定年退職して同じ会社で嘱託職員として再雇用され、定年前後と同じ業務を行う。

しかし、基本給は大幅にダウンで賞与も支給されない。こういったケースを見聞きしたことはないだろうか。

自動車学校の元職員が給与格差があるのは問題であるとして、自動車学校に対して格差是正を求めた。具体的には、定年前との差額分の支給などを自動車学校に対して請求する裁判を行った。

その行方から、定年後再雇用待遇格差問題を見ていく。

定年後再雇用の位置づけ

まず、前提として、定年後の再雇用自体は義務ではない。どなたも感覚として何となく分かるかと思う。

骨太の方針 2019」を元に、法律で義務付けられているのは以下のとおりである(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律、2022年改正)。

高年齢者が、年齢に関わりなく働き続けることができる「生涯現役社会の実現」を目指して、

  • 「定年制の廃止」
  • 「定年の引上げ」
  • 「継続雇用制度の導入」(高年齢者雇用確保措置)

のいずれかの措置を、65歳まで講じるよう企業に義務付けている。

さらに、2022年4月4日からは、70歳までを対象として、

  • 「定年制の廃止」
  • 「定年の引上げ」
  • 「継続雇用制度の導入」という雇用による措置
  • 「業務委託契約を締結する制度の導入」
  • 「社会貢献事業に従事できる制度の導入」(高年齢者就業確保措置)

という雇用以外の措置のいずれかの措置を講じるように努めることを義務付けています。

定年後再雇用の現状

厚生労働省は毎年「高年齢者雇用状況等報告」の提出を企業に求めている。

2023年7月31日現在、最新のものは、2022年12月16日公表の令和4年「高年齢者雇用状況等報告」である。

【図表1】から、99.2%~99.9%とほぼすべての(報告提出)企業において、何らかの雇用確保措置が実施されていることが分かる。従業員が多い企業ほど、措置の実施率が高いのはとても興味深い。

措置内容の内訳では、「継続雇用制度の導入」が70.9%~85.0%と圧倒的に高いのが見て取れる。

「継続雇用制度」の内容を見ると、希望者に適用している企業の割合が高いことが分かる。

以上、現状を見ると、定年後再雇用は制度として完全に根付いたものと言えよう。