すでにiDeCoを始めている方であれば、先月末~今月上旬に今年分の払込証明書が届いたことと思います。そのハガキに「平成30年1月から確定拠出年金の掛金の年単位化が始まる」という記載があったことにお気づきになりましたか?
「掛け金の拠出を1年の単位で考え、加入者が年1回以上、任意に決めた月にまとめて拠出することが可能になる」というのですが、具体的にはどういうことなのでしょうか。
変更のポイントと注意点について、楽天証券経済研究所の篠田尚子さんに伺いました。
【ポイント】
- 今回の掛け金の年単位化によって、毎月払いのほか、特定の月にまとめて納付することも可能になります。(月々の)拠出限度額に満たなかった掛け金の差額分は年内(※)に限り繰り越せるので、年間の拠出限度額の使い残しがあった人はフルに使い切れるようになります。
- 年単位拠出を選択した場合、事前の登録(書類記入と提出)が必要です。不備扱いにならないよう、わからない点が出てきたら運営管理機関のコールセンターに確認しながら記入しましょう。
- 月払いで払える人、投資信託で運用する人は基本的に月々の拠出を選択(継続)するほうが運用で有利になる可能性が高くなります。ただし「月々の掛け金だけでは拠出限度額に達しないが、ボーナス月など払える月に多めに払えれば枠をフルに使える」といった場合など、所得控除の観点からみて年単位拠出が有効に使えるケースがあるので、必要に応じて自分の拠出プランを見直してみましょう。
※1月26日引落分(前年12月分)~12月26日引落分(11月分)までが1年間となります
年単位拠出で「ボーナス月にまとめて拠出したい」が実現する
――先日届いたiDeCoの払込証明書のはがきを見て「年単位化? なんだそれは」と驚いた方もいらっしゃったのではないかと思います。これは全員が対象なのでしょうか。
楽天証券経済研究所 篠田尚子さん(以下、篠田):最初に申し上げると、初期設定は今までどおり「月払い」です。(投資信託など)値動きのある商品を積み立てていく際には時間の分散が効きやすいので(ドルコスト平均法)、定期的なキャッシュフローがある方、毎月積み立ててきた方ならこれまでに引き続き月額払いをおすすめします。年単位化はどちらかというと異例対応というイメージです。
――では年単位化することで恩恵を受ける人はいるのでしょうか?
篠田:そうですね、たとえば自営業で月々のキャッシュフローがイレギュラーであるとか、月々では5千円しか拠出できないけれどボーナス月には数万円まとめて払えるなど、「年単位なら拠出限度額まで拠出できる」という方であれば、年単位拠出を選ぶことで掛け金が全額所得控除になるというiDeCoのメリットを享受しやすくなります。ただし、この拠出限度額の差額分を翌年に繰り越すことはできません。
それから「絶対に預金じゃなきゃイヤだ」という方にも年単位拠出はよいかもしれません。月々掛け金を拠出すると国民年金基金連合会に支払う手数料は月103円(年間1,236円)かかりますが、年単位化によって、この手数料は拠出する月だけ払えばよくなります(信託銀行に払う手数料は毎月必要)。(利率が低い)定期預金一本で積み立てる方なら、年1回、半年に1回など、まとめて払う方法を選択することで、手数料を多少抑えられますね。
年単位拠出を選択する場合、「翌年以降」の掛け金額は十分検討を
――月々の拠出限度額をフルに使えていない人が年単位化で拠出限度額の使い残しをなくせるのはメリットといえそうですね。注意点はありますか?
篠田: 年単位拠出を選んだ場合、1月26日引落分から加入できていれば拠出額を12カ月で考えられるのでわかりやすいのですが、年の途中から加入した場合は「加入月(初回引落分)から12月26日引落分まで」の月々の拠出限度額の合計がその年の拠出限度額となるので、その中でどういう払い方をするか決めなければなりません。いつ書類を提出するかによっても初回引落日が変わるので、場合によっては当初考えていた計画とずれることもありえます。
また、年単位拠出を選択する場合、当年と翌年の掛け金を指定しなければなりません。たとえば2018年と翌年2019年の掛け金を決めなければならないのです。また、もし2018年と2019年の内容が異なると、これが「年1回の掛け金額の変更」と見なされて、2019年は掛け金額を変更できません。この点は注意が必要です。
12月中旬以降、この年単位拠出の申し込み・変更の手続きができるようになる見込みです。楽天証券でも記入見本を用意する予定ですので、もし年単位拠出をする場合は記入見本をよく見て記入してください。わからない点はコールセンターにお問い合わせいただければと思います。
――来年以降に加入を予定している人は、全員が年間の計画を提出しなければならないのですか?
篠田:いいえ、年単位拠出を選んだ場合のみの対応になります。
――そのほか注意すべきことはありますか?
篠田:まとめて拠出できるのはすでに経過した期間の拠出限度額の累計額です。たとえば自営業者の年間の拠出限度額81.6万円を1月に全額拠出したりすることはできません。これまで同様に掛け金の前納はできませんが、後納はできるようになるということですね。
iDeCoの掛け金の基本はこれまでどおり「毎月拠出」
――先ほど、国民年金基金連合会に支払う手数料(月103円)が年単位化によって拠出する月だけの支払いでよくなり、定期預金一本で積み立てられる方には恩恵があるというお話でしたが、投資信託で積み立てる場合はいかがでしょうか。
篠田:投資信託100%で積み立てていくなら、その手数料103円をケチるよりは毎月拠出した場合のリターンの方が大きいと思いますね。投資信託でしっかり運用もしながら増やしていくなら、やはり基本は月払いです。今年のように後半マーケットが上がっているなかで、最終月だけ・年1回の拠出にしていたら「年初からやっていれば」と後悔するかもしれませんし(笑)。ドルコスト平均法は積立投資の極意ですから、それは忘れないでいただきたいですね。
――ところで2018年からは「つみたてNISA」も始まります。iDeCoとつみたてNISAの使い分けはどう考えればよいでしょうか。
篠田:定期的に積み立てられるお金があるなら、まず税優遇メリットが大きいiDeCoから始めるのが良いと思います。つみたてNISAでは運用益しか非課税になりませんが、たとえばiDeCoに加えてもう少し積み立てたいな、とか、途中で引き出せるお金を持っておきたいな、という方がつみたてNISAを併用するのはアリですね。こうしたハイブリッドなご提案も今後はしていきたいと思っています。
――本日はありがとうございました。
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LIMO編集部