2023年度の初回の年金支給が、6月15日(木曜日)に行われました。
毎年改定される年金ですが、今年は3年ぶりに増額改定。受給額を楽しみに待っていたシニアも多いことでしょう。
しかし、年金の増額を素直に喜べない理由も3つあるのです。
2023年度に決定された年金額とともに、年金制度の課題についてみていきましょう。
1. 6月15日に支給された「国民年金と厚生年金」増額へ
厚生労働省によると、2023年度の年金額の例は次のとおりとなります。
- 国民年金(老齢基礎年金):6万6250円(1人分)※1
- 厚生年金:22万4482円(夫婦2人分※2)
※1 2023年度の既裁定者(68 歳以上の方)の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額 6万6050 円(対前年度比+1234 円)。
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
67歳以下で2.2%、68歳以上で1.9%の引き上げとなりました。
2. 年金増額でも喜べない理由1. 実質は目減り
年金が増額になったにも関わらず、素直に喜ぶことができない理由のひとつは「実質目減り」である点です。
年金が3年ぶりに増額となった背景には、昨今の物価上昇が影響しています。2023年度の参考指標は以下のとおりです。
- 物価変動率:2.5%
- 名目手取り賃金変動率:2.8%
- マクロ経済スライド(※)によるスライド調整率:マイナス0.3%
- 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:マイナス0.3%
- 2~4年度前(直近3年度平均)の実質賃金変動率:0.3%
※公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの
2023年度の物価変動率は2.5%、賃金上昇率は2.8%の上昇。しかしマクロ経済スライドが働いたことにより、67歳以下の改定率は2.2%にとどまります。
つまり、物価上昇率には追いついていないため、増額とはいっても「実質は目減り」なのです。
年金支給額では、昨今の物価上昇の中でやりくりを進めるのが難しく感じるかもしれません。
とはいえ、マクロ経済スライドは年金制度を維持するために必要な制度です。現役世代の負担を高めすぎないためには、仕方のない側面といえるでしょう。
3. 年金増額でも喜べない理由2. 実際は個人差が大きい
年金額は前述のとおり公表されていますが、だれもが公表された通りの額面が受け取れるわけではありません。
老齢基礎年金は満額の保険料を納めた方だけに適用される金額ですし、厚生年金にいたっては「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))」とかなり限定的です。
年収が上記より多い方や少ない方、独身世帯、共働き世帯などには一切あてはまりません。
参考までに、厚生年金の実際の支給額も見てみましょう。
厚生労働省が2022年12月に公表した「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にします。