当で、2026年の3月までに総還元性向100パーセントを目指すということで、これはかなりの株式還元の強化だと思います。今、御社は資本関連が非常に厚いため、そのあたりをある程度適正化する考えもあると思うのですが、個人投資家はこの後の動きを気にしているのではないかと思います。
個人投資家目線だと、DOEの数字が残ってくれれば、非常に安定した配当をイメージできると思うのですが、今後のDOEのイメージがあるのかを教えていただければと思います。
若松:この後に関しては引き続き、我々としては株主のみなさまの期待に応えられるように株主還元政策というものを継続していくというお答えでご理解いただければと思います。
坂本:ありがとうございます。
株主還元(配当金)
若松:最終的には2024年3月期に前期比プラス2円の44円で、配当性向98.7パーセントと計画しています。中間配当と期末配当のバランスを勘案し、中間配当は前期の9円から18円へ、期末配当は26円を計画しています。2024年3月期の総還元性向は、147.6パーセントを計画しています。
質疑応答:競合の中で人材を引き付けるという点について
坂本:「競合となるコンサルティング会社も人材獲得を進めていると思いますが、そのような環境下で御社が人材を引き付ける点はどこでしょうか?」というご質問です。
若松:これは大きく2つあります。1つは先ほどもご紹介したのですが、多彩なコンサルティング領域を持っているため、今行っている業務をコンサルタントとしてどのように発揮していくかということが非常にイメージしやすいのです。ライバルの会社がどうかということはあるのですが、コンサルタントの経験者というのは実は非常に少ないのです。
坂本:会社数自体が非常に少ないですものね。
若松:そのとおりです。したがって、そのような意味で広く採用できるということがあります。また、魅力を感じるのはキャリアデベロップメントとして、最終的に例えば経営や戦略などに対して非常に経験値の幅が広い、もしくは質が高いというイメージをお持ちいただいているということです。
それだと非常にハードルが高いと感じるのですが、企業内大学のようなアカデミーの仕組みも対外的に発信しているため、教育プログラムとかカリキュラムがしっかりしているという評価をいただいており、採用にあまり困らずに、優秀な人材に入ってきていただいているという実績になっています。
坂本:確かに、中途の方は特に、1つの業務に精通しマネジメントまでされた方が転職というかたちで入られるケースが多いと思うのですが、ある企業で1つの業務に精通している詳しい人がコンサルタントになるために欠けている知識を、企業内大学である程度埋めており、だからこそコンサルタントを目指せるということが、すごく良いと思います。私の先輩もコンサル業界に入り、ついていけなくて元の職に戻った方がいました。そのようなミスマッチがないのは良いと思います。
若松:我々もそこは非常に大事にしています。我々自身も人的資本をクライアントに提供している会社ですので、「経営コンサルタント業界だから」とあまり思わずに、企業としてあるべき姿を求めていくことを大事に、コンサルタントの採用や育成、活躍に関してもそのような目線で取り組んでいます。
質疑応答:採用、人材獲得の取り組みについて
坂本:非常によくわかりました。ありがとうございます。続いてのご質問です。先ほどの質問と重複してしまう部分があるかと思いますが、「質の高い人材が求められると思いますが、採用や人材獲得の取り組みについて教えてください」というご質問です。おそらく企業内大学の活用方法や、もともとある程度事業に精通してきた方を獲得しているという部分のお話になるかと思います。
企業内大学で、実際のところどれくらいステップアップするのかということをもう少し教えていただきたいと思います。知識をeラーニングで学ぶイメージだと思いますが、具体的にどのようなものがあるのか知るとイメージが湧くと思います。
若松:冒頭にお話ししたとおり、経営コンサルタントというのはビジネスドクターですので、結局は臨床が大事になるのです。やはり経験科学という臨床がないといけません。
坂本:知識だけでなく、実践までいかないとダメだということですね。その、実践のようなものは企業内大学のカリキュラムに入っているのですか?
