高齢化社会である日本では、働きながら介護に従事する「ビジネスケアラー」が、年々増加傾向をたどっています。
経済産業省によると、2030年には家族介護者のうち、約4割(約318万人)が、ビジネスケアラーになる見込みとされており、その経済損失は約9.1兆円になると報告がされています。
今やビジネスケアラーは深刻な社会問題となっており、仕事と介護を両立するのが難しく「介護離職」を余儀なく選択する人もいます。
本記事では、2023年6月28に公表された調査データをもとに、仕事と介護を両立する人の「ビジネスケアラー」の実態について紹介していきます。
「自分はまだ大丈夫」と思っていても、もしかすると自分が介護する側になる日もそう遠くないかもしれません。
記事を参考に、働きながら介護を両立するのは現実的なのか、何が課題になるのかを今のうちから考えておけると良いでしょう。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
ビジネスケアラーの半数以上が週2〜3回以上の介護をしている
オーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営するイチロウ株式会社は、ビジネスケアラーを対象に、「介護と仕事の両立に関する意識調査」を実施しています。
調査概要は下記のとおりです。
- 調査の方法:WEBアンケート
- 調査の対象:介護と仕事を両立する都市圏に住む35歳~69歳の男女
- (※都市圏:北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)
- 有効回答数:400
- 調査実施日:2023年6月8日~6月9日
- 調査主体:オーダーメイド介護サービス「イチロウ」
- リリース公開日:2023年6月28日
【図表1】のとおり、各年代の半数以上が、週2〜3日以上介護をしていることがわかりました。
【図表1】1/4
出所:イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
30歳代は「週2〜3日(18.0%)」が最も多く、次いで「週4〜5日(24.0%)」「毎日(17.0%)」となり、全体の59.0%が「週2〜3日以上」介護をしていることがわかります。
同様に40歳代においても、全体の58.0%が週2〜3日以上の介護をしています。
また、同調査で「介護をする場合の1日あたりの時間」を聞いたところ、30歳代で最も多かった回答として「2時間以上3時間未満(31.0%)」、次いで「5時間以上(21.0%)」となりました。
【図表2】2/4
出所:イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
一方で40歳代と50歳代で最も多かったのは「1時間以上2時間未満」、60歳代では「1時間未満」であり、30代歳の介護負担の重さが浮き彫りになる結果となっています。
30歳代の6割が「仕事上の制約を設けたことがある」
介護にあてる日数・時間をみると、30歳代の介護負担の重さがあらわとなる結果になりました。
では、介護が仕事にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
イチロウ株式会社の調査では、介護の影響で「仕事上で制約を設けたことがある人」は、全体の半数以上にのぼり、とくに30歳代においては【図表3】のとおり6割を超える結果となっています。
【図表3】3/4
出所:イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
制約の内容としては、全世代において「時短勤務」が最多となっており、フルタイムでの仕事と介護の両立の難しさがうかがえます。
なお、30歳代・40歳代においては制約の内容として、「異動不可による昇進断念」「雇用形態変更」「管理職への昇進断念」が続く結果となりました。
30歳代や40歳代は、ちょうど昇進をする年代になってきますが、介護と仕事を両立するために、仕事に十分に時間をあてられずに昇進を諦める人が多いのでしょう。
実際に、イチロウ株式会社の同調査では、30歳代、40歳代の約4人に1人が「正社員から契約社員やアルバイト・パートへの雇用形態変更」や「管理職への昇進断念」をしているという結果になっています。
公益財団法人 生命保険文化センターの調査データによると、介護の平均期間は61.1ヶ月(5年1ヶ月)です。
介護期間の分布では「4〜10年未満」が31.5%と最も多く、次いで「10年以上」が17.6%であり、介護は長期戦であることが見てとれます。
現在日本では、介護休業や介護休暇が存在しますが、基本的にこれらの制度の日数は限定的であり、実際に仕事と介護を両立するためには、何らかの制約を設ける必要がありそうです。
仕事と介護の両立が難しいと感じる理由
では仕事と介護の両立において、具体的に何が「難しい」と感じるのでしょうか。
イチロウ株式会社の調査では、仕事と介護の両立において難しいと感じる理由として、各年代で様々な内容が挙げられました。
【図表4】4/4
出所:イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
世代別の特徴として、30歳代では「勤務時間や終業時間の調整が難しい」、40歳代は「両立によりプライベートの時間が取れない」、50歳代は「常に介護のことが頭にあり、ストレスが蓄積される」、60歳代は「介護の長期化を考慮すると、財政面での不安がある」が上位となりました。
仕事と介護をうまく両立することに難しさを感じ、結果的に「介護離職」を選択する人が多いことがうかがえます。
「介護離職」を避けるために事前の話し合いを
本記事では、調査データをもとに、仕事と介護を両立する人の「ビジネスケアラー」の実態について紹介していきました。
ビジネスケアラーの30代から40代の約6割が、週2日〜3日以上介護をしていることがわかりました。
また、全体の半数以上が仕事上で制約を設けたことがあると回答しており、仕事と介護の両立の難しさがうかがえます。
実際に、2021年には約10万人の人が介護を理由に離職していることから、仕事と介護を両立する場合は、不本意な「介護離職」を避けるための準備をしておく必要があります。
介護離職を避けるために、事前に家族や職場と話し合いを行ったり、介護サービスの情報収集をしたりして、来るべき時に備えておけると良いでしょう。
参考資料
- 経済産業省「新しい健康社会の実現」
- イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
- 厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要 離職理由別離職の状況」
- 公益財団法人「生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい? 介護離職をしないための支援制度は?」
太田 彩子