30歳代の6割が「仕事上の制約を設けたことがある」
介護にあてる日数・時間をみると、30歳代の介護負担の重さがあらわとなる結果になりました。
では、介護が仕事にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
イチロウ株式会社の調査では、介護の影響で「仕事上で制約を設けたことがある人」は、全体の半数以上にのぼり、とくに30歳代においては【図表3】のとおり6割を超える結果となっています。
制約の内容としては、全世代において「時短勤務」が最多となっており、フルタイムでの仕事と介護の両立の難しさがうかがえます。
なお、30歳代・40歳代においては制約の内容として、「異動不可による昇進断念」「雇用形態変更」「管理職への昇進断念」が続く結果となりました。
30歳代や40歳代は、ちょうど昇進をする年代になってきますが、介護と仕事を両立するために、仕事に十分に時間をあてられずに昇進を諦める人が多いのでしょう。
実際に、イチロウ株式会社の同調査では、30歳代、40歳代の約4人に1人が「正社員から契約社員やアルバイト・パートへの雇用形態変更」や「管理職への昇進断念」をしているという結果になっています。
公益財団法人 生命保険文化センターの調査データによると、介護の平均期間は61.1ヶ月(5年1ヶ月)です。
介護期間の分布では「4〜10年未満」が31.5%と最も多く、次いで「10年以上」が17.6%であり、介護は長期戦であることが見てとれます。
現在日本では、介護休業や介護休暇が存在しますが、基本的にこれらの制度の日数は限定的であり、実際に仕事と介護を両立するためには、何らかの制約を設ける必要がありそうです。
仕事と介護の両立が難しいと感じる理由
では仕事と介護の両立において、具体的に何が「難しい」と感じるのでしょうか。
イチロウ株式会社の調査では、仕事と介護の両立において難しいと感じる理由として、各年代で様々な内容が挙げられました。
世代別の特徴として、30歳代では「勤務時間や終業時間の調整が難しい」、40歳代は「両立によりプライベートの時間が取れない」、50歳代は「常に介護のことが頭にあり、ストレスが蓄積される」、60歳代は「介護の長期化を考慮すると、財政面での不安がある」が上位となりました。
仕事と介護をうまく両立することに難しさを感じ、結果的に「介護離職」を選択する人が多いことがうかがえます。
「介護離職」を避けるために事前の話し合いを
本記事では、調査データをもとに、仕事と介護を両立する人の「ビジネスケアラー」の実態について紹介していきました。
ビジネスケアラーの30代から40代の約6割が、週2日〜3日以上介護をしていることがわかりました。
また、全体の半数以上が仕事上で制約を設けたことがあると回答しており、仕事と介護の両立の難しさがうかがえます。
実際に、2021年には約10万人の人が介護を理由に離職していることから、仕事と介護を両立する場合は、不本意な「介護離職」を避けるための準備をしておく必要があります。
介護離職を避けるために、事前に家族や職場と話し合いを行ったり、介護サービスの情報収集をしたりして、来るべき時に備えておけると良いでしょう。
参考資料
- 経済産業省「新しい健康社会の実現」
- イチロウ株式会社「仕事上の制約を設けたことがある人は30代で6割を超える結果に都市圏在住30〜60代に聞いた「介護と仕事の両立に関する意識調査(前編)」」
- 厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要 離職理由別離職の状況」
- 公益財団法人「生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい? 介護離職をしないための支援制度は?」
太田 彩子