厚生年金と国民年金は原則として65歳から受給しますが、66歳より後にずらすことで年金額を増やせます。
これを年金の「繰下げ受給」といいます。
人生100年時代と言われる超高齢化社会を迎えた日本では、「長生きリスク」に備えるために繰下げ受給を検討する方もいるでしょう。
しかし、もし繰下げ待機中に亡くなってしまった場合、未払いの年金はどうなってしまうのでしょうか。
繰下げ受給の概要と注意点について解説します。
1. 年金の繰下げ受給とは
年金の繰下げ受給とは、年金の支給開始を66歳以降に遅らせることによって、受給額を増額させる制度です。
1ヶ月繰り下げるごとに、年金は0.7%ずつ増額されます。
繰下げ受給は1ヶ月単位で可能で、最大75歳まで繰り下げることができます。
75歳まで繰下げると年金額は84%増額されますので、月額10万円の支給額であれば18万4000円まで増えることになります。
年金が少ない方、老後資金が十分でない方にとっては魅力的な制度に思えますね。
2. 「厚生年金と国民年金」繰下げ受給の待機中に亡くなるとどうなる?
66歳以降に繰下げても、年金受給前に死亡してしまう可能性はゼロではありません。
もし繰下げ待機中に亡くなってしまった場合、年金は1円も受け取れないのでしょうか。
結論から言うと、未支給年金分は遺族に支給されます。
2.1 遺族が未支給年金を請求する
繰下げ待機中に亡くなった場合、遺族の方が未支給年金を請求すると、65歳時点の年金額で決定したうえで過去分の年金額が一括して支払われます。
例えば8月20日に亡くなったとすると、8月分までの年金が一括して支給されるのです。
なお、対象者がいる場合は遺族年金も支給されます。
2.2 未支給年金は繰下げによる増額がない
ただし、繰下げによる増額分は反映されません。
あくまでも65歳時点の年金額で決定されるため、例えば67歳で亡くなったとすると、65歳~67歳までの年金が一括で支払われるのです。
2.3 未支給年金には時効がある
また、請求した時点から5年以上前の年金は、時効により受け取れない点に注意が必要です。
例えば73歳で亡くなってしまった場合、未支給年金の請求ができるのは68歳からの分となります。
2.4 未支給年金には税金がかかる
遺族が受け取る未支給年金は、雑所得となります。
金額が少なければ非課税ですが、一括で受け取るので「所得税や住民税」がかかる可能性が高いでしょう。
なお、遺族年金を受け取る場合は非課税です。