法務省は、2023年7月3日に区分所有法制の改正に関する中間試案(以下「中間試案」という)を公表した。あわせて、中間試案に対する意見募集(パブリック・コメント)開始も開始し、2023年9月3日23時59分まで国民より広く意見を募る。
中間試案は2023年6月8日に取りまとめられた。パブリック・コメント開始日である2023年7月3日にようやく中間試案が公開された。
なお、中間試案とは、法改正に向けた取りまとめであり、今後は中間試案を土台にして法改正案作成が進んでいき、2024年通常国会での可決を目指す。
1. マンションの法律「区分所有法」とは
「建物の区分所有等に関する法律」が区分所有法と呼ばれる(以下「同法」という)。
タワーマンションを例にすると、総戸数300戸あればそれぞれに所有者がいる。所有者を区分所有者といい、区分所有について定めたのが同法である(民法の特別法にあたる)。
今回の改正は、分譲マンション所有者すべてに関係するものであるため、影響は大きい。
2. マンションの法律「区分所有法」の何が問題であったのか
2.1 背景
「◯号室が気付いたら空き家になっており、購入者含めて関係者と連絡が取れない」。
所有権が不明となる事態(所在等不明者の発生)が地域問わず発生している。
実際に、下記2点が国土交通省の調査から明らかになっている。
- 築年数が経過した建物の増加
- マンション所有者の高齢化
今後、相続等により、区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化がさらに進んでいくことは避けられない。
2.2 問題点
マンションでは、所有者である住民で管理組合を作り、そこで話し合いをして決議をする。建替えや修繕など、重要な決議ほど「5分の4以上」、「4分の3以上」など、高い賛成割合を同法は求める。
問題なのは、決議要件「5分の4以上」等の分母に所在不明者が含まれることにある。所在不明者は決議に参加しないので「議案に反対」したものと扱われるのだ。そのため、現在の同法下でも議案が通ることは厳しいなか、前述した背景を踏まえると、今後はさらにハードルが高くなる。