先週、トランプ政権による税制改革案が遂に発表されました。しかし法案の行方は楽観視できません。6日(金)に米雇用統計発表を控える今週は、税制改革案の行方を含めファンダメンタル要因の変化に注意を要する週となりそうです。

先週の為替市場振り返り

日本では衆議院解散が行われた先週、米国ではトランプ政権による税制改革案が発表されました。発表後、S&P総合500種指数とナスダック指数は高値更新を果たし、ダウ平均も高値更新間近の値位置で週の取引を終えています。

個別通貨ペアでは、ドル/円は上下に振れながらも週足で陽線を形成し上昇。3週連続での陽線となっています。27日、28日には113円台にまで円安が進みましたが、両日ともに113円台に乗った後に下落し、112.5円台で週の取引を終えました。

また、ユーロ/ドルは1.186ドル付近のサポート&レジスタンス(サポレジ)を25日に下抜け。26日、27日も下落を続け、先週まで継続していたレンジ相場から一転、下落トレンドの週となりました。

ドル/円の過去6か月間の推移

50ドル超の価格を維持する原油価格(WTI)

9月は原油価格(WTI)が堅調に推移し、先週28日には遂に52.9ドル台にまで上昇。翌日は下落し、週の取引は51.6ドル台で終えていますが、50ドル台は維持しています。これまで50ドルを節目価格に推移してきた原油価格が今後これまで通りの値動きを見せるのか、新しい値動きを見せるのか、分岐点を迎えている様子です。

また、ドルインデックスが約2週間継続していたレンジ相場を上方向にブレイクし、この上昇にユーロ/ドルおよびドル/円が素直に反応しています。一方、金価格は9月上旬からの下落トレンドが継続するなど、為替の周辺市場は、先週はまちまちな値動きを見せることになりました。

今週の見通し

今週は6日に発表が予定される米雇用統計に向けた値動きが予想されます。

先週は米国で市場関係者が首を長くして待っていた税制改革案の内容が発表されました。法人税の35%から20%への引き下げ等、金融市場はその内容を評価した模様で、株式市場は税制改革案発表後に上昇しました。

ただし、財源については当初予定していたオバマケア廃止は現状目処が立っていないため、税制改革案実行は債務の拡大に直結します。また、現状はまだ法案成立の見通しが立っておらず(特に上院)、今週以降は税制改革の実現可否が金融市場のテーマとして浮上する可能性があります。

個別通貨ペアでは、ドル/円が113円まで再度上昇し7月高値の114円台に乗せることができるのかが見どころです。このところ3週連続陽線で上昇が継続していますが、4月および6月の上昇時も4週連続陽線形成の後に下落しているため、過去と同じパターンとなるのかも注目点です。

一方、先週、下方向にブレイクしたユーロ/ドルは、今週さらに下落となるのか、それとも先週の下落がダマシとなり再度上昇トレンドに乗ることになるのかが注目点です。1.185ドル付近が9月高値と安値の3割戻しの地点となるため、先週後半からの上昇が3割戻しを達成するのか、また達成後にどのような値動きとなるのか注目したいところです。

また、ドル/円、ユーロ/ドルともに先週はドルインデックスの値動きに素直に連動しているため、今週もドルインデックスの値動きには注意を要します。

現在のドルインデックスの93ポイントの値位置は、8月にレンジ相場を形成したゾーンに該当するため、今週はいったんレンジ相場入りするかもしれません。ドル/円、ユーロ/ドルともに、雇用統計発表の週ということも相まって、値動きが停滞する可能性もあります。

まとめ

トランプ政権の経済政策の目玉ともいえる税制改革案が遂に発表されましたが、法案成立には困難も予想されています。また、北朝鮮問題は依然として、いつ突発的に大きなリスク要因として浮上するのか分かりません。

今週は雇用統計の週で値動きが停滞する可能性もありますが、トランプ政権の税制改革案の行方など、ファンダメンタル要因の変化の兆候を見逃さぬよう注意したいと思います。

石井 僚一