60歳代が近づき、「老後の資金」や「老後に必要な生活費用」を強く意識し始める人も多いのではないでしょうか。
60歳代は、一般的に定年退職を迎えて老後生活が始まる年代です。多くの方が給与収入から年金収入へと移行し、世帯収入は低下する場合がほとんどです。
では、60代の方は老後生活に備えていくらほど貯蓄をしているのでしょうか?
「老後資金2000万円問題」が少し前に世間を騒がせていましたが、どのくらい貯蓄を持っておくことができていれば老後の生活は安心して過ごせるのか見ていきましょう。
1. 60歳代の貯蓄額「2000万円超」は約29%
まずは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)各種分類別データ」をもとに、60歳代の二人以上世帯の金融資産保有額を確認してみましょう。
1.1【60歳代】二人以上世帯「金融資産保有額」
※金融資産を保有していない世帯を含む
- 平均値:1819万円
- 中央値:700万円
平均値は1819万円です。「みんな意外とたくさん持っているんだな」と思ったかもしれません。
しかし、平均値は、大きい数字も小さい数字も平準化されてしまうため、上記のように数字が大きく異なるデータは中央値で見たほうがより実態を把握しやすくなります。
ではその中央値を見てみましょう。「700万円」と平均値の半分以下です。
しかしお金事情はやはり個々で異なります。保有額ごとの人数割合でそのバラつきを確認しておきましょう。
1.2【60歳代】二人以上世帯「金融資産保有額ごとの人数割合」
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:6.1%
- 100~200万円未満:5.5%
- 200~300万円未満:3.3%
- 300~400万円未満:3.2%
- 400~500万円未満:3.4%
- 500~700万円未満:5.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.7%
- 2000~3000万円未満:8.8%
- 3000万円以上:20.3%
- 無回答:2.9%
「老後2000万円問題」の目安となった「2000万円」を超える金融資産を保有している世帯は約29%です。
一方、金融資産を保有していない世帯は20.8%。60歳代の約2割が「貯蓄ゼロ」の世帯ということがわかります。
貯蓄額が二極化していることが見てとれますね。
60歳代以降の貯蓄額には「退職金」の有無や金額が大きく影響してくると考えられます。
2. 退職金の有無や金額を把握しておこう
定年退職時に「退職金」を受け取ることができれば、老後資金への大きなアドバンテージとなるでしょう。
しかし、やや古いデータになりますが、厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金や年金)がある企業は、約80.5%でした。20%近くの企業が退職金がありません。
企業規模が小さいほどに退職金制度を設けていない傾向があるようです。
また、退職金制度というと一時金でまとまったお金を受け取るイメージがあると思いますが、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)といった年金型のものもあります。