2023年度の公的年金が3年ぶりの増額改定となります。初回の支給日は本日6月15日です。

ただし年金からは税金や保険料が天引きされるため、額面どおりには受け取れません。

年金から天引きされるお金には税金や保険料がありますが、中には天引きされないという人もいます。

筆者も自治体職員のときは、年金から天引きされる保険料について何度も相談を受けました。中には天引きをやめてほしいという相談もあります。

年金から天引きされる対象者や条件について見ていきましょう。

1. 厚生年金と国民年金から天引きされるお金「税金と社会保険料」

厚生年金や国民年金から天引きされるお金は、主に次の5つです。

1.1 所得税と復興特別所得税

公的年金は雑所得となり、金額が一定以上となれば所得税が課税されます。

また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。

所得税及び復興特別所得税は、年金より源泉徴収されます。

1.2 個人住民税

前年中の所得に対し、住民税が課税されます。この6月に住民税の決定通知書が届いた方も多いのではないでしょうか。

この住民税についても、基本的には年金からの天引きで納めます。

1.3 介護保険料

65歳になると、介護保険料は健康保険料と引き離して単独で支払うことになります。

介護状態になれば介護保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、基本的には年金天引きにて一生涯支払い続けます。

1.4 国民健康保険料(税)

国民健康保険とは、協会けんぽや健康保険組合などの会社の保険に加入していない75歳未満の方が加入する公的健康保険です。

65歳から74歳までの世帯の場合、原則として、国民健康保険の保険料(税)も年金から天引きされます。

1.5 後期高齢者医療制度の保険料

国民健康保険や会社の保険に加入していた方でも、75歳到達により必ず加入するのが「後期高齢者医療制度」です。

保険料は原則として年金天引きで納めます。

※国民健康保険と後期高齢者医療制度はいずれかの加入になるため、同時に天引きされることはありません。

2. 厚生年金と国民年金から天引きされないケースとは

年金から天引きされるのは上記の5つのお金ですが、天引きされない条件もあります。

2.1 所得税および復興特別所得税が天引きされない人

そもそも年金が一定額に満たず、所得税および復興特別所得税が課税されない方は、年金から天引きされることがありません。

65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上が課税の目安となります。

なお、遺族年金や障害年金も非課税となるため、所得税等はかかりません。

2.2 個人住民税が天引きされない人

個人住民税に関しても、そもそも非課税の場合は天引きされません。非課税になる所得目安は自治体によって異なります。

そのほか、下記の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満
  • 介護保険料が公的年金から天引きされない
  • 天引きする税額が老齢基礎年金等の年額を超える

また、天引きされるのは公的年金の雑所得にかかる税額のみとなるため、その他の所得に対する税額は天引きされません。

くわしくはお住まいの自治体窓口にご確認ください。

2.3 介護保険料が天引きされない人

介護保険料は税金のように「かからない」というケースはなく、どれだけ所得が少なくても支払い義務があります。

ただし、以下の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満
  • 年度途中で保険料が減額・増額になった人
  • 年金の受給開始年度

その他、年金現況届の提出を忘れたとき等も天引きが止められるケースがあります。

2.4 国民健康保険料(税)が天引きされない人

国民健康保険料(税)も同様に、どれだけ所得が少なくても支払い義務があります。

以下の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。

  • 世帯主が国民健康保険に加入していない
  • 世帯の国保加入者に65歳未満の人がいる
  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満である
  • 世帯主の介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない
  • 国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている

国民健康保険は、世帯単位で加入します。世帯主が会社の保険に加入し、家族が国民健康保険に加入しているというケースでは、擬制世帯主となります。

世帯の国保加入者に65歳未満の人がいる場合は年金天引きの対象とならないというのが、他の保険料との大きな違いでしょう。

2.5 後期高齢者医療制度の保険料が天引きされない人

後期高齢者医療制度の保険料についても、以下の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満である
  • 介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている
  • 介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない
  • 年度の途中で加入した(75歳となった)
  • 年度の途中で保険料が減額となった

保険料の場合、天引きされなくても納付書や口座振替等によって支払い義務があるという点に注意しましょう。

また自治体によっては、年金天引き(特別徴収)から普通徴収に変更できるところもあります。

詳しくはお住まいの自治体でご確認ください。

※年金天引きの条件は自治体によって異なることがあります。