「一枚のメモを渡され、そこには雇用期限と退職するにあたっての金銭面での条件が書いてありました。その日が最終出社日というわけです。加えて、私は勤務していた会社の株式(未上場株式)を保有していたので、今後の株式の買取プロセスについての説明がありました」

A氏はおとなしく先方の話を聞くだけだったのでしょうか。

「今思っても不思議なのですが、意外に冷静でしたね。向う(会社側)はすべて決めて話をしているわけで、こちらとしては先方の言い分をまずは聞くしかないですよね。先方の話が終わったところで、質問は何かあるかと聞かれました。こういう状況になっている以上は、最後は金銭面での条件交渉がポイントになるかと思い、提示された金額の背景を聞きました」

質疑応答の後には何が行われたのでしょうか。

「会社が提示する条件で退職する意思を表明するという内容が書かれた紙を渡されました。時間をしばらくやるから、じっくり考えてサインするかしないかを決めろと言われました」

今考えても不可解なグループ会社への面接提案

A氏はリストラとともに、グループ会社の面接を受けてはどうかという提案もされたようです。

「会社はリストラの話と同時に、グループ会社では人材を募集しているからそちらの面接を受けないかと言ってきました。そのグループ会社には以前から知り合いもいて、仕事内容に興味がないこともなかったのですが、もし私を本当に欲しかったらもっと穏便な方法で接触してきますよね(笑)」

驚くべきことに、会社側はグループ会社に就職が決まればここまでの話はなかったことになると言ってきたようです。

「会社としては、リストラをするけれども別の就業機会のきっかけは示してやったぞというだけのスタンスなのだろうと思って断りました。それに、採用が決まった場合には、同じグループの企業に雇用されるということで今回提示された退職に伴う金銭面の話や株式の買い取りはなかったことになると言われました。えっ! 今までの話は何?と思いましたが、リストラに伴う金銭面の条件は良かったので、いったん退職をし、手元に現金を確保しようと思いました」

カードキーを出せ、そして家に帰れ

会社側とA氏の話し合いは一体どのように終わったのでしょうか。

「退職に関する資料や契約書などを受け取った後、家に帰れと言われました。また、入室に必要なカードキーなどもその場で渡すように言われました。ただ、オフィスにカバンなども置いてありますので、一度戻らせてくれと申し出ました。さすがにパスモや財布もオフィスに置いてきたままなので、今すぐ帰れと言われても家にも帰れませんよ。それなら事前に財布は持ってこいと言ってくれればいいのにと思いましたね」

しかし、他にそうしたケースがないという理由で会社側は頑なに断ってきたそうです。

「10年近く世話になった会社に対して悪意のある行動をするわけがないだろ、と上司を説得し自分のオフィスに戻りました。人事部の人は慌てていましたね(笑)。ただ、同じようにリストラにあった人でオフィスに戻れたケースは他にはなかったようです。リストラを宣告された時点では私はその会社の株主なのに、そこまで信頼していないのかと心底呆れましたね」

A氏はオフィスに戻った後、各方面に担当が変わる旨の連絡を可能な限りし、夕方にはカードキーを人事部に返却し、オフィスを後にしたそうです。

リストラかも?と思ったらするべき2つの準備とは

A氏と同じようにリストラにあうかもしれない人に向けて、2つのアドバイスがあるそうです。