3. 年金受給中でも亡くなれば未支給年金がある

繰下げ待機中、つまり1円も年金を受け取っていない方が亡くなった場合、遺族は未支給年金を請求できることがわかりました。

しかし、年金を受給している方が亡くなった場合でも、未支給年金がある可能性があります。

年金は原則として、偶数月に前月までの2ヶ月分が支給されます。

出所:日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」

例えば8月20日に亡くなった場合、8月15日に振り込まれた年金は6月・7月分なので、8月分が受け取れていないことになります。

この分を、遺族は未支給年金として請求することができるのです。

ただし、年金からは税金や保険料が天引きされていますが、これらも天引きの日と該当月がずれているため、死亡日によって後から払ったり還付請求したりする必要があります。

死亡時の手続きは煩雑ですが、お金のことはできるだけ整理しておきたいですね。

4. 年金の繰下げ受給のデメリット

繰下げ受給の待機中に亡くなると、遺族は増額されていない年金を受給することになるため注意が必要です。その他、繰下げ受給にはどのようなデメリットがあるのか確認しておきましょう。

4.1 早く亡くなると損をする

繰下げ受給のデメリットの一つとして、早く亡くなると損をすることも知っておきましょう。

繰下げ受給をしてすぐに亡くなると、未支給請求自体もできません。

単純計算で、繰下げ受給を開始してから約12年生きていないと損をしてしまうことになります。

4.2 所得税や社会保険料の負担が上がる

年金の受給額が増えると、所得税や社会保険料が引き上がる場合があります。

手取り額は額面ほどにあがらないため、注意が必要です。

4.3 加給年金が受け取れないケースがある

加給年金とは、厚生年金に20年以上継続加入かつ65歳未満の配偶者または18歳未満の子供がいる場合に受け取ることができる年金です。

厚生年金を繰下げした場合、加給年金を受け取ることができません。夫婦世帯では総合的に判断することが必要でしょう。

国民年金のみ繰下げて、厚生年金は繰下げしないのも選択肢のひとつです。

5. 繰下げ受給はデメリットも踏まえて検討を

長生きリスクに備えるためには、繰下げ受給は魅力的な制度です。

ただし、繰下げ受給制度にはデメリットがあるのも事実です。待機中に亡くなった場合は遺族が未支給請求できますが、増額分は受け取れません。

また繰下げ受給して早期に亡くなった場合は、損をしてしまうといえます。

老後資金の有無や老後の働き方も踏まえ、総合的に判断できるようにしましょう。

参考資料

太田 彩子