東宝株式会社(9602)(以下「同社」という)は、2022年4月12日に「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を発表している。

TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」は、

  • 創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」
  • 3年間の具体的な施策である「中期経営計画 2025」

の2つから構成される。双方でピックアップされているのが、アニメ事業の強化である。

同社は、2023年7月13日に2024年2月期第1四半期連結決算を発表した。直近の業績から、同社アニメ事業への取り組みを見ていく。

東宝の当第1四半期連結業績

当第1四半期は「中期経営計画 2025」の2年目のスタートとなる。

海外景気の下振れリスクや物価上昇など、外部環境が悪いなか、同社の業績は以下のとおり増収増益であった。

  • 売上高を示す収入:前年同期比+19.9%の741億5300万円
  • 営業利益:前年同期比+28.4%の183億2400万円
  • 経常利益:前年同期比+18.8%の188億200万円
  • 親会社株主に帰属する四半期純利益:前年同期比+6.7%の122億9100万円

東宝のセグメント

同社は3つの報告セグメントから構成されているが、同社売上高のうち、69.4%を占めるのは「映画事業」である。TOHOシネマズも「映画事業」に含まれる。

「映画事業」の中に、「映像事業」があり、その中にあるのが「アニメ事業」(TOHO animation = 東宝のアニメレーベル)となる。

アニメ事業を「第4の柱」とする方向性を打ち出したのは2022年4月であり、当第1四半期においてはまだ「アニメ事業」は成長段階ということになる。

そのため、公表決算を見るだけでは「アニメ事業」の現状が見えてこない。

東宝の「アニメ事業」

【図表3】3/4

【図表3】

出所:「東宝株式会社 2024年2月期 第1四半期 決算説明資料」より著者作成

前年同期比では、キャラクターライセンスは減収であるが、それ以外は大幅な増収となっていることが分かる。

増収要因となった作品は、「僕のヒーローアカデミア」「BLUE GIANT」「刀剣乱舞」が挙げられる。

  • 「僕のヒーローアカデミア」:配信と商品物販で大きく貢献
  • 「BLUE GIANT」:劇場公開で貢献。興行収入10億円超
  • 「刀剣乱舞」:商品物販と配分金で貢献

一方で、減収要因となった作品となったは、「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」である。

東宝「アニメ事業」の当第2四半期(6月1日)以降について

以下では、2Q以降の同社アニメ事業「TOHO animation」について記す。

東宝の「呪術廻戦」

上述のとおり、1Qの減収要因となった。2022年1Qに「劇場版 呪術廻戦 0」(編集部注:リンク先の音量に注意)の大ヒット(興行収入138億円)があり、反動減である。

2Q以降は、2023年8月16日現在、TVアニメ「呪術廻戦 第2期」(編集部注:リンク先の音量に注意)が絶賛放映中である。

大ヒット作「劇場版 呪術廻戦 0」(編集部注:リンク先の音量に注意)とも繋がりのある話になっており、収益貢献(配信、キャラクターライセンス、商品物販、パッケージなど)が十分に期待できる。

東宝の「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」

無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」は、「小説家になろう」発祥(通称「なろう系」)のライトノベル原作の作品である。

2023年8月16日現在、TVアニメ「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜 第2期」が絶賛放映中である。

本作は「なろう系」のパイオニア的作品であり、原作はシリーズ累計部数1000万部を超えた大ヒット作品である。

制作を手掛けるアニメーション会社スタジオバインドは、「本作を制作するために」(アニメ関連会社の共同出資により)設立された会社である。制作陣の本気度がひしひしと伝わる。

無職転生 第2期」も、配信、キャラクターライセンス、商品物販、パッケージ、と同社の収益拡大が期待できる作品と言えよう。

東宝の「葬送のフリーレン」

TVアニメ「葬送のフリーレン」が2023年9月29日より、いよいよ放送開始となる。原作はマンガ大賞2021で大賞に選出され、アニメ化が待望されていた作品である。2023年4月17日時点で、累計発行部数800万部を突破している。

第1話は「金曜ロードショー」(日本テレビ系)にて、2時間スペシャルで放送されることが決定している。

TVアニメ「葬送のフリーレン」が同社の収益にどのような影響を与えるのかは大変興味深い。

東宝の「SPY×FAMILY」

呪術廻戦同様に、1Qの減収要因となった「SPY×FAMILY」は、2023年にTVアニメSeason 2放送と劇場版制作が決定している。

本作については、2022年に放送されたTVアニメSeason 1が、同社の収益に対して確固たる実績を残している。

TVアニメSeason 2だけでなく、劇場版「SPY×FAMILY CODE: White」(2023年12月22日公開予定、編集部注:リンク先の音量に注意)とのセットで、3Q以降どれほどの成果を出すのか。収益貢献するソースは多方面にわたり期待できる。

東宝の「僕のヒーローアカデミア」

TVアニメ第6期(2クール)は2023年3月25日に最終回を迎えたが、放送終了後に第7期制作が発表された。

また、2023年8月6日には、劇場版第4作目となる「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」最新作の制作決定が発表となった。これまでの劇場版3作と同様に、原作者の堀越耕平氏が総監修・キャラクター原案を担当する完全オリジナルストーリーとなっている。

僕のヒーローアカデミア」は、配信、キャラクターライセンス、商品物販において収益貢献度の高い作品である。加えて、劇場公開でも貢献することとなる。

以上、同社「アニメ事業」の2Q以降は、盛りだくさんの内容となっている。

ここまで見ただけで、同社の「アニメ事業」に掛ける期待の大きさがはっきりと分かる。

東宝の海外構成比と「まとめ」

【図表4】4/4

【図表4】

出所:「東宝株式会社 2024年2月期 第1四半期 決算説明資料」より著者作成

最後に、アニメ事業の国内外構成比を見る。

国内は前期の反動減などにより増減を繰り返すことがある。

一方、海外は一時的なものは目立たず、年々増収の傾向にある。

国内外構成比は、国内が爆発的に盛り上がった際には変化する。しかしながら、「異常値」を除くと、海外構成比率の上昇だけでなく、海外収入も大幅な増収傾向となっている。

今後の業績動向並びに海外動向を注視したい。

(追記:2023年8月17日12:20に、読者からの指摘により一部修正)

参考資料

石川 貴康