定年後再雇用の待遇格差を争った裁判(原審)

前置きが長くなり失礼した。本題となる当該一連の裁判について取り上げる。

ただし、制度の現状を知った上で問題となった裁判について見ていくほうが理解が深まると判断した。

そのため、このような形式を採用した。

高等裁判所での判決

2022年3月25日の名古屋高等裁判所にて、定年再雇用の労働条件と待遇格差の不合理性について判決(事件番号:令和2(ネ)769)が出た。

判決内容の要旨は以下のとおりである。

  • 職務範囲等に相違がないにもかかわらず、定年後再雇用者らの給与は定年退職時の50%以下に減額されており、職務上経験の劣る若年性社員の給与をも下回っている
  • 定年後支給される、高年齢雇用継続基本給付金および老齢厚生年金(報酬比例部分)を加味しても定年退職前の支給総額との間には相違がある。よって、定年退職前後で給与格差があるのは不合理と言える余地がある
  • 定年後再雇用の給与が定年前給与の60%を下回るのは不合理と認められる

高等裁判所での判決をまとめる

裁判所が出す判決・決定は、国民にとって非常に難解であるのは周知の事実である。
上記記載は簡潔に記載したつもりであるが、まだ分かりにくいと考える。

要は、
「再雇用後の給与は、定年前の60%を下限とする(最低でも▲40%に留めるべき)」
ことを高等裁判所の判決(判例・先例)として決定した。

定年後再雇用の高等裁判所判決が与えた影響

当該高裁判決が確定すると、先例となり同様の訴訟提起が日本各地で起こることが予想された。

そのため、企業としてはトラブルを事前防止したいので、
「定年後再雇用の給与は定年前給与の60%以上」が事実上確定することになる。

本件判決が与えた影響の大きさが理解できたと思う。