若松:いわゆるケーススタディであったり、インプットをするという学びであったりの一方で、実際の事例にアサインをして、実務の中で先輩に学びながら実践していく、チームの中で学び取っていくという立体的な育成方法がなければ、企業内大学といっても育成期間が短くなるというところには到達しないと思うのです。社内には資格制度などもありますので、そちらも活用しながら人材を育成しています。
もう1つ先ほどお話ししたことに加えるなら、地域採用も非常に大事です。
坂本:確かに日本の企業だと、同業であれば地方の都市の地域性まで深く知っています。外資の企業はほぼそのようなことはないです。
若松:実際に全国津々浦々でコンサルティングを実践しているのは、経営コンサルファームでも我々だけです。地域には優秀な企業もありますし、優秀な人材もたくさんいます。でもなかなか、そのような方たちの活躍の場がないのです。
さらに、今の時代には地域に戻って貢献したいという優秀な人材がたくさんいます。そういう人たちに、プロフェッショナルとしての活躍の場も提供していくのが、我々の仕事だと思っています。やはり均質な教育カリキュラムの中でスピードアップして育っていくため早いのです。
坂本:企業内大学の講師は、御社のコンサルタントの方が担当されているのでしょうか?
若松:おっしゃるとおりです。
坂本:なるほど、それなら実践面も伝えられますね。
若松:今、企業内大学ということでクライアントにも提供しているのですが、すでに全国に150校以上あります。
坂本:それは御社の作ったカリキュラムを必要な部分だけ抜粋して「◯◯会社の企業内大学」というかたちでしょうか?
若松:そうではなくて、すべて我々が行っていることと同じ内容を提供しています。すなわち、クライアントの社長が校長に、社内の人々が講師となって、リアルとデジタル両方で大学を作り、単位を取得するようなかたちで進めています。
地域の中堅企業、大企業において技術や経営ノウハウの伝承が難しい中で、我々が企業の中に大学を作って伝えていくというもので、タナベコンサルティンググループが1校目です。
坂本:技術の伝承などがすごく難しいところもあるため、そこを体系的に教えられるような企業オリジナルのeラーニング、大学を、一つひとつの会社に作っていくということですね。
若松:おっしゃるとおりです。
坂本:では、枠組みを提供して、「あとはこういうふうに進めたらいいですよ」とか「他社の成功例はこうですよ」とかお伝えするということですね。
若松:そのとおりです。
坂本:なるほど、非常にいいですね。
若松:我々はどちらかというと実践主義なところがあるのです。やはり「医者の不養生」とか「紺屋の白袴」にはならないようにしないといけません。会社ですので完璧はないのですが、そのようなことを求めながら進めています。我々自身が実践してみて良いものは、クライアントにも提供していくというのが我々の基本的な考え方です。
坂本:IRのコンサルティングというのは存在するかわからないですが、アドバイスすることはできると思います。今、御社が実践して株価も伸びているため、ちょうどいいのではないかと思います。
若松:もっとがんばらないといけないですね。
坂本:実験ではないですが、お伝えできることもあると思いますね。
若松:実際のところ、クライアントにはホールディングスはもちろん上場企業も多いため、「企業価値を上げたいが、どのように取り組んでいけばいいのか?」というお声は多いです。「社長は教えてくれないのですが、タナベコンサルティングさん、どうしたらいいですか?」という質問も受けます。そのようなことも含めて我々独自のコンサルティングメソッドだと思っています。
質疑応答:クライアントの多い業界、少ない業界について
坂本:「クライアントの多い業界、少ない業界というのはあるのでしょうか?」というご質問です。
若松:はっきりと少ない業界として挙げられるのは小売業だと思います。先ほど少しご紹介したように、もともと製造業から受注していたという歴史があるためです。加えて、地方だとメーカーや建設業が多いのも事実ですね。
坂本:特に大企業や、地方のある程度の規模の企業は何かを作っているところが多いですよね。
若松:そうですね、製造業などが多いです。業種でいうと小売業が少なく、それ以外はほぼ均等にあります。
坂本:地方自治体というのは、どのようなコンサルティングをされているのでしょうか?
若松:地域の産業振興やDX化を進めたいと考える行政や公共サービスのみなさまが、地域の企業をより良くしていく政策に我々も参画して後押しをしています。
坂本:その地域のことを、コンサルタントがよく知っているということがかなりプラスになりますね。
若松:そのとおりです。これまでも実績はありましたが、地域のお役に立てるのであれば我々の価値をもっと発揮していこうと、専門チームや部署も作り、さらに強化していくかたちになりました。
業種でいうと小売業がやや少ないのですが、地域の有力企業は事業を多角化している場合が多いため、我々のような会社をご利用いただくことが多いです。メーカーがサービス業に参入したり、もしくはM&Aで小売業を買ったり、BtoCの会社をグループに入れたりといったかたちでの支援をさせていただくことは多いです